「あいだ」「とき」の違いを、どう説明しようか
はじめに
日本語学習者からよくある質問の一つが「とき」と「あいだ」の違いについてです。「とき」=when、「あいだ」=while, duringという訳語を当てはめることが多いのですが、そこにもまた混乱の理由があるのでしょうか。以下の誤用がよく出ます(非文とまでは言えないが、なにか違和感の残る文)。
✕日本で大学に通っているあいだは、よくコンビニに行った。
この文をつくった学生が過去の習慣に対する回想という文脈に立っているとして、この文を最低限直すとすれば
〇日本で大学に通っているときは、よくコンビニに行った。
が、正解です。
「あいだ」を使いたければ、後件は「よく行っていた」という継続動詞表現を用い、過去習慣として述べなければいけません。
〇日本で大学に通っているあいだは、よくコンビニに行っていた。
教える側が知っておくべきこと
①1)「とき」=「場合・条件」、2)「あいだ」=「期間全体」という軸で区別する
1)「とき」=場合、条件(conditional case)
「とき」という日本語をきくと、日本人としては漢字表記「時」のイメージに引っ張られるせいか、「時間」の概念を思い浮かべがちですが、接続する語彙の特性(子供のとき、会議のとき、病気のとき…etc.)をみても、「場合/ケース/条件」と考えたほうが、より論理的に整頓された文法説明ができそうです。
例)
日本で大学に通っているときは、よくコンビニに行った/行っていた。
後件の「コンビニに行く頻度の高さ」は、「日本での大学生活」という条件によって、担保されていると考えます。「とき」はある行動や状態のための条件的・状況的背景(background)だとも言えるでしょう。
例)
〇晩ごはんを食べているとき、友だちが訪ねてきた。
✕晩ごはんを食べているあいだ、友だちが訪ねてきた。
「友だちが訪ねてきた」のは一回きりの出来事であり、それが起きたのは「晩ごはんを食べている」という一場面・一状況の中でのことなので「とき」が適切です。「あいだ」はその期間全体を指すため、一点の出来事とは結びつきません(この文を「あいだ」で言いたければ、後ろに「に」をつけて「ばんごはんを食べているあいだに、友だちが訪ねてきた」としなければならず、これは②で扱う例外にあたります)。
2)「あいだ」=ある一定の期間枠(~から~までずっと)と捉える
一方「あいだ」は、その名の通りある期間の始まりから終わりまでを枠として区切って指すことばです。「とき」が一場面・一状況を指すのに対し、「あいだ」はその区間全体にわたって何かが継続していたことを述べるのに使われます。
例)
日本で大学に通っているあいだは、よくコンビニに行っていた。
→「大学に通っていた」という期間の始めから終わりまでずっと、という枠組みが前提にあります。
*なお、「あいだ」の後件にどのような述語(動作の継続か、状態か)が来るのかについては、次の②で詳しく扱います。ここではまず「とき=一場面・一状況」「あいだ=期間の全体」という枠組みの違いを押さえてください。
②「あいだ」の後件にくる述語について
「あいだ」は期間全体にわたることを述べることばなので、後件には継続(〜ていた)や、その期間中ずっと成り立っていた状態(〜だった)がふさわしく、「(期間全体には及ばない)点的な出来事」には使いません。
例)
〇日本で大学に通っているあいだは、よくコンビニに行っていた。(継続の習慣)
〇彼が社長のあいだ/社長をしていたあいだは、会社は着実に成長した。(状態)
✕晩ごはんを食べているあいだ、友だちが訪ねてきた。(点的な出来事のため不可)
ただし、「あいだ」の後ろに助詞の「に」が来る場合は、「(期間全体には及ばない)点的な出来事」にも使うことができます。
晩ごはんを食べているあいだに、友だちが訪ねてきた。
子どもが寝ているあいだに、用事を済ませた。
留守の間に、泥棒に入られた。
これについては、学生の理解に訴えるのはたやすいと思います。それは、時間名詞につく「に」の機能=特定の時点(3時に、日曜日に、など)を指すという既習知識と結びつけて説明できるからです。「に」がつくことで「あいだ」全体の中の一点が切り出され、一時点で生じる出来事ともなじみがいいわけです。
「あいだ(は)」+ テイタ形/状態
「あいだに」+ 「(期間全体には及ばない)点的な出来事」
と提示すれば論理の矛盾はないだろうと思います。
学習者への教え方
それでは具体的に学習者には、どう教えるのが理解しやすく、効率がいいのでしょうか。
まずは後件の制限を整理することが大事だと思います。
「あいだ」のあとは → 「〜ていた(継続)」と「〜だった(状態)」
「あいだに」のあとは →「(期間全体には及ばない)点的な出来事」
「とき」のあとは → 制限なし:「〜ていた(継続)」「〜だった(状況)」「(期間全体には及ばない)点的な出来事」
まとめ
講師が知識として整理すべき視点と、学生に説明する視点(後件の性質で教える)とは、分けて持っておく必要があります。
| 講師の知識 | 後件の制限 | |
| あいだ | 期間全体にわたる継続
(あいだずっと) |
〜ていた・〜だった |
| あいだに | 期間内の一点 | (期間全体には及ばない)
点的な出来事 |
| とき | 一場面・一状況
(条件的背景) |
後件の制限なし |
最後に。今回の考察は「あいだ」と「とき」の比較の中で、「過去」時制に限ったものであることをご承知おきください。
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