日本について外国人に聞かれたら?ー日本語は世界一難しい言語か? (前編)ー

日本語は世界一難しい言語か? (前編)

言語を理解するためには、その根底にある文化を理解することが近道だったりします。

今回から数回に分けて「日本について外国人に聞かれたら」というシリーズでお届けします。

私たち日本語教師は日本について質問されたり、伝えたりする機会が多々あります。主観や偏った見方で自分の意見を伝えるのは困りもの。これもまた日本語教師に求められる力です。客観的・多角的・多面的・俯瞰的な視点で日本を伝えることができるといいですね。一緒に日本語教師力、高めていきましょう!

まず一回目は「日本語」です。

Quoraでも「日本語は世界一難しい言語ですか?」というようなやりとりが繰り返し展開されています。みなさん、気になっているのですね。

日ごろ日本語を教える私たちも、学生から「日本語は難しい」と言われることがありますし、日本語は特殊だと感じている人も少なくありません。実際、海外の言語と客観的に比べるとどうなのでしょうか。

言語とひと言でいってもいろんな要素がありますね。早速、それぞれについて見てみましょう。

日本語の発音

日本語の音節の数は世界の言語に比べると、決して多い方ではありません。 音節とは一番小さい音の単位のこと。
言語学者の金田一春彦氏によると 112だそうです。これに増え続ける外来語音(「ティ」「ヴァ」などのカタカナ語の音)を加えても約130。英語は数千とも言われます。

構成する音素、母音、子音の数も平均〜少なめであり、開音節であることから音の種類は少なめ、一語に含まれる音節数は多いと言えます。

日本語は開音節言語

日本語はスペイン語やイタリア語同様、開音節言語であり比較的聞き取りも発音もしやすいのが特徴です。
開音節言語とは音節が常に母音で終わる言語のことです。世界的には圧倒的に閉音節(子音で終わる)が多数を占める言語が多く、英語はもちろん近隣の中国語、韓国語も閉音節言語です。

ちなみに、日本人にとって英語の発音が難しい理由の一つも、カタカナ語があのような発音になってしまう所以も「日本語が開音節言語であること」にあります。

日本語で話している限り、子音で単語を終わらせることはありません。どうしても母音をつけたくなって、つけてしまうのです。

Cup → カップ(kappu)   Hat → ハット(hatto)

日本語を学習する人に対してはこれも規則性があるので、「子音”t”は促音化し”o”を伴い”to”と発音する」、「”k, g, s, p”などは促音化し”u”を伴い、それぞれ”kku”, “ggu”, “ssu”, “ppu”と発音する」などと発音の変化のヒントを教えることができるでしょう。

 

日本語音声の特徴 拍(モーラ)・ 高低アクセント

日本語音声の特徴としては長音(のばす音)、促音(跳ねる音「っ」)があり、拍(モーラ)という概念があることです。母語に拍の感覚がないと聞き分けたり、言い分けたりするのが難しいようです。

長音:「おじさん」(4拍)と「おじいさん」(5拍)
促音:「渡航」(3拍)と「特攻」(4拍)

一般に日本語のアクセントは、英語のような強弱アクセントではなく、高低アクセントだと言われています。日本語では、相対的に音の高さの異なる高低2レベルの音を使い分けて発話しています。四声や五声などが存在するアジアの多言語などに比べると比較的シンプルだと言えるでしょう。

母語にない音は発音するのが難しいですね。例えば、英語話者が苦手な音に「りゃ、りゅ、りょ」があります。「旅行(りょこう)」が「ろこ」と聞こえたりするのは、「りょ」と長音があるからです。ただ、どの言語であっても難しい発音・母語にない音は一定数存在するので、日本語は発音が特に難しいというわけではないと思います。

 

日本語の文法

次に、日本語の文法を見てみましょう。
まず時制は非過去(現在と未来)、過去の2つ。ヨーロッパ言語のように格や単数・複数、人称での変化はありません。

活用の数はそこそこありますが、基本的にはルールに基づいており、不規則のものがあまりない(自他動詞が一番難しい?)ため、これも特に難しい言語ではないと言えると思います。

 

日本語の読み書き:世界一難解な(?)表記システム

独自の表記システムであるひらがな・カタカナが47文字ずつ加えて常用漢字が約2000字あります。

漢字の読み方も音読み(中国から来たもの)、訓読み(もともとの日本語の音を感じに合わせたもの)の2種類が今でも使われています。しかも、ものによっては組み合わせで読み方が変わる。厄介です。「生」なんていう漢字は100もの読み方がありますからね。

日本語は単語と助詞、助動詞の区切りがひらがなとカタカナだけでは分かりにくいこと、音節数が多いこともあり、意味を取りやすくするためにも漢字が役に立ちます。

・・・とは言っても、大人になって一から言語を学ぶ方にとってはこれを覚えるのは大変なことですよね。こんな難解で複雑な表記システムをもつ言語は他にないのではないでしょうか。

 

 

次回は・・・

今回は、日本語の発音、拍とアクセント、文法、表記に触れてみました。

次回の『日本について外国人に聞かれたら?ー日本語は世界で一番難しい言語か(後編)』では、日本語の会話についてお届けします。

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