「〜にくい」と「〜づらい」の使い分け

「〜にくい」と「〜づらい」の使い分け

「カニっておいしいけど、○食べづらいよね/○食べにくいよね」

「〜にくい」も「〜づらい」もどちらも使えるけど、ニュアンスって同じですか?よく学習者から質問されるという先生も多いのではないでしょうか。というわけで、本日のお題は「〜にくい」と「〜づらい」の使い分けです。

 

<バーガーショップで、好きな男性の前で>

男性:あれ、食べないの?
女性:ここのハンバーガー、大きくて食べにくいね。
男性:そうだねー。でも早く食べないと冷めちゃうよ。(彼女をじっと見つめる)
女性:そんな見られたら恥ずかしくて、食べづらいわ。

こちら、Coto の講師が作ってくれた例文ですが、情景が目に浮かぶいい会話文です。ここに使い分けのヒントが隠されていますが、わかりますか?

 

〜にくい

「〜にくい」・・・客観的な困難さ、物理的なことが原因のとき。自分以外のことが原因で困難になっているとき。漢字だと「難い」です。

  • この箱、あけにくくて、イラっとするわ~!
  • ミルフィーユって、大好きなんだけど、食べにくいのよね。

カニも分厚いハンバーガーもミルフィーユもその形状・性質のせいで食べるのが難しいんですね。

また、人の意志でコントロールが不可能な場合、無意志動詞の場合も「〜にくい」だけです。たとえば、「太りにくい体質」、「わかりにくいマニュアル」、「割れにくい食器」、「忘れにくいパスワード」、「滑りにくい床材」「乾きにくい素材」などがそうですね。

 

〜づらい

「〜づらい」・・・何かをするときに体力と精神に負担を感じるとき。心理的ストレスで漢字のとおりやっぱり「辛い」んですね〜。気持ちを表しているのはこちらです。

今日はひなまつりです。「どうして女の子の日はあるのに、男の子の日はないんですか」・・・いやあ、ないわけじゃないよ、言いたいこともよくわかる、でもなんか答えづらいな〜。こういうときの心理をあらわすとき、「〜づらい」はしっくりきます。

 

ただ、下の例文のようにぺろーんと1文で見ると、どちらも言えてしまいます。

  • 上司が仕事中だから、ちょっと「帰りづらい/帰りにくい」な。
  • せっかく彼女が作ってくれたのに、まずいって「言いにくい/言いづらい」よね。
  • 彼女に仕事、「頼みにくい / 頼みづらい」んだよね。
  • 駅前にできたレストラン、外から丸見えだし、なんだか高そうだし、「入りづらい/入りにくい」ね。
  • SNSのような場所では、自分の考えを「投稿しにくい/投稿しづらい」です。

どちらも文章としては間違ってはいません。でも、「〜にくい」と「〜づらい」とではニュアンスが変わってきますから、文脈によって使い分けが必要です。心の声を文字にしてみましょう。

(いつも無理をきいてもらっているから心理的に申し訳なくて)  頼みづらい。
(山のように仕事を抱えているのを見て、物理的に無理そうだから)頼みにくい。

(怒られるのがわかっているときは心理的に)話しづらい。聞きづらい。
(電波やwi-fiの調子が悪いときは物理的に) 話しにくい。聞きにくい。

 

 

「〜づらい」が勢力拡大中!

と、ここまでが基本的セオリーですが、最近は「~にくい」と「~づらい」の区別がなくなっています。「このハンバーガー、大きくて食べづらっ」「この問題、わかりづらー」と、「~づらい」という表現が昨今多くなってきているように感じます。ストレスが多い現代社会では「~づらい」と感じる場面が多いんですかね。まさに「生きづらい」社会。

そんな話をしていたらある先生が、両者の区別がなくなりつつあるのは、昨今のやや過剰な(?)丁寧さの発露ではないかと。「〜にくい」を使えば、その客観性ゆえに批判的であると、とられざるを得ない。それを避けるために、「(あの、その、私の主観や、はたまた私の技術や知識不足ゆえに)づらい」んです、と言うほうが丁寧度が増すのかも、という仮説を立てていました。ほぉ、なるほど。一理あるかもしれません。リスク回避偏重な現代社会では、こういった言語的配慮がよりしっくりくるのかもしれませんね。

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