使役受け身

使役受け身

受け身①受け身②使役に引き続き、この勢いで今回はヴォイスの使役受け身を取り上げます。

この使役受け身、受け身と使役で軽〜いダメージを受けたところで、さらに使役受け身〜汗 Oh, noooo!となってしまう方、多いかと思います。「形が難しい」「いつ、どこで、どのように使うかわからない」という受け身・使役と同様の理由に加えて、「口が回らない」という理由でハードルが高いようです。教える側も混乱してしまうこと、しばしば。ということで、私たちもしっかりポイントを整理しておきましょう。

私も今週、中級のクラスで使役のレビューを担当したので、記憶がフレッシュなうちに記事にしたいと思います!

 

なぜ使役受け身は難しいと感じるのか:視点

さて、使役受け身とはなんなのか。

「使役」も「使役受け身」もやりたくないことを誰かにやるように指示・強制された(やらされた)時に使います。

<例文>

使役:   母親は 子供に にんじんを 食べさせた。

使役受け身:子供は 母親に にんじんを 食べさせられた。

この2つの違い、なんだと思いますか。行為を強制されるという意味を、子供の立場から見て表現した文が使役受け身です。子供が嫌だと思ったり、迷惑だと感じたりしたことを表現するときに使います。

この使役文の意味は「強制」です。使役文から使役受身文にできるのは基本的に「強制」の場合のみです。

使役受け身が難しく感じるのはなぜか。それは「視点」と「ニュアンス」が絡む表現だからなのです。

 

<例文>

「子供の時、毎日塾に行かされました。遅くまで勉強させられました。にんじんを食べさせられました。目にいいからです。それから、背が高くなるように牛乳も毎日1ℓ飲まされました。そして、毎朝家の周りを走らされました。。。」

※この文は主語(わたし)が全て省略されています。日本語では「わたし」を主語にして話すことが多いです。「母は私を塾に行かせました」という使役文より、スポットライト(視点)を「わたし」を主語にした使役受け身のほうがより自然です。ということで、「私は大変だったのよ〜」という「わたし」の気持ち、「わたし」が誰かにされて嫌だったことを伝えたいときに使う、と学習者に伝えると使う場面がイメージできます。

 

 

なぜ使役受け身は難しいと感じるのか:形と言いにくさ

使役受け身の難しさの2番目の理由は「形」です。形が複雑で、しかも、とっても言いにくい!!!

U-verbsの場合、本来であれば、まず「行く」を使役の「行かせる」にして、そこに受け身を加えて「行かせられる」がセオリーです。理屈としてはそうなのですが、この2ステップを踏むやり方はより難しさを感じさせてしまうことがあります。なので、使役受け身は別物として扱ったらいかがでしょうか。

ちなみに、Cotoが初級のメインテキストとして使っている『げんき』ではU-verbsは、「行かされる」の縮約形のみを導入します。私たちの日常生活では縮約形のほうが一般的に使われていますから、縮約形だけ覚えればいいという考えです。私の経験上、こちらの方法でやったほうが上手くいきます。選択肢があるとかえって混乱してしまうので、シンプルにいきましょう。

そして、これはいつものことですが、、、形の練習をするときは、難易度の低いものから順番にが鉄則!Ru-verbs→ Irr.verbs→ U-verbsの順に紹介します。練習もまずはグループごとに、慣れてきたらミックスキューで練習します。

辞書形 使役受け身形 縮約形
RU-verbs:グループⅡ 食べる 食べさせられる
irr. verbs:グループⅢ する させられる
来る 来させられる
U-verbs:グループⅠ 買う 買わせられる 買わされる
行く 行かせられる 行かされる
話す(※) 話させられる        
待つ 待たせられる 待たされる
読む 読ませられる 読まされる
やる やらせられる やらされる

 

おさらい:「使役受け身」の作り方

Ru-verb(る→させられる)

食べる→食べさせられる

 

Irregular verbs

する→させられる

くる→こさせられる

 

U-verbs(u→aされる)

行く→行かされる

読む→読まされる

※例外「話す、直す、出す、消す、返す、押すなど」(す→させられる)

話す→話させられる

「話す」の使役受身形には縮約形がありません。例外という紹介の仕方をしています。

 

もう一つ:「感情」の使役受け身

使役受け身は、話し手(わたし)が「強い印象を受けた」という場合にも使われます。この場合、「感情」や「感覚」を表す動詞が使われます。

<例文>

  • 多くのことを考えさせられた映画だったな。
  • せっかく入った大学を辞めちゃうのなんで、息子にはがっかりさせられましたよ。
  • 子どもの何気ない一言にドキッとさせられることってあるよね。
  • 先日、娘と一緒にアニメを見ていたのですが、意外と感動させられました。

 

 

使役受け身ってどうやって練習すればいいの?

練習例 #1

つい先日、こんな面白い練習方法を同僚にシェアしてもらったので、授業で早速やってみました。パターンプラクティスの最後にやったのですが、これが結構盛り上がりました。

場面は「デート」です。デートで彼女(彼氏)にすることをたくさん挙げていきます。

例えば、「荷物を持つ、駅まで迎えに行く、1時間も待つ、晩ご飯をおごる、高いアクセサリーを買う、親に会う、失敗したケーキを全部食べる、掃除をする、お弁当を作る、買い物につきあう、引っ越しを手伝う」などなど、ホワイトボードにどんどん書き出していきます。(もちろんハンドアウトでもOK!)

<例>

T:Aさん、優しいですね。荷物を持ってあげたんですか?

A:いいえ、持たされたんです。 Bさん、優しいですね。駅まで迎えに行ってあげたんですか。

B:いいえ、迎えにいかされたんです。 Cさん、優しいですね。1時間も待ってあげたんですか。

C:いいえ、待たされたんです。

いやあ、やらされている感がビンビン伝わってきますね〜。もちろん、「はい、遅い時間だったから、迎えに行ってあげたんです」なんていうのもありです。感謝の気持ちを表す「〜てあげる」の練習にもなって一石二鳥です。両方することで運用力もアップします。気持ちを表す表現は学習者の母語にぴったり対応する表現がない可能性が高いので、あわせて練習しておきたいですね。

私のクラスでは「変なデートですね、ぷぷぷっ」と言いながら、楽しく練習できましたが、誰に対してもやってOKというわけではありません。このようなタイプのものは学習者のタイプや年齢を見た上でお使いください!

 

練習例 #2

使役受け身の定番のトピックといえば、「子どものとき、親にさせられて嫌だったことはなんですか。」です。これにちょっとプラスして短い会話文にします。これはレッスンの最後のアクティビティとしてしました。

「親になったら、自分の子どもに〇〇させますか。」という使役文を加えます。そうすることで、会話が広がりますし、使役、使役受け身両方の練習にもなります。「楽器を習う、スポーツをする、ペットの世話をする、家事を手伝う、自分のお皿の食べ物を全部食べる、教会に行く」などなど。私のクラスはアメリカ・ヨーロッパの人が多いので、教会を加えてみました。出すキューは学習者をよく見て考えてください。また、キューが「する」ばかりにならないように気をつけましょう。

<会話例>

A:子供の時、挨拶させられた

B:うん、させられた

A:将来、自分の子どもにも挨拶させる

B:うん、させるかな。やっぱり挨拶すると自分も相手も気持ちがいいからね。(自分の意見を述べる)Aさんはどうですか?・・・

 

いかがでしたか。形を紹介するときも、練習するときも基本は「簡単なものからチャレンジングなものへ」が鉄則です。使役受け身の場合も同様です。学習者がどうやったらスムーズに言えるようになるか、学習者がどんな場面だったら使うのか、どうやったら楽しく練習できるか、ということを考えてレッスンプランを立てていきましょう!

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