日本語教育:アイスブレイクのすすめ

日本語教育:アイスブレイクのすすめ

日本語教育:シャドーイングのすすめ」「日本語教育:多読のすすめ」につづく『日本語教育:〇〇のすすめ』シリーズ第3弾は授業のはじめに取り入れたいアイスブレイクです。

アイスブレイクで “日本語モード” に

アイスブレイクとは緊張をほぐすための方法のことです。コミュニケーションを取りやすくしたり、学習者の気持ちや態度を積極的にさせたりする効果があります。

Cotoの学習者はビジネスパーソンが多いのですが、ほとんどの方がふだん英語の環境で生活しています。そのせいか、クラスに入ってもなかなか “日本語モード” になっていないと感じることがあります。また、海外在住の学習者がいるオンラインのグループレッスンなどでも、そのように感じることがあります。

こちらがエンジン全開でも、学習者のエンジンがかかっていないと、レッスンはうまくいきません。レッスンに来たからには、「さあ、ここから日本語モードで行こう!」という気持ちになってもらいたいですよね。

そこでオススメしたいのがアイスブレイクです。

 

アイスブレイクの方法

さあ、それではアイスブレイクの方法です。「はーい、自由に話してください!」と言っても、会話はできるものではありませんから、仕込みが必要です。まずはトピックの立て方から見ていきましょう。

 

トピックの立て方

トピックは「はい」「いいえ」だけで回答できるものではなく、できるだけ長く回答してもらえるようなトピックを用意しておくことがポイントです。

また、「最近、面白いことがありましたか」「日本についてどう思いますか」などといったざっくりとした抽象的な質問は、日本人同士でも答えに窮することがありますね。安定のトピックは、仕事、食べ物、旅行、イベント、旬の話題、日本特有の文化や風習に関するものです。そこからメンバーのバックグラウンドや学習レベルをチェックしたり、彼らの共通点を探したりして、さらに話す内容を絞り込んで、具体的なトピックを考えます。

メンバーが変わらないグループレッスンであれば、司会をたてて話をさせてもいいかもしれません。毎回のルーティーンにすると学習者も次第に慣れてきます。質問する役の人は5W1Hを意識して質問ができるようになるとさらにいいですね。レベルに応じて、少しずつできることを増やしていくと良いでしょう。

 

アイスブレイクのメリット

先日、私のクラス(N3+レベル・5名・15分)でアイスブレイクをしたときのエピソードです。ちなみに、50分×2コマ=100分のレッスンです。

「今の仕事に興味を持った理由は?」がこの日のトピックでした。新しい学習者(就職活動中の大学院生)が入る日だったのですが、このクラスはI T系のビジネスパーソンが多いクラス(事前にリサーチ済み)なので、このトピックにしてみました。「何の開発をしていますか」「専攻はなんでしたか」「どんな言語を使っていますか」「どうして日本に来たんですか」などと、自分が知っている語彙や習った文型を総動員して、学習者同士でどんどん会話を進めている様子が大変印象的でした。

おもしろいもので、日本語モードになってくると、学習者の姿勢が前のめりになっていきます(笑)。自分で伝えよう、聞き漏らすまい、という姿勢がビシビシ伝わってきます。伝えたいことが伝えられたときの喜びは格別でしょうし、伝えたいことが伝えられなければもどかしく感じることでしょう。これがいいのです。

「自分のことを伝えたい」「相手のことを知りたい」「もっと話したい」・・・アイスブレイクでは学習動機や目標を学習者自身が自分で再確認することができます。初心忘るべからずですね。確認すれば、自ずと学ぶ姿勢が変わってきます。

このアイスブレイク、日本語モードになることで、効率良く効果的にレッスンが進められるだけではありません。教師にとってもメリットがあります。学習者の新たな一面を垣間見ることもできますし、ニーズを再確認することもできます。「あ、こんな語彙も知っているんだ」「いつもこの活用を間違えるな」「自動詞と他動詞が弱いな」などと気づきを得ることもできます。まさに”win-win”です。

 

アイスブレイクをするときの注意点

プライベートレッスンでのアイスブレイクでは、教師が興味を持って学習者に積極的に質問することで、学習者の本来の会話能力を引き出すことができます。ただ、教師の話しすぎは禁物です。注意しましょう。

アイスブレイクのポイントは「教師は聞き役にまわる」「好きな話題で盛り上がりすぎない」ことです。会話が盛り上がっていて、中断しにくい状況のこともありますが、キリがいいところでレッスンに移行することも大切です。10分くらいを目安にすると良いでしょう。

「教師は聞き役にまわる」というポイントをあげましたが、学習者同士で会話が続く場合、教師は聞き役で問題ありません。ただ、「先生はどう思いますか」と聞かれる場合がありますね。教師としては学習者の話す時間をしっかり確保したいので聞き役にまわっていますが、まれに日本人は自分の意見を言わないと見られてしまうこともあります。リアルな会話を通じて日本人の文化や考え方を知りたいと考えている人もいますからね。そのあたりは臨機応変に!

 

アイスブレイクはプライベートレッスンでもグループレッスンでも取り入れることができます。一石三鳥くらいのメリットがあるいいことずくめのアイスブレイク、ぜひ皆さんもご自身のレッスンに取り入れてみてはいかがでしょうか。‍

 

 

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