例文トレ#17 「こそ」ってどんな時、どう使う?

例文トレ#17 「こそ」ってどんな時、どう使う?

今回のお題は「こそ」です。そういえば、the Beatlesの名曲”All you need is Love”の邦題は「愛こそはすべて」だったかと。

今回も「こそ」の例文を校内で募集したところ、たくさんの例文が集まりました!

『「こそ」の機能は強調である。』と、説明は簡単につくものの、いざ練習させるとなると、とたんに難しくなる文型です。さらに、アウトプットさせると誤用も少なくなかったり…簡単そうで厄介な文型かなと。

で、いつも思うことは「なんとかうまく練習させられないか。」

「こそ」をもって何を強調したいのか、「こそ」を用いる意図、というところを分析し、クリアにすれば、学習者にとっては理解しやすく、講師にとっては練習がさせやすくなるのではないか。

ここが鍵なのでしょうね。それでは早速、みなさんからいただいた例文をもとに、「こそ」が頻出する場面や、その心は?というところを探っていきましょう。

「こそ」を使う時の心理状況

みなさんの例文を横断的に見ていて、まず気づいたのが「こそ」を用いる前提には、「言外に対比させたい何かが必ずある」ということです。対比を①二項、②三項(およびそれ以上)に分けて、みなさんの例文を見ていきましょう。

①二項→X:Y

  1. A:ねぇ、早く例文出してよ!B:あなたこそ、早く出してよ!! →私:あなた
  2. 明日こそ部屋の掃除をしよう  →今日までの過去:明日
  3. 今年こそ優勝してほしい →去年までの過去:今年
  4. A:去年はコロナでみんなで全然集まれなかったよね。B:うん、今年こそはたくさん集まりたいね! →去年までの過去:今年
  5. A:先日は申し訳ありませんでした。B:いえいえ、こちらこそお手数をおかけして申し訳ありませんでした。 あなた:私(こちら)
  6. A:〇〇ちゃん、ごめんね。B:わたしこそごめんね。 あなた:わたし
  7. A:今年も検定受けるの?B:うん。今度こそ合格して見せる! 今まで:今度
  8. 好きこそものの上手なれ きらい:すき
  9. いまはしっかり体を休めて。なんでも健康あってこそだよ。 不健康:健康

これらの例文の特徴として「こそ」の前には、時間に関することば(明日、今年、今度)や、人に関することば(あなた、私)などが多いことです。そして、「こそ」につく言葉より、対としてある言外のことにこそ、実はフォーカスがあるのがわかります。

例えば「明日こそ部屋の掃除をしよう!」は、言外の過去(現時点まで実現できなかった)が未来(実現したい)と対比することで浮きぼりになっています。「こそ」はときに、先延ばし・後回し案件、実現困難な案件など、いずれも自分を奮い立たせるための言葉だったり、今までさぼっていたエクスキューズの機能が持たされたりしているようにも思えます。

②三項(およびそれ以上)

  1. 愛こそすべて
  2. 彼こそ私の運命の人だわー
  3. 彼こそが海賊
  4. こういう時こそ、私の出番ですね!
  5. 「我こそが玉梓が怨霊」

ここでの「こそ」の機能は、数あるものの中で、それが一番だ!と言いたいときに使うということです。上記すべての例文で「こそ」を「~が一番」と置き換え可能です。

③その他:対比以外の機能(逆説)

  1. 無駄こそ人生を豊かにする。
  2. A: 最高のカレーが食べたくて、あちこち食べ歩いてるんだけど、見つからないんだよね。B: それこそ自分で作ってみたら?
  3. 勝っているときこそ、気を引き締めていこう
  4. 客:「スポーツはしないから…」店:「だからこそ、スポーツをするんですよ」。「そういう人にこそ使ってほしい」
  5. 「疲れた時こそリズミカル!」
  6. A 今日はちょっと体調が悪いんだよね。B そういうときこそ、軽く登ったほうが楽になるよー。
  7. 笑う門には福来る 辛い時こそ笑顔でいたい
  8. 時には辛い人生も雨のち曇りでまた晴れる そんな時こそ野の花のけなげな心を知るのです。
  9. A:忙しいのによくそんな時間あるね。B:忙しいからこそ息抜きの時間が必要なんだよ。
  10. A: GWにどこか行く?B:うちで日本語の勉強するよ。連休こそ勉強のチャンスだよ。

上記の例文にはすべて逆説的なもの言いが感じられます。理屈では説明できない、人生の経験値が高くなって初めてわかること(それこそ、大人になったらわかる案件)です。スポーツ、仕事(セールス)、人生訓、歌の歌詞などによく使われる所以はそういったところなのでしょうか。

「こそ」レッスンではどう扱う?

導入時に例文として紹介するなら、、、(すごく自分に厳しくストイックな人でない限り)だれにでも思い当たるふしがある、後回し案件の①二項対比が、一番わかりやすそうですね。②三項(およびそれ以上)対比も強調したい名詞にくっつけるだけなので文法的にはやさしくて良いかも。これが一番と強調したいときに使えると教えれば誤用も比較的避けられそうです。

ただ、後ろの叙述は少し捻りがいる点で、上級用かなと…とも思います(たとえば、「私こそ背が高い」と言われても、「ん?」となりますからね…)。ここで挙げた例文の中でもそうでしたが、「こそ」の頻出場面は、やはり会話の中。前の人の言葉を拾って、補ったり、反論したり…。応用練習は、ぜひ会話形式でやってみたいところです。

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