例トレ#9 語彙の導入って、どうしてる? 本日のお題「工夫」

例トレ#9 語彙の導入って、どうしてる? 本日のお題「工夫」

語彙の導入って、どうしてる?

日本語学習も中級あたりまでくると、必ずぶち当たるのが「語彙」という壁。

たとえば”meeting”という言葉ひとつにしても、「会議」「会合」「ミーティング」「打ち合わせ」等々、学習者にとってみれば、なんじゃこれ~という現場を、私も何度も目の当たりにしてきました。どんどん増える語彙、大変ですね〜。

そしてこの語彙問題は、学習者だけのものではなく、われわれ教師の頭痛の種でもあることが多い~。そりゃそうですよね、私たちネイティブは自然と使い分けていますからね。というわけで、私たちも違いは何かと改めて考え直す必要があります。

本日のお題「工夫」

日本語教師の私たちは「工夫」のプロのはずなのですが、いざこの言葉を導入するとなると「あれ?」となります。わたくし、この言葉を教えるのがあまりに下手すぎて、超級レベルの学習者に何度か相談までしたことがあります。「工夫ってなんでしょう?」、「英語にはないものでしょうか?」と。(Cotoは英語圏の学習者が多い)

彼ら曰く、「やはり直訳はない」けど…前置きしながら、「よく準備された (well-prepared)」とか「よく考えられた (well-considered)」みたいなことではないでしょうか?と教えてくれました。

あー、なるほどね。たしかに一理ある。でも、もうひとつパンチが足りないんだよなぁ。「準備」や「熟考」と置き換えられたら、違う文脈で使われてしまう。聞いておいてなんだけど、、、。

 

「工夫」の例文

今回も例文トレーニングで講師の皆さんから「工夫」を使った例文を上げてもらったので見てみましょう。

  1. 野菜嫌いの子どもに、どうやって食べさせられるか?みなさんは、どういった工夫をされていますか。
  2. いつもと同じ作り方ではなく、今日はスパイスを加えたり、野菜の切り方を変えたりして、工夫してカレーを作ってみました。
  3. 日本の家は狭いですが、壁面収納やベッド下収納など、さまざまな工夫をすれば、広く使えます。
  4. ちょっとした工夫をすれば、100均グッズでも立派な棚が作れますよ!
  5. 本が売れない時代、出版社はおまけや広告など工夫して本を売ろうとしている。
  6. 買った品物をマイバッグにしまうのにも工夫が必要です。店員さんがやってくれて助かりました。
  7. このコップは、赤ちゃんや手が不自由な人が使いやすいように工夫されている。
  8. よく小学生の算数に「工夫して計算しましょう」という問題があります。
  9. 漢字がなかなか覚えられないので、フラッシュカードを作って覚えたり、覚えられない漢字を写真にとったりして工夫して覚えるようにしています。
  10. (紐で消すタイプの電気の絵を見せて)寝たまま電気が消せるように工夫して紐を長くした。

 

「工夫」の意味・用法を考える

私たちはいろんな工夫をして日々生活をしていますね。辞書(デジタル大辞林)によると、

く‐ふう【工夫】 [名](スル) よい方法や手段をみつけようとして、考えをめぐらすこと。また、その方法や手段。

もちろん辞書通りに学習者に伝えることはできません。そして、もうちょっと他の言葉とは異なるニュアンスがあるような気がします。

 

今回募集した例文を見ていて

「工夫」とは、
① 切羽詰まってやるもの
困って不便に感じてこそ捻出されたアイデア。『発明は必要の母』とも言いますしね。(寝たまま電気を消すためのひも、とか)

② 目的やミッションがあってやるもの
だから、「ために」「ように」などの文型と一緒に使うことが多い。(「さっと取り出せるように」、「汚さないように」とか)

ということに気づきました。今回作ってもらった例文も確かにこれらが必ず前提になっていますね。

 

学習者に抽象語彙を教えるときのポイント

そして、もう一つ大事なこと。それは、学習者が外国人ということです(言わずもがなですが)。

上に挙げた例のほとんどは日本人ならではの工夫。正直、これらを文化背景・生活スタイルが異なる外国人と共有するのは難しい。ここが「工夫」を教えるにあたって苦労するところです。

個人的には、日本の100円ショップなんて「工夫」の殿堂だと思い、「工夫」がピンと来ない学生には、100円ショップに行ってみて~と言おうかとも考えたのですが、まずはその「工夫」の源が共有されないと、こちらが力説してもあまりピンときません。

私が教えた学習者は、自分の国 or 日本の住環境(せまい、収納が少ない)を肌で感じたことのない人が多かったり、家事に対して時間などを何とかやりくりしようというマインドセットがなかったり、、、だったのかもしれません。いずれにせよ、過去に私の提出した例文は共通の問題意識をもつ前提としては弱かったんだなと思いました。

 

ということで、最近の鉄板導入例はこちら

「うー、困りました。ビンの蓋が空きません。どうしても開けたいです。みなさん、どうやって開けますか?」

・・・そうすると、学習者は考えます、いろいろなアイデアが出てきます。「ビンの蓋をお湯につけます」「ゴム手袋を使います」「ビンの蓋をかたいもので叩きます」などなど

おー、そうですね。それが「工夫」です。みなさん、いろいろ工夫したら、ビンの蓋が開きましたね!

 

語彙でも文法でもそうですが、導入するときのポイントは「前提を共有すること」です。その前提を共有するために、共感を得られる設定・場面選びが超重要になってきます。「ビンの蓋が開かない」などはどこの国の人でも老若男女問わず経験したことがあるはずですから、共感を得られること間違いなしです!

目の前にある問題(固いビンの蓋)や、学習者が共通して持つ課題(漢字をどうやって覚えるか)などを提出し、そこからアイデアを出していく、そのプロセスこそが「工夫する」こと、そして出たアイデアやひらめきが「工夫」だと教えます(見せます)。

 

教えにくい語彙・学習者が間違えやすい語彙は例文も含めてストックしておくといいかもしれません。今回のコラムが語彙導入を考えるきっかけになったらいいなと思っています。それでは、また来月✋

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