レッスン中の急な質問、どうする?<実践編・中級>
レッスン中に急な質問! どう答えた?
前々回の記事「レッスン中の急な質問、どうする?」では、解決方法を5つ紹介しました。今回はその中の「解決方法D:その場で解決する」の実践編として、私が実際に過去のレッスン中に受けた質問を例に挙げ、その時にどうやってその場で解決したか、その手順と手法を前回の初級編に続いて今回は中級編をお話しします。
実際にあった質問例 中級編(3つ)
では早速、私が事前準備していた範囲を超えたところからきた、中級クラスのレッスン中の急な質問例を3個紹介します。(※質問の番号は前回の初級編①~③からの通し番号です。)
・質問④ 「~まだしも」って、ほかの言い方はできるの?
・質問⑤ 「以降」と「以来」―似ているけど、どう違うの?
・質問⑥ 「関して」と「関連して」は同じ意味?
いかがでしょうか。皆さんが過去に受けたことがある質問はありましたか。事前にレッスン準備した際の想定質問の範囲内でしたか。
初級クラスの場合は「語彙・文型・表現・漢字」と、学習内容全般にわたっての質問が出ますが、中級クラスともなると「文法や語彙」など、自学自習だけでは理解しづらいもの―つまり、ネイティブの感覚に対しての質問が多いことが分かります。中級レベルの質問で求められるのは「瞬発力と正確性」。初級に比べると、細かい違いやニュアンス、言い換えについて―「短時間で」「分かりやすく」「例文を交えながら」説明する―レッスン内での即時回答はこれらが「肝(きも)」となります。
では早速、初級編と同じように質問を分析していきましょう。
手順1) 質問を分類する
《中級クラス》
- ④「~まだしも」って、ほかの言い方はできるの?⇒中級・文法
- ⑤「以降」と「以来」―似ているけど、どう違うの?⇒中級・語彙、用法
- ⑥「関して」と「関連して」は同じ意味?⇒中級・語彙、用法
手順2)どの手法で解決できそうか考える
手法・その1―板書する:「既習語彙」と「既習文型」を使って分析
《効果》知っている日本語で理解できたことで、学生に達成感と自信が生まれる
手法・その2―図解する:見える化して視覚的理解を促す
《効果》「百聞は一見に如かず」、言葉を並べるより目で見て一瞬で理解できる
手法・その3―寸劇をする:使用シーンを提示して場面と感情理解を促す
《効果》その場面を「見た」という体験と紐づいて理解
実践編:実際にどう進めたか
上記の手順や手法をもとに、実際3つの質問をどう解決したのか、順番に紹介します。
④中級・文法:「~まだしも」って、ほかの言い方はできるの?
⇒これは「手法1:板書」で解決しました。
例文1) 一度ならまだしも、二度も三度も間違ちがえたんですよ!
例文2) あのお客さん、何か買うならまだしも、見るだけなのに文句ばっかり言うんだよ。
- 板書:まだしも→まだいいけど、まだわかるけど
これは、「それならまだ許せる・理解できる」という気持ちを表す表現です。
まずは、学生に「知っている言葉で言うと、どんな感じ?」と問いかけ、既習語彙の中から近い意味の表現を考えてもらうのはいかがでしょうか。出てこない場合は「まだいいけど」「まだわかるけど」とヒントを出し、実際に例文に当てはめて意味が通じるか一緒に確認するとよいかもしれません。
⑤中級・語彙、用法:「以降」と「以来」―似ているけど、どう違うの?
⇒これは「手法2:図解」で解決しました。
- 板書:時間軸を示す長い横線を引く。
「以降」・・・横線上に任意に点を描き、そこから右に「→(やじるし)」を描く
「以来」・・・横線上に任意に点を描き「今」と書く、「今」に向かって左から右に「→(やじる
し)」を描く
※二つの語彙の視点(始点・終点)の違いを理解してもらう。
⑥中級:語彙、用法:「関して」と「関連して」は同じ意味?
⇒これも「手法2:図解」で解決しました。
「関して」・・・大きな○を描く。円の中に「環境問題」と書く。
「関連して」・・・中くらいの○を二つ描き、その二つを繋げる。一つ目の円の中に「環境問
題」、二つ目の円の中に「ごみ問題」「エネルギー問題」などを書く。
「関して」は一つのテーマについて述べるときに使います。一方、「関連して」は、ある事柄と別の事柄とのつながりを示す表現です。そのつながりを視覚的に見せていきます。
それぞれの例文を言って板書。理解を助けるため補足で英語での意味も。
例文1) 環境問題に関して話しましょう。・・・topic
例文2) 環境問題に関連してごみ問題についても話しましょう。・・・related
学生の質問が教師のスキルアップにつながる
中級になると、個々の学生の興味のある分野についての深掘り、日常生活の中で見聞きして疑問に思っていること、試験対策として似た表現の意味・用法・ニュアンスの違いなど、思わず固まってしまうような質問が多々あります。
でもそんな時ほど、まずは板書して見える化。気持ちを落ち着かせ、ネイティブとして「腕の見せどころ」と思って取り組むようにしています。時に己の準備不足を反省しつつ、自分でもこれまで気にしていなかったようなニュアンスの違いに気付けたり、この気持ちを伝えるにはこの表現・語彙がベターというものが見えてきたりします。
学生からの質問を受けるたびに経験値は確実に上がりますし、肝も据わって切り返し方も身に付いていきます。そして上手く回答でき、学生が納得した反応をしてくれた瞬間は本当に嬉しくなります。こうした学生からの質問を通して、日本語教師としてのスキルは確実にアップしていき、教えることの本当の楽しさを感じる瞬間が増えていくのではないでしょうか。