「見える vs 見られる」「聞こえる vs 聞ける」の否定形の使い分け

「見える vs 見られる」「聞こえる vs 聞ける」の否定形の使い分け

 

「見える」「見られる」「聞こえる」「聞ける」の否定形の使い分けの教え方がよくわからないというご質問を受けました。

「見えない」「見られない」を“can’t see”、「聞こえない」「聞けない」を“can’t hear”で英語を使って理解しようとするのは絶対にNG!日本語の例文の中から、日本語脳で学習者自身が自分なりにルールを見つけていく必要があります。

今回は、質問者の講師が作った例文を引用して、「見える」「見られる」「聞こえる」「聞ける」の否定形の使い分けを見ていきます。

 

「見える」「見られる」「聞こえる」「聞ける」の否定形の使い分け

▷Google Home(以下、GH)で、ラジオが聞けます。でも、・・・

  1. GHが壊れて、ラジオが聞けません。
  2. 補聴器がないと、ラジオが聞けません。
  3. 子供がうるさくて、ラジオが良く聞こえません。
  4. ネットの状態が悪くて、ラジオが良く聞こえません。

 

▷フィンランドに行ったら、オーロラが見られます。でも、・・・

  1. 風邪をひいて、オーロラが見られませんでした。
  2. メガネを忘れて、オーロラが見られませんでした。
  3. 天気が悪くて、オーロラが見えませんでした。
  4. ホテルに窓がなくて、オーロラが見えませんでした。

 

いかがでしょうか。これは不自然かも、という文はありましたか。「見えない」「見られない」「聞こえない」「聞けない」の使い分け、皆さんはこれらの例文から何か見えてきたでしょうか。

 

聞こえない VS 聞けない

まずは肯定の「聞こえる」から見ていきましょう。

「聞こえる」=音や声が自然と耳に入る状態

先天的あるいは後天的に(自分の意志とは関係なく)失われてしまう能力(体の機能)については「聞こえる」を使います。ちなみに「聞こえる」は自動詞です。

というわけで、例文2は非文です。音が小さすぎて、何かに遮られて、または、耳に問題があって聴覚情報をキャッチできない場合は「聞こえない」を使います。

「聞ける」は「聞く」の可能形

9. あの先生って怖いから、同じことは何度も聞けないよ。

意識的によしっと気合を入れないと、きっと「聞くことができない」のでしょうね。意識的に注意を向ける場合、聞くことができる状態にある(状態可能)場合に使われます。ちなみに、「聞く」は他動詞です。

 

見える vs 見られる

「見える」=意志・能力に関わりなく対象が自然に目に入ってくる状態

10. メガネをかけると、小説の字がよく見えます。

建物や人に視界を遮られて視覚情報をキャッチできない、目に問題があって(老眼や近視など目の機能のせいで)メガネがないと視覚情報をキャッチできない場合は「見えない」となります。

 

「見える」「見られる」のどちらも使える場合

11. ここから富士山が見える/見られる。

両者のニュアンスは少し違いますが、これはどちらもOKのパターンです。したがって、例文7は「見えない」も「見られない」も状況によってどちらも使えます。

自然に視界に入ってくるのか、意識的にみようとして見るのかによって選ぶ言葉が変わってきます。話し手がその状況をどう捉えるかがキーになってきます。このように場所が絡むものは取り扱いに注意が必要です。導入ではわかりやすさがもっとも大切なので、微妙なものは導入時の例文としてはふさわしくありません。

 

レッスンアイデア

導入編

それでは、実際にどのような文を使って導入、練習をしていくか見ていきます。まずH先生のアイデアから。

▷見えない・聞こえない

  • ホワイトボードにやたら小さい字を書く→見えません
  • (教科書のルビ)若いとき、見えました→今、見えません
  • 音声教材をやたら小さい音で流す→聞こえません

実際に教室にあるものを使って実演していく方法です。知覚動詞なので、視覚・聴覚にうったえるやり方は効果的です。

 

▷見られる・聞ける

  • (この映画の)4Dバージョン新宿では見られますが、渋谷では見られません。
  • (無料アプリでは)このラジオ番組・曲を全部聞けません。
  • (新聞社のサイトを見せて)この記事を最後まで見られません。

お金を払わないと、会員にならないと使えないサービスはたくさんあります。学習者も同じような経験をしているので、身近で共感を得やすいでしょう。

 

練習編

導入が済んで、コンセプトが理解できたら、練習です。S先生がしている定番の方法がこちら。

<場面>今日は楽しみにしていたコンサートの日。大好きなアーティストが見られます。でも、・・・

  • メガネを忘れて、大好きなアーティストの顔が・・・
  • 目の前に背が高い人がいて、・・・
  • ステージが遠すぎて、よく・・・
  • 日本での公演は今回が最後。もう・・・
  • 急な打ち合わせが入って、・・・
  • 隣の人が大声で歌っていて、アーティストの歌声が・・・
  • コンサート中に寝てしまって、楽しみにしていた曲を・・・

これは楽しいですね。このように学習者が遭遇したことがありそうな場面で、どんどんキューをたくさん出していくと、イメージが膨らんで面白いですし、学習者の頭の中も整理されます。面白くなってくると、学習者側からも「こんなのはどうですか?」なんて例文が出てくるかもしれません。

 

 

 

 

 

 

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