日本語ってどんな言語?

日本語ってどんな言語?

学習者の母語ではじめに提示するのもよし、小出しに紹介していくのもよし。学習者ならどこかのタイミングで知りたいであろう日本語の特徴。日本語教師はもちろん、外国人のお友達がいる方も知っておくと便利な日本語の特徴を4つにまとめてみました。

1.助詞が重要

<例文>スミスさんは すしを 食べました。

日本語の基本語順はSOVです。主語(スミスさんは)・目的語(すしを)・動詞(食べました)の順に言葉が並んでいますね。英語、スペイン語、中国語などメジャーな言語がSVOなので、日本語のようなSOVは珍しいと思われがちですが、世界の言語の中でSOVの言語は半数近くを占めるそうです。

<例文>きのう、スミスさんは 田中さんと 銀座で すしを 食べました。

このように「名詞+助詞」がいくつか並んで、最後に動詞が来るというのが、日本語の文の基本的な仕組みです。日本語では、どの名詞の後にも助詞がついて、その役割を示しています。

言語学的には、英語のように基本語順がSVOなら前置詞が使われやすく、日本語のようにSOVなら後置詞(助詞)が使われやすいという傾向があるそうです。韓国語やトルコ語はSOV+後置詞タイプの言語です。

 

2.動詞の後にさまざまな要素が付く

日本語は助詞とともに、動詞も重要です。日本語の場合、動詞の後にさまざまな要素がついてきます。このようなタイプの言語は膠着語と呼ばれます。日本語は典型的な膠着語で、韓国語やトルコ語も同じだそうです。

日本語の文は最後まで聞かないと分からない(きちんと情報がつかめない)と言われることがあります。たとえば、「彼女は天才ピアニストだ・・・とは思わない」のように、文の最後の要素次第でそれまでの文脈を全否定することもできてしまいます。これが日本語の特徴で、まぎらわしく感じる理由です。

日本語の動詞以下の構造をもうちょっと見てみましょう。

「田中さんが甲殻アレルギーだと知っていたら、エビを食べさせなかっただろう」(ちょっと怖い例文になってしまいました・・・)

「エビを食べさせなかっただろう」という文の場合、「食べる」という動詞に使役・否定・過去・気持ちを表す部分と4つの要素がくっついてきます。この4つの要素、こんな感じで色分けすると構造がぐっと分かりやすくなります。

 

 

 

ちょっと横道に・・・「言わずもがな」「言わぬが花」

日本語は文末まで聞かないと分からないとは言われていますが、一方で、文末を曖昧にして最後まで言わないことも多々あります。一般に日語本母語話者は助詞や副詞で、次にどんなことばが続きそうなのかということを予測しながら、文を理解しています。

例えば、「今日は雨が〜」「今日は雨は〜」この続き、「雨が〜」のあとでは「降ります」、「雨は〜」のあとでは「降りません」という動詞を選ぶのが自然です。助詞を見れば予測可能というわけです。

また、「日本酒はお好きですか?」「日本酒はあまり・・・」とか「日本酒は・・・」と、「わかるよね、察して」と相手に理解を委ねるケースもあります。「そろそろ時間なので・・・」「その日はちょっと・・・」このように、日本語は最後まで言い切らないのが礼儀で、そのほうが相手に悪い印象を与えないというのが特徴です。曖昧さで保険をかけておいて言葉の持つ責任を話し手が負わないという見方もできますが、相手を慮り全てを語らないところに尊さや美や品を感じるというのが日本人の特性であり、感性なのだと思います。

「え、日本語って文末が大切なんじゃないの?なんで最後まで言わないの??」「うーん、わけがわからん」と少し学習が進んでくると戸惑う方も多いでしょう。相手を慮って、省略された部分を予測して、頭の中でことばを補いながら会話を進めていくというのは、学習者にとっては非常に大変なことです。

レッスンでは練習のために一文で話すようにと言われるけど、一歩教室の外に出てしまうと、日本人が言っていることが分からない・・・。もちろん、会話練習で省略する形も取り扱っていますが、ケースバイケースであまりに多様ですから慣れが必要です。ここが日本語学習の難しいところかもしれません。

 

3. 語順の自由度が高い

 

先程、日本語の基本語順はSOVだと述べましたが、最も大事な点は「動詞を最後に置く」という点です。これさえ守れば日本語の語順はかなり自由です。

「名詞+助詞」をセットにして動かしさえすれば、語順を変えても、情報は失われません。

 

<例文>

「きのう スミスさんは 太郎さんと 銀座で すしを 食べました。」

「スミスさんは 銀座で 太郎さんと きのう すしを 食べました。」

どちらも問題ありませんね。意味も変わりません。

とは言っても、主語を文頭に、目的語を動詞の直前に、というのが基本形で、分かりやすい文です。時間、場所、原因、目的、場面などエクストラの状況を加えるものに関しては語順は関係ないと覚えておくといいですね。

 

 

4.わかっている名詞+助詞は省略できる

日本語は、わかっている名詞+助詞は、主語であっても述べなくてよい言語です。「いただきます!」と言うときに「私は食事をいただきます」とは言いませんし(まあ、これは挨拶のようなものですが・・・)、会話中、話題にのぼっているものや人のことも省略しがちです。

例えば、こんな感じです。Aのやりとりより、Bのやりとりの方が自然です。

A「スミスさんは、いつ すし屋に 行きましたか?」「わたしは きのう すし屋に 行きました。」

B「いつ寿司屋に行きましたか。」「きのう 行きました。」

※時々、「はい、がありますね」と助詞だけ残す人がいるので注意しましょう。

 

 

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