【同期対談:前編】3年目の日本語教師、今だから見えてきたこと
――教師としての「3年間の変化」――
1人はCoto麻布校、1人はオンライン校。日本語教師を目指した理由も、勤務形態も違うが、ほぼ同じ時期にCotoに入った二人――Cotoで3年経った今、どんなことを感じているのでしょうか。
同じ時期にスタートした二人だからこそ見えてきた、3年間の変化。そして、学生との向き合い方、自分に合う働き方、これからのキャリアについて、ざっくばらんに語りました。
【対談者】
Takako: Coto麻布校の教師。プライベート&グループレッスンやキッズコースも担当。育児・介護がひと段落ついたころにCotoに出会い、Cotoで働くことを目標に日本語教師の資格を取った。兼業で食品メーカーで商品企画の仕事にも従事。現在は、新米教師をサポートするサポートコーチも務めている。
Matsubara: Cotoオンライン校の教師。企業研修講師としての経験をベースに、日本語教師、キャリアコンサルタント、ライターなど、複数の仕事を組み合わせながら活動している。それぞれの経験をつなげながら、「伝えること」と「人のキャリアを支えること」に取り組んでいる。
① 3年目の現在地――今だから見えてきた、日本語教師の「現実」
Matsubara(以下M): 私たち、ほぼ同じ時期にCotoに入って、日本語教師として3年経ったことになりますね。
Takako(以下T): そうですね。私が初めてレッスンをしたのが2023年9月ですから。
M: 3年って、結構大きな節目ですよね。日本語教師って、やる前は「国際交流」とか、ちょっとキラキラしたイメージを持っている人もいると思うんです。でも実際にやってみると、「思っていたのと違った」と感じて、挫折してしまう人もいますよね。
私自身は、Cotoに入る前と入った後のギャップがほとんどなかったのですが。
T: 私も、ネガティブな意味でのギャップはあまりなかったですね。むしろ、いい意味での「期待の裏切り」というか。「え、そんなこともできるの?」っていうことが結構ありました。
M: たしかに。「思っていたより自由だった」というのはありますね。
T: そうなんですよ。でも、やっぱりレッスンに関しては、想像していたとおり最初の一周目が結構大変でしたね。
M: ええ。いろんなレベルのテキストや教材を一周して、全体像をつかまないと、学生さんのさまざまなニーズに対応するのが難しい。でも、それを一周すると、だんだん「こういうときは、こっちの教材を使おう」と自由に組み合わせられるようになってきて。
T: そうそう。それから、やりたいと思ったことに手を挙げれば、いろんなことに関われる。みんなが等しくチャンスを与えてもらえる感じもありますね。上下関係も感じないし、すごくフラットですよね。テキストの著者のような、私にとっては雲の上の存在の人と一緒に働けたり。
M: 本当に風通しがいい社風です。
② 1年目、「私でいいのかな」――期待に応えようとした頃
M: 1年目から何の迷いもなく働けていたんですか?
T: いや、全然ですよ。「私、やっぱり無理だわ」って思うこともありました。でも、自分が無理だというより、「こんなことで、この学生さんの期待を裏切っちゃいけない」っていう気持ちのほうが大きかったんですよね。「この人の期待に、自分はどのくらい応えられているんだろう」って。
M: 「私でいいのかな」っていう。
T: そう。「私でいいのかな」っていう感じ。なんか、申し訳なさみたいなものもあって。
M: 学生さんからすると、先生が何年目なのかって、わからないですもんね。
T: そうなんですよ。学生さんは、目をキラキラさせていろいろ聞いてくださるんですけど、こっちは「いや、実はまだ駆け出しで……」みたいな(笑)。だから、最初の頃は、そういうところにちょっとプレッシャーを感じていました。
M: しかも、学生さんが払っている金額は、先生が新人だからといって安くなるわけじゃないですしね。
T: そうなんですよね。だから、「ちゃんと期待に応えなきゃ」って。
③ 「守」から「破」へ――自分なりの教え方を探す
M: さっき「一周目は大変だった」という話が出ましたけど、やっぱり教材を一周するって大きいですよね。
T: 大きいですね。最初は、何がどこにあって、どうつながっているのかも、よくわからないんですよね。でも、とりあえずいろんなレベルのテキストや教材を一周してみる。
M: そうすると、「このテーマの補足なら、こっちの教材を使ってみよう」とか、だんだん自由に組み合わせられるようになってきますよね。
T: そうなんですよ。なんか、そこから面白さが加わってきて。歌舞伎じゃないですけど、「守破離」ってあるじゃないですか。
M: ありますね。「守破離」。
T: 一年目は、もうわけがわからないから、まずはCotoのやり方に自分が慣れていく。それで、だんだんそこに自分の色をつけていくというか。教えることの基本は守りつつ、自分だったらここはこうする、っていうのが少しずつわかるようになってきました。まだ「離」までは行ってないですけど(笑)。
M: まずは「守」ですね。でも、「守」って絶対大事なんですよね。ベーシックな部分は、やっぱり身につけないといけない。
T: そうですね。
M: でも、「破」あたりから、だいぶ面白くなってきますよね。
T: そうなんですよ。
M: そう考えると、3年間で変わったのって、単に「授業が上手くなった」ということだけじゃないのかもしれませんね。
T: そうですね。最初の頃って、「これをやらなきゃ、これもやらなきゃ」って、頭の中にリストがあるんですよ。
M: わかります。最初にこれをやって…次にこれをやって…みたいな。
T: そう。その必死さって、たぶん言葉にしなくても学生さんに伝わっちゃうんですよね。最近は、教材もだいたい一周終わって、自分がレッスンしているところを少し客観的に見られるようになってきた。だから、「絶対こうしなきゃ」というより、もっと自然にレッスンを組み立てられるようになってきた気がします。
④ 3年目、「完璧じゃなくていい」――自然体で学生と向き合う
M: そうやって「こうしなきゃ」が少しずつ減ってくると、自分自身も楽になってきませんか?
T: なりましたね。最近すごく思うのが、「いい塩梅」って大事だなということです。
M: ふんふん。
T: もちろん、学生さんにちゃんとしたレッスンを提供することは大事なんですけど、100点を目指して、全部完璧にやろうとすると、やっぱり無理がある。だから、100を求められたとしても、私は80ぐらいを目指して、残りの20はその場で調整する、ぐらいがちょうどいいんじゃないかなって。
M: それ、すごくわかります。日本語教師って、「完璧に準備しなきゃ」「先生なんだから、何でも知っていて、何でも答えられなきゃ」って思いがちですよね。
T: そうなんですよ。レッスンは生ものだから予想外なことも起こる。それに、ネイティブだからって、日本語について何でも即答できるわけじゃない。だから、学生さんから何か聞かれてわからなかったら、「ちょっと待って。一緒に考えてみよう」でもいいと思うんです。
M: そのほうが、むしろ自然ですよね。偶然発生するライブ感を楽しむというか。
T: そう。教師と学生っていう立場はもちろんあるんですけど、結局は人と人だから。
それに、当然ですが「相性」もあります。友達に「この病院のお医者さん、いいよ」ってすすめられて行ったとしても、その医者を自分は冷たく感じるかもしれない。やっぱり、人と人だから、Aさんには合うけど、Bさんには合わないこともある。
M: ありますね。だから、全員に好かれようとしなくてもいい。
T: そうなんですよ。「何がいけなかったんだろう」って自分を責めるんじゃなくて、人と人だから、合う・合わないはある。全員に好かれるなんて、ないですから。
M: 本当にそう。よく「2割の人には嫌われる」って言いますけど、そんなもんですよね。
T: そんなもんです(笑)。
M: 私、そのマインド、すごく好きです。実は私も、「完璧主義って、教師自身を苦しめることがあるよね」というテーマで、以前記事を書いたことがあります。長く働くためのマインドセットは、ある意味スキルより大切かもしれませんね。
(参考)日本語教師を苦しめる「こうあるべき」――長く働くために、手放してもいい3つの思い込み
前編はここまで…
3年間を振り返ると、教え方が変わっただけではありません。学生との関わり方や、自分自身の強みにも、少しずつ気づくようになってきました。
では、3年目の今だからこそ見えてきた「自分の強み」とは、どんなものなのでしょうか。そして、その強みが生きる場所とは?
後編では、学生から見た自分、働く環境、そしてこれからのキャリアについて、二人で考えていきます。