「わりに」って「のに」と同じ!?
うちの娘、インフルエンザになりました〜泣。インフルエンザのわりに、食欲もあるし元気なのですが・・・。こういうご時世ですからね。皆さまもお気をつけください。私も気をつけます。
今日のお題は「わりに」です。先日、学習者から「のに」と「わりに」の違いを聞かれてたけど、どう説明すればいいのか考えていると相談を受けました。これ、けっこう難しいですね。
「わりに」VS「のに」
どちらも逆説を表す文法表現で、言い換えても意味は通じるものも多いこの2つ。この2つの違いってなんだろうとなりますね。英語圏の人であれば、「わりに」considering/ for、「のに」althoughを出すと、わりとストンと落ちる人が多いようですが・・・これは応急処置的ですかね。
<例文>
- 滞在歴のわりに、日本語が(下手・上手)だ。
- 滞在歴が長いのに、日本語が下手だ /滞在歴が短いのに、日本語が上手だ。
「のに」文だと、前件は「滞在歴が長いのに」というように具体的な事実を挙げないといけないし、そのあとに続くのは純粋に逆説の「下手です」しかきません。「のに」は事実的逆接を表し、多くの場合、後件で「困惑」「非難」「変」「びっくり」「がっかり」などの不満を表します。
すでに起こっていること(事実)で不満を表す場合は「滞在歴が長いわりに、日本語が下手だ」と言い換えが可能なケースもあります。
ただ、「わりに」には「割(割合)」ということばが入っています。この「割」は他と比べてみて…という意味があり、基準になるものが必然的に想定されるという点が「のに」と違う点です。「わりに」は「滞在歴」という判断する上での基準を提示するだけで、相反するどちらの評価も可能です。いい意味でも悪い意味でも基準と食い違っている時に「わりに」が使われます。
そうすると、基準(standard)って何よ?という話になりますね。この基準、つまり世間一般の人が考える評価基準なのですが、、、常識(common sense)、固定観念(stereotype)、偏見(prejudice、bias)などいろいろな言葉に言い換えられそうです。英語圏の学習者なら、例文を挙げつつ、これらを伝えても良いのですが、、、
「わりに」の導入例文を考えてみよう!
プロセス①
英語を使わずに、この「わりに」のニュアンスを感じてもらうにはどうしたらいいでしょうか。
- 大きい傘=重い
- 病気の人(インフルエンザ)=元気がない・ぐったり
- 値段が高い=量が多い・おいしい・サービスがいい
- 年齢が高い・歳をとっている=白髪・しわがある
- 評判がいい(レストラン)=おいしい
- 若い=頼りない
- 日本人=漢字が得意・敬語が上手
- 大変な仕事=給料がいい
- 初めて=下手
- 休日(の渋谷)=人が多い
- 中古=安い
- 勉強していない=成績が悪い
はじめに、クラスの人が考える「一般的・常識的な基準」を共有したいです。
まず、左側のことばを先生が提示します。ここのコントロールが大事です。クラスのメンバーを見て使う語彙を選びます。それから、右側「一般的・常識的な基準」を2、3提示します。同じ要領でつづきは学生に出してもらいましょう。あまりにオープンにしてしまうと危険だと言う場合は、「日本人は漢字が・・・敬語が・・・」とキューを出すと良いでしょう。学習者自身が自分で考えることで記憶に残りますし、発言を促すことでインターラクティブなレッスンができます。
プロセス②
「この傘は大きいです。大きい傘って重いですよね。持ってみてください。うわっ、軽い〜!びっくり!!」
⇨「この傘は大きいわりに軽いですね」(➕:びっくり)
このように「あれっ、私が思っていたイメージとなんだか違うぞ」という状況を見せると、使うシーンがイメージできます。
また、「わりに」はこの食い違いに対する私の感想のことが多い、という点もポイントです。よくある非文ですが、「全く勉強しなかったわりに、合格した」のように、合格か不合格か2つしか結果がないような文はNGです。これは「全く勉強しなかったわりに、成績がよかった」なら私の感想なのでOKです。成績の良し悪しの基準なんてものは人それぞれですからね。ということで、「わりに」は後件にも制限があります。
プロセス③
➕➖どちらのケースも見せてください。これが「のに」とは違う最大の特徴です。
高級ホテルの写真を見せて、
「値段のわりに、よくなかったです」or「値段が高いわりに、よくなかったです」(➖:がっかり)
レストランのメニューを見せて、
「値段のわりに、おいしいですね」or「値段が安いわりに、おいしいですね」(➕:びっくり・喜び)
「わりに」の前にくる言葉はなんでも良いわけではありません。1〜12の文を作った上で「わりに」の前に尺度(年齢、値段、身長、評判)を表す名詞や、程度を表す名詞(初めて、病気、子ども、日本人)、形容詞がくると説明を加えると頭の中が整理されるでしょう。
あ、書いておいてなんですが、、、「この傘は大きいです。大きい傘って重いですよね。持ってみてください」で、「別に」という顔をされてしまうと、THE END。ハマればラッキー、でも、この例文は万能ではないかもしれませんね〜(笑)。事前に傘を用意しなきゃいけないし。そういう意味では導入は冒頭のインフルエンザを使った例文が妥当かもしれません。だいたい高熱でぐったりしますからね。学生もきっと一度はインフルエンザになったことがあるでしょう・・・とまあ、私の思考のプロセスはこんな感じです。よーく考えても、レッスンで失敗した〜なんてことはよくあります。前はうまくいったのに、今回はダメだったなんてこともあります。とにかく”trial and error”で前へ前へですね🐰!
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