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登録日本語教員の資格はとるべき?
私には寝る前にダラダラと動画を見る悪しき習慣があります。その日も寝る前にウトウト動画を見ていたのですが、ある動画で眠気が冷めました。
それはインフルエンサーで有名なひ〇ゆき氏のショート動画でした。内容はある視聴者からの質問に答えるものです。
「日本語教師が国家資格になるが、日本語教師に未来はあるのか?」というなんともストレートな質問に、ひろ〇き氏はこのように答えていました。
「あ、日本語教師って国家資格になるんだ。へぇ~」
私はこの動画を見て「日本語教師になるためには国家資格をとらなければいけない」と誤解する人がいるのではないかと心配になりました。
そもそもこの質問にある「日本語教師が国家資格になる」という表現が紛らわしいです。
聞いたところによると、最近ではcotoに応募してくる方の中にも「登録日本語教員の資格は必要ですか?」「cotoで働くと登録日本語教員の資格がとれますか?」といった質問をする方が時々いらっしゃるのだとか。
というわけで今回はここ数年なにかと話題の登録日本語教員について、資格をとるべきかを整理しながら、日本語教師のキャリアについて考えてみたいと思います。
登録日本語教員制度の概要
日本語教師登録制度については、何年も前から海外からの労働者増加のニュースなどとセットで報道されていたのでご存じの方も多いと思います。
登録日本語教員は、日本国内の一部の特定の機関(日本国内の外国人に日本国のビザを発給する必要がある法務省告示機関等)で「教員」として「登録」するための資格です。
なお「国家資格」という言葉が独り歩きしているようですが、登録日本語教員は公務員ではありません。
制度についての詳細は、文化庁の「⽇本語教育機関認定法における新たな国家資格登録⽇本語教員制度について」にあるので、ここでは細かい説明を割愛します。
ポイントとしては、登録日本語教員の資格を取らなくても日本語教師として仕事ができます。繰り返しになりますが、法務省告示機関で日本語を教える教員として働きたい場合は、登録日本語教員にならなければならないというものです。
医師免許がないと診断などの医療行為はできませんし、車の免許がないと運転してはいけませんが、登録日本語教員はこれらの類の資格ではなく、教員免許に近いかもしれません。公的な学校で働くには教員免許が必要ですが、民間の学習塾で教えたり家庭教師をする際にはいらないのと同じですね。
また登録日本語教員の資格は、全世界どこでも日本語教師ができるという類の資格でもありません。日本の小学校の教員免許があるからといって、海外の小学校で教える資格があるわけではないと同じですね。つまり全世界共通の資格でもないわけです。
そもそもこの制度は「我が国に居住する外国人が日常生活及び社会生活を国民と共に円滑に営むことができる環境の整備に寄与するため」、要は日本にやってくる外国人労働者の管理目的で発足しています。ですので、日本語教師を取りまとめる制度ではないということですね。
なお文化庁によりますと、国内の日本語教育実施機関における法務省告示機関の割合は25.2%、法務省告示機関の教員等の数は28.8%です。
画像:文化庁令和4年度日本語教育実態調査 93920301_02.pdf (bunka.go.jp)
この数字の中には海外で教えている人や個人で教えている人などは含まれませんので、日本語教育という大きな括りで見ると、実際の割合はもう少し下がると思われます。登録制度の影響を受ける範囲は業界全体では限定的であると言えそうです。
登録を検討するべき人・検討しなくてもいい人
日本語教員に登録するには下記の図のようにいくつかルートがありますが、いずれにしても講習やら試験やら登録手続きやらで、時間も費用もそれなりにかかります。
画像:94005501_02.pdf (bunka.go.jp)
うーん…これはとりあえず登録しておくか~と軽いノリでサクっと取れる資格ではありませんね。登録日本語教員の資格をとるべきか考えるというのは、そのまま「自分がどのようなキャリアを築きたいか」「自分がどのように働きたいか」などを考えることにつながります。
以下、個人的主観になりますが、登録を検討すべき人とそうでない人をまとめてみました。
資格取得を検討するべき人
- 法務省告示の日本語教育機関で働きたい人
- 選択肢を広げることで、より幅広いキャリアパスがほしい人
- 資格取得するための時間的・金銭的余裕がある人
- 個人でビジネスをしていて、集客のために日本語教育能力の証明・肩書がほしい人
- 資格マニアあるいは資格があると精神的に落ち着く人
- 日本国内でのキャリアパスを考えている人
資格取得を検討しなくてもいい人
- 法務省告示校以外のスクール、日本語教室、インターナショナルスクールなどで働く
- 働く場所にこだわりがない人
- 海外をメインにキャリアパスを考えている人
- 資格取得のための時間的・金銭的余裕がない人
- 日本語教育は副業で行いたい人
ちなみにcotoは法務省告示機関ではありません。日本語教育サービスを提供している民間の会社ですので、応募される方に日本語教員登録資格は必要ありません。
多様化する日本語教師の働き方
所属先によっては、日本語教員の登録資格が必須条件や優遇条件になることはあるでしょうが、資格があるからといって収入面で大きなプラスになることはあまりないようです。
また、どのような日本語教師を求めているかは勤め先によって異なります。
いろんな学校の求人情報を見たり何人かの日本語教師に話を聞いてみたりしたところ、求める人材については「日本語教育能力合格 or 420時間日本語教師養成講座終了」「大学にて日本語教育・日本語教員養成課程を修了」「未経験でもOK」「経験者優遇」「日本語教育の修士必須」「英語など外国語が堪能」「ITリテラシーが高い」「年齢〇歳まで」「学生と対等な関係を築ける人」「日本語教師以外のキャリアがある人歓迎」など、必ずしも登録資格が必須ではないのがわかります。
冒頭のインフルエンサーの話ではないですが、日本語教育を取り巻く環境は刻一刻と変化しています。日本の人口減少や海外から労働力の流入のほか世界情勢など国策の影響を受ける業界です。これはどの業界にも言えることですが…。
この登録制度も内容が二転三転し、振り回された!という方もいらっしゃるかもしれませんね。このような状況の中で、どのようなキャリアを築いていきたいか、どうのような働き方をしたいのか、ひいてはどのような人生を歩みたいのか…その自分軸を持っておくことが大切だと思います。
- 学校で働きたい or 在宅で働きたい
- 仕事として教え収入を得たい or ボランティアで教えたい
- 専業で働きたい or 副業で働きたい
- 対面で教えたい or オンラインで教えたい
- 日本語教育のプロとして専門知識を磨きたい or 自分の今までのキャリアとかけ合わせたい(IT×日本語教育、医療・介護×日本語教育、ファイナンス×日本語教育、接遇×日本語教育、ライティング×日本語教育など)
- 日本で働く人に教えたい or 学生に教えたい or 海外在住の人に教えたい
- 特定の国の人に教えたい or 様々な国の人に教えたい
- 日本国内で働きたい or 海外で働きたい
- 大人に教えたい or 子どもに教えたい
…そのほかインハウス日本語教師、大学教授、Youtuberなどインフルエンサーを目指すなど今や様々なキャリアプランが人の数だけあるといっていいでしょう。働き方が多様化している日本語教育業界。まずは自分軸を持つこと…それが登録資格をとるか検討する第一歩になりそうです。
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