あたらめて考える「ほめる」ことの大切さ&注意点

あたらめて考える「ほめる」ことの大切さ&注意点

数ヶ月前になりますが、cotoの全体会がオンラインで開催されました。全体会の後半、懇親会の部で「ほめるを考えてみよう」をテーマにグループディスカッションが行われました。今回は、この懇親会の当日の活動と参加者の声をご紹介したいと思います。

あなたは、ほめるのが得意?苦手?

まずファシリテーターから「あなたはほめるのが得意ですか?苦手ですか?」(学生にでも、家族にでも、友だちにでも対象はだれでも)という問いかけがなされました。

結果は…

はい:72.7%

いいえ:9.1%

その他:時と場合による、自分の子をほめるのは苦手

というわけで、大半の方が「得意」だということがわかりました。

さすが日本語教師ですね!ほめるのが苦手と答えた方も、ほめていないわけではなく、苦手意識があるということなのだろうと私は感じました。

 

何をほめられると印象に残りやすいのか?

次にグループ(4-5名)に分かれて、以下2点について話し合いました。

①最近ほめられましたか。ご自身のほめられエピソードについて話してください。

②A~Cのどの内容についての「ほめる」が多かったでしょうか。

A:外見について

B:内面や行動について 

C:その他

 

この質問をしたファシリテーターの意図は、何をほめられると印象に残りやすいのかの確認でした。目に見えるものをほめられると嬉しい?見えないものをほめられるほうが嬉しい?…さて結果は?…「B:内面や行動について」が多かったです。私がいたグループも全員Bでした。

また、「知らないおじさんにほめられた」というエピソードをシェアしてくださった方がいました。不意に知らない人から!という意外性も、ほめるパワーを補強する要素なのだと新鮮な発見がありました。

 

どんなときに学生をほめているか?

次にもう一度グループ分けをし直し、以下2点についてシェアタイムが設けられました。

①最近学生をほめましたか。

②A~Cのどの内容についての「ほめる」が多かったでしょうか。

 A:点数や宿題の間違いの少なさなど(目に見える) 

 B:学習態度やパッションについて(目には見えない・先生が感じた主観) 

 C:その他

 

ここでは実際のレッスンでの経験がシェアされました。やはり多くのみなさんが「B:学習態度やパッションについて」についてほめていらっしゃることがわかりました。

cotoの学生さんは何らかのテストに合格するために日本語を勉強している方は少なく、生活者として日本語を勉強している人が大半です。そのため、点数のつく「見える結果」を提示できないことが多いです。

だからこそ、講師が日々学生を注意深く観察し、上達に気付いてあげる(=ほめる)ことは大事ですね。

 

ほめるのが苦手な人はどうすればいい?

ほめることに苦手意識がある人はどうしたらいいのでしょうか。

当然日本語教師もひとりの人間。ほめるのが苦手という方がいても不思議ではありません。

そのヒントとなる本をファシリテーターが読んだということで、シェアしてくれました。その本には「(『ほめる』に苦手意識のある人は)『ほめる』というより事実を即時フィードバックすると考えるとよい」と書いてあったそうです。

例えば、「スムーズに言えるようになりましたね」とか「よく覚えてましたね」などの声掛けをするだけでいいとのこと。これならすぐできそうですね!

 

ほめるときの注意点は?

ここまで「ほめる」のいい側面ばかりが述べられましたが、「ほめる」の持つネガティブな側面や注意点はないのでしょうか。

『大人のための言い換え力』(石黒圭著)によると、「ほめる」には以下の3つの側面があるというのです。

①上下関係が必要である

日本語を学ぶという場では先生→学生、ビジネスという場では学生=お客さん→先生

②上下関係がない場合は、「ほめた側がマウントをとる」という行為になる

③たとえ自分のほうが「下」と認めている場合でも、その間に信頼関係がないとかえって不快に感じるアクションになる

 

なるほど、立場と信頼と(たぶんその人の性格etc)の掛け算で「ほめる」もマイナスになりそうです。

そういえば、学生からも「日本人はすぐ『日本語、上手ですね』って言うけど 」と困惑気味な表情で話をされることがよくありました。ほめられているはずなのにうれしくないと感じる理由はそういうことだったのか、と改めて思う次第です。

もう一つ。「ほめない」ほうがいいことについても書いておきます。それは「容姿」「外見」についての言及です。こちらはほめてるつもりでも、「きれいですね」「背が高いですね」といった言葉に困惑される方も多いようです。

「鼻が高い」「顔が小さい」「目が大きい」に至っては、ほめ言葉どころか侮辱されていると捉えらえれる可能性すらあります。

アジア圏では相手のルックスに関する言及はわりと許容されているため、つい忘れがちですが、Political Correctnessの観点からも、容姿や外面の言及については注意が必要です。

 

編集後記:とはいえ、やはりほめることは大切

今回の懇親会、もちろん私も参加させていただきました!「ほめる」は教育業に就いているすべての人の必須スキルだと思いますが、あまりにも当然なことなので、初心に戻って他の先生方のお話を聞きたいと思ったからです。

私が以前働いていた職場には、たくさんの主婦パートの方々がいました。私は現場のマネージャーだったため彼女たちの上司にあたるのですが、自分の母親のような年齢の彼女たちをほめるのはおこがましい気がしていました。そのため、ほめるというより常に感謝の気持ちを伝え、労い、「すごい!」「さすが!」「助かる!」などプラスの性質の言葉を口にするように心がけていました。

定期的に全員と面談をするのですが、あるパートさんが私にこう言ってくれたのです。「あなたがいつも私たちをほめてくれるから、仕事に来るのが楽しい。主婦はどんなに家事を頑張っても誰にもほめられないけど、ここで仕事をしていると自分にも価値があると思える。みんながイキイキ働いているのは、あなたがみんなをよく見てほめているからだと思うよ」と。その日から、私はますます遠慮なくほめるようになりました。

ほめることは人材育成や教育に携わる仕事に就く人にとっては一丁目一番地ですが、それと同時に奥義でもあるように思います。ほめるときの注意点を意識しながらも、いいね!と思ったことはどんどん口に出していきたいですね。

edited by Matsubara

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