日本語音声基礎 1.音の違い(英語母語話者が苦手な単音)

日本語音声基礎

今回は先日行った無料イベント『日本語の音声:基礎』のまとめを記事にします。

Coto Academyには英語話者が多く在籍しています。また、私たち日本人は学校教育で英語を学んできました。今回は一番比較しやすい英語の発音と比較しながら日本語の音声についてシリーズで見ていきます。

第1回:音の違い(英語母語話者が苦手な単音)

第2回:どうしてカタカナ語の発音は英語の発音と違うのか

第3回:特殊拍(長音・促音・撥音)

第4回:日本語らしい自然な発音で話すために

発音のせいでコミュニケーションがうまくいかないという学習者のために、「聞きやすく分かりやすい発音で話せるようになること」を目指した指導方法を考えていきたいと思います。

1. 音の違い(英語母語話者が苦手な単音)

授業のスケジュールが決まっている場合、なかなか発音の時間が取れないという方も少なくないと思います。ただ、単音の発音指導はスポット的に短時間で行うこともできます。学習者が正しく発音できなかったときに、急にそれが学習項目になります。頭の中の引き出しから必要なアイテムをパッと取り出せるように整理しておくと良いでしょう。

母音

日本語の母音は5、英語の母音は26(諸説あり)

英語は26の母音で言葉を表現しますので、音のバリエーションが圧倒的に多い言語です。

逆に日本語は音のバリエーションが非常に少ない言語と言っていいと思います。ということで、英語母語話者は日本語の母音は比較的問題なく発話できます。

ただし・・・

英語には二重母音というものがあります。これを日本語にも使ってしまうことがあります。例えば、日本語の「愛(あい)」が英語の“I”のように発音されることがあります。「公園」も英語の”so”や”go”のような/oʊ/で発音されることがあります。

英語の“I”のような音を「二重母音」と言います。「二重母音」とは母音2つが重なっている母音のことで、英語では1つの母音です。日本語での「あい」は連母音、つまり2つの母音です。「あい」を発音する場合「あ」の発音が終わってから「い」を言います。

<例>    二重母音 ⇨ 連母音

あいす      ai・su    →   a・i・su

しかい    shi・kai    →   shi・ka・i

こうえん   kou・en → kō・en*  (*「こうえん」は二重母音の/oʊ/ではなく、/oo/で長音になる)

 

子音

英語にない日本語の音の代表格として挙げられるのが、「拗音」「ラ行音」「ふ」「つ」の4つです。英語にない音なので、音の違いがわからないという学習者も多いかと思います。

聞こえない音は当然発音もできません。私たちも英語を学習していて違いが聞き取れない、仕組みがわからない、言えない、通じない経験をしたことがありませんか。私は何年、いや何十年たっても”girl” “world” ”squirrel”は言えません・・・「えっ」と聞き直されて、しょんぼりしたこと数知れず。

日本語学習者も同じです。

ただ、発音を習うことで音の違いに気づくことができます。言い分けられることで聞き分けられるようになってきます。まずは、自分の発音が違うことに気がつく必要があります。そして、発音に限ったことではありませんが「わかった」から「できる」までには時間がかかります。うまくできてもすぐ戻ってしまうように見えることもあるでしょう。初級のうちからながーい目で学習をサポートしていきましょう。

教師自身も以下のような誤用や指導例を見ながら、まずは気にかけるようにすること、そして自分なりに試行錯誤してみてください。方法は一つではありません。

 

「拗音」

英語には拗音がありません。「ひゃく」⇨「ヒヤク」、「きょうこ」⇨「きよこ」と聞こえることがあります。「びょういん(病院)」と「びよういん(美容院)」は聞き分けが難しいものの代表的な例です。

拗音は2文字で表記されますが、発音する時は1つの音として発音し、1拍と数えます。

「ひ」を発音しようとするのと同時に、すばやく「あ」を発音するような感覚で、1つの音として発音します。「ひ・や・く」(タ・タ・タ)⇨「ひゃ・く」(タ・タ)、とリズムで指導するもいいでしょう。

 

「ら行音」

日本語の「ら行音」は英語の[r]でも[l]でもありません。「きれい」⇨「きぅれい」「らいしゅう」⇨「ぅらいしゅう」と巻き舌のように聞こえることがあります。可能形や受身形は「ら」のオンパレードですので、発音練習のチャンスです!

舌の先はどこにもつけない状態にしておいて、そのあと舌の先で上の歯茎の裏を軽く弾いてすぐに離します。舌先が1回弾く様子を手で見せてください。

「拗音」と「ラ行」コンビネーション「りゃ、りゅ、りょ」は特に難しいです。「旅行」⇨「ろこう」「ろこ」と聞こえることがあります。

 

「ふ」

富士山、船、フルーツ、古いなど「ふ」の発音が[f]の発音になってしまうことがあります。

これは英語に[ɸ]の音がないからです。中国語、タイ語、ベトナム語話者にも同じような誤用の傾向が見られます。

[ɸ]は両唇の間を狭くして摩擦させる両唇摩擦音です。ただ、このように説明してもわからないので、どんな口の形をするか伝えると良いでしょう。

例えば、「ここにキャンドルがあります。優しく消しください」

というとイメージができます。そのまま、「ふーふーふじさん」、「ふーふーフルーツ」と練習してみましょう。

言い分けられるだけでなく、学習者自身が[f]と[ɸ]の違いを聞き分けられるようになると、自然と発音もよくなっていくでしょう。

 

「つ」

英語には[ts]の音はありません。そのため、「つかいます」⇨「すかいます」に聞こえることがあります。ただ、英語の”cats”は偶発的に[ts]の音になりますので、これを使って発音練習をすると良いでしょう。母語にある音をうまく干渉させてしまうというのも方法のひとつです。

「キャッツ、キャッツ、、、つかいます」「キャッツ、キャッツ、、、つくります」

 

 

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