「んです」ってややこしい!?

「んです」ってややこしい!?

日本語初級文型項目の比較的早い段階で出てくる「んです」、日本人は無意識のうちに使っていますが、学習者は実際の会話で取り入れるのが難しいものの一つですよね。

学習者は「んです」を使う目的やシーンがわからず、「んです」を使わないで「〜です」「〜ます」で代用してしまうケースが多いのではないでしょうか。また、中上級学習者になると「日本人がよく使うから、とりあえず使っとけ〜っ!」と「んです」を乱発してしまう人も結構いたりします。

この「んです」、どうして学習者は習得が難しいと感じるのでしょう。なぜ誤用が多いのでしょう。また、日本語教師にとってどうして教えにくいのでしょう。

「んです」が難しく感じるのは、何らかの前提となる発話条件が想定されている場合が多く、文脈や状況によってその発話意図がさまざま想起され、用法が多種多様だからです。もっと簡単に言うと、単純ではない文脈(コンテクスト)が必要だからです。教師にとってみても、多様な使い方をする「んです」のどこに焦点を当てて教えたらいいのかわからなくなってしまうため、教えにくいと感じるのかもしれません。

今回は「ある状況(前提)に心が動かされ、何か言いたい気持ちになったとき」の「〜んです」をご紹介します。

 

「理由」を述べるときの「んです」

この「んです」が会話の中で適切に発話されるためには、話し手と聞き手が共有する何らかの情報が前提条件として必要になってきます。

例えば、友達とレストランに行って、友達のAさんが料理を食べていないという場面を考えてみましょう。その場で話し手と聞き手が共有する情報(食いしん坊のAさんが食べていないという事実が前提としてあって、Aさんは様子がおかしいな、変だと思っています。そこではじめて、「どうしたんですか」とか「食べないんですか」という質問が出ます。理由を尋ねるときには、必ず前提があります。このように「え、なんで?どうして??」と理由を尋ねるときに「んです」を使います。

『げんきⅠ』の第12課の練習問題にもありますが、はじめは話し手と聞き手が前提条件として共有する情報が視覚化されていると学習者も理解しやすいですね。実際に鼻水を垂らしてブルブル震えている男性の絵やうれしそうな女性の絵を見せれば、学習者は「あ、こう言う場面で使うんだな」ということが分かります。

どんな場面で「んです」を使うのか見てみましょう。

理由を尋ねるとき・尋ねられたことに対して理由を述べるとき

<場面>松葉杖をついているBさんを見て

A「どうしたんですか。痛そうですね。」 B 「サッカーでケガしたんです」

相手のただならぬ状況を見たら、思わず聞きたくなりますね。

 

話し手の心が動いて思わず「話したい!」「聞きたい!」と思ったとき

何かを見たり、聞いたりしたとき、驚いたり不思議に思ったりなど話し手の心が動いて思わず「話したい!」「聞きたい!」となったときの「んです」です。

<場面>テストが始まったと思ったら、10分で提出してきた学生に対して・・・

「もう終わったんですか?」

「早っ!」というおどろきの気持ちを口に出さずにはいられなくて・・・

※「もう終わりましたか」は終わったかどうか客観的に事実を聞いているだけですから、ニュアンスは違いますね。

 

<場面>同僚の田中さんの英語がやけに上手。すごーいと感心し、思わず相手に聞きたくなって・・・

「田中くん、発音いいですね。外国に住んでいたんですか。」

 

疑問詞と一緒に使って、具体的な情報を得たい場合

<場面>

ステキなワンピースを着ている同僚を見て・・・

A「ステキな柄のワンピースですね。どこで買ったんですか」

B「バンコクに行った時、買いました」

A「バンコク、いいですね、いつ行ったんですか」・・・

ここでの前提はワンピース。それを見てステキだな、色々知りたい〜と心が動き、尋ねています。

※注意:「んですか」と尋ねられていますが、Bさんは「んです」を使いません。

 

話し手が自分の発言に関して事情を説明したり、付け加えたりする

A「うわー、ステキな時計ですね」

B「ありがとうございます。二十歳の誕生日に両親にもらったんです」

褒められたら思わず自分から言いたくなることってありますよね。

 

昔、「私、脱いでもすごいんです」というエステサロンのCMがありました。「私、失敗しないんで!」というドラマもありました。自分のことを話したくなるくらいすごい状況なんでしょうね。英語で言うなら、”you know what? ” 「ちょっと聞いてよー」すごいのよ〜という状況でしょうか。

まず、初級の学習者は「話したい!」「聞きたい!」と心が動いた時の「んです」が使えるようになるといいですね。最初にも述べましたが、「んです」の用法は多種多様です。用法を網羅的にすべて提示したくなる気持ちもわからなくもないですが、全てをいっぺんに学習者に伝えると混乱してしまいます。

まず、初級では「説明」を求める、説明をするほうは聞いてほしい、ぜひ聞かせてほしいというcuriousityが高い、そしてハイコンテクストな場面が必要な文型だというところをぜひおさえておきたいですね。『いつ、どんな場面で、どんな気持ちで「~んです」を使うのか』がしっかり伝えられたら成功です!

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