【同期対談:後編】3年目の日本語教師、今だから見えてきたこと

【同期対談:後編】3年目の日本語教師、今だから見えてきたこと

――3年目から考える「自分のキャリア」――

前編(教師としての「3年間の変化」)では、1年目の「私でいいのかな」という戸惑いから、3年目になって「完璧じゃなくていい」と思えるようになるまでの変化について語った二人。

教材を一周し、自分なりの教え方が少しずつ見えてきたことで、以前よりも自然体で学生と向き合えるようになりました。

でも、3年目になって見えてきたことは、それだけではありません。

「なぜ、学生さんはまた自分のレッスンを選んでくれるんだろう?」

ここからは、そんな疑問から、それぞれの強みや働き方、そしてこれからのキャリアについて話していきます。

【対談者】

Takako: Coto麻布校の教師。プライベート&グループレッスンやキッズコースも担当。育児・介護がひと段落ついたころにCotoに出会い、Cotoで働くことを目標に日本語教師の資格を取った。兼業で食品メーカーで商品企画の仕事にも従事。現在は、新米教師をサポートするサポートコーチも務めている。

Matsubara: Cotoオンライン校の教師。企業研修講師としての経験をベースに、日本語教師、キャリアコンサルタント、ライターなど、複数の仕事を組み合わせながら活動している。それぞれの経験をつなげながら、「伝えること」と「人のキャリアを支えること」に取り組んでいる。

 

⑤ なぜ、またこの先生に習いたい?――学生に選ばれる理由は、「コンテンツ」と「人」の両方にある

M: 3年ぐらい続けていると、もう一つ気になってくることがあるんです。しばらく仕事や家庭の都合などで日本語のレッスンから離れていた学生さんが、また私のレッスンに戻ってきてくれる。そんなことってありませんか?

T: ええ、ありますね。

M: もちろん嬉しいんですけど、疑問に思っちゃうんですよ。「なんで、この学生さんは、また私のレッスンに戻ってきてくれたんだろう?」って。私自身も、兼業でやっているから、レッスン数をたくさんやっているわけではないのに、間を空けてまた予約してくださる学生さんがけっこういる。「なんで私なんだろう?」って、正直思うんですよね。

T: それはもちろん、Mさんのレッスンに魅力があるっていうことですよ。

M: その「魅力って何なんだろう?」っていう。

まず、Cotoの場合、コンテンツがすごく豊富じゃないですか。学生さんの目的やレベルに合わせて、いろいろなテキストや教材を選べる。少人数だから、その人に合わせてレッスンを組み立てることもできる。

T: そうですね。私自身も、ここじゃなかったら3年続かなかったと思います。教材もリソースも、ある程度そろっているので、自分で全部スライドを作ったりしなくていい。

M: そういう意味では、学生さんにとっても、「自分に必要なものを、自分に合った形で学べる」というのは大きいですよね。

でも、ここで一つ疑問が出てくるんですよ。

T: それは?

M: コンテンツが良ければ、先生は誰でもいいのか?っていう。

T: うーん、やっぱり、先生による部分もありますよね。

M: ありますよね。学生さんが戻ってきてくれる理由って、少なくとも私のレッスンに満足しているからだと思うんですけど、具体的に何が良かったのかなって。

T: 「この先生についていけば、自分の日本語がもっと伸びるだろう」と感じてもらっているんじゃないかな…。

M: …そう言われてみると、「このテキストが終わる頃にはこういうことができるようになっているはず!」とか「今、こういう状態だけど、たぶんそれはスランプで…」とか、見通しとか現在の立ち位置とかを伝えていますね。これは学生さん自身ではなかなかわかりませんから。それがいいのかなぁ…。うーん

T: 自分では、なかなかわからないですよね。

M: そう。自分の強みって、自分では当たり前すぎて気づかないことがありますから。

ちなみに、私から見てTさんは、ポジティブなオーラが全身から出てるんですよ。こうやって話していてもそうなんですけど、Tさんが書いた文章からも感じます。

T: えー(笑)。

M: 本当に。学生さんも、Tさんと話していると、なんとなく前向きな気持ちになるんじゃないかなと思うんですよね。

T: そうだったら嬉しいですね。

M: だから、「学生に選ばれる先生」って、単純に「教えるのが上手な先生」というだけではないのかもしれません。

もちろん、ちゃんと日本語が学べることは大前提。そのうえで、「この先生となら、もっとできるようになりそう」と思えることだったり、「この先生と話すと元気になる」と感じることだったり。

そういうものが重なって、「またこの先生に習いたい」につながっているのかもしれませんね。

⑥ 自分の強みが生きる場所はどこ?――オンラインと対面、それぞれの難しさと面白さ

M: ここまで「学生さんにも、先生との相性がある」という話をしてきましたけど、これって、実は先生自身にも言えるんじゃないかなと思うんです。

同じ日本語教師でも、オンラインが得意な人もいれば、対面のほうが力を発揮できる人もいる。私たちも、そこは結構違いますよね。

T: そうですね。私は、対面の方がいいかな…。

M: 私は逆に、オンラインに分がありますね。

でも、これって単純に「どっちがいい」という話じゃないんですよね。

T: うん。向き不向きというか、合う・合わないはあると思います。

M: Tさんは、対面だと「これから先生になる」という切り替えが自然にできますよね。家を出て、学校に行って、学生さんの前に立つ。その移動そのものがスイッチになる。

T: そうですね。電車に乗って、「今日は先生だ」みたいな感じに自然になっていくんですよね。

M: 私はオンラインなので、極端な話、レッスンの1分前まで別の仕事をしていることもある(笑)。

T: ああ、そうですよね。

M: その自由さはすごくありがたいんですけど、自分で切り替えないといけない。しかも学生さんも、会社からそのまま受けていたり、移動中に受けていたりすることもある。

だから、オンラインにはオンラインの難しさがあるんですよね。

T: 対面も、もちろん大変なことはありますけど、その場に行けば自然と「先生モード」になるというのはありますね。学生さんも学校に向かいながら「勉強モード」に自然になっているんじゃないかな。

M: だから、どちらが優れているというより、自分がどちらの環境で自然に力を出せるか、なんじゃないかなと思います。

T: 「私は日本語教師に向いてないのかな」と思ったときも、もしかしたら、仕事そのものが合わないんじゃなくて、今いる環境が自分に合っていないだけということもあるかもしれない。

M: それ、すごく大事ですね。「合わない=自分がダメ」じゃない。自分の強みが生きる場所を探してみる、ということですよね。

⑦ チャンスは待つものではなく、自分からつかみにいく――キャリアの築き方は、一つじゃない

M: ここまで、3年間で教師としてどう変わったかとか、自分に合う環境って何だろうという話をしてきましたけど、3年目になると、今度は「この先どうする?」ということも考えますよね。

T: そうですね。日本語教師として、この先どうしていこうかなというのは、私もまだ考えているところです。

M: 私たちって、たまたま二人とも、日本語教師以外にも仕事をしていますけど、だからといって「日本語教師は複業したほうがいい」ということではないですよね。

一つの仕事をずっと深めていく人もいるし、いろいろな仕事を組み合わせる人もいる。キャリアって、本当に人それぞれだと思います。

T: そうですね。私の場合は、日本語教師というフィールドの中でも、もう少し別の役割をやってみようかな、というのは考えています。例えば、今、Coto社内で公募が出ている教材づくりのお手伝いみたいな仕事も、「やってみようかな」と。講師だけじゃなくて、ちょっと違うこともやってみたいなという気持ちはあります。

M: そういう話って、Cotoにいると時々ありますよね。「こういうこと、やりませんか?」みたいな話が、ポンポン飛んでくる。

T: ありますね。

M: 私、それを「チャンスの芽」って言ってるんですけど、結構いろんなところに芽が出てる感じがするんですよ。

T: そうなんですよ。糸が垂らされていて、その糸にパクッと食らいつくかどうかは、もう私たち次第(笑)。

M: そう(笑)。だから、チャンスって、誰かが自分のところまで全部運んできてくれるものではないんですよね。「こんなこともできますよ」という糸が垂れてきたときに、それをつかむかどうか。そこは自分次第。

T: 本当にそうですね。

今回の対談について、私がTさんにまずチャットで打診させていただきましたけど、そのとき、Tさんはこんな言葉を寄せてくれましたよね。

「とても面白い企画へお声がけいただきありがとうございます。この節目にCotoへのご恩返しと自分の振り返りができること、大変ありがたく思います」

チャンスをつかむこと。そして、そこで得たものを、自分だけのものにせず、また誰かや場所に返していくこと。

そんな姿勢も、キャリアを長く続けていくうえで、大切なんだとあらためて思ったんです。 

⑧ 3年目から、その先へ――完成形のないキャリアを楽しむ

M: これから先をどうするかって、具体的に考えていますか?たとえば5年後とか。

T: 私、あんまり「5年後はこうなっていたい」みたいなのって、決めてないんですよね。今も、目の前にあるものを見ながら、「これ面白そうだな」と思ったらやってみる、みたいな感じで。

M: 私も、私自身の5年後どころか、Cotoが5年後どうなってるかも正直わからないと思っています。変化がすごく速いし、フレキシブルに動いていくから。でも、それが私は楽しみなんですよ。

それと、私自身のキャリアも、最初から「こういうキャリアをつくろう」と思っていたわけではないんです。

私のキャリアは、いわゆる大企業の社員として順風満帆にスタートしたはずでしたが、いろいろあって独立することになり、企業研修の講師をやって、日本語教師を始めて、そこからキャリアコンサルタントの資格を取って、さらにFPの資格も取って、ライティングもやっている。一見すると、なんだかいろんなことに手を出しているように見えるじゃないですか(笑)。

T: そうですね(笑)。

M: でも、私の中では、それぞれがバラバラではないんですよね。

研修講師としてやってきた「人に伝える」という経験が日本語教師にも生きるし、日本語教師として学生さんと接してきた経験がキャリアコンサルタントとして人を見るときにも生きる。ライティングで培った「言語化する力」も、いろいろな仕事で使える。

キャリアについて考えるときには、お金のことも切り離せないから、FPの知識も生きてくる。

そうやって、一本の線というより、横糸みたいに、それぞれの仕事がつながっている感じなんです。

T: それ、私も同じなんですよ。日本語教師と商品企画の仕事って、一見するとあんまり関係ないように見えるんですけど、やっぱりつながっているところがある。

あと、私、もともと飽きっぽい性格なんですけど、仕事の内容が毎回変わることが、むしろ面白いんですよね。

M: うんうん。

T: 商品企画の仕事も、スケジュールとしては同じことをやっているように見えても、毎回テーマが違うし、内容も変わる。日本語教師も同じで、教えること自体は同じでも、相手が違えば全然違う。

だから、私の中では、いろんな経験がそれぞれ別のフォルダーに入っているというより、どこかでつながっている感じなんです。

M: 面白いですよね。

キャリアって、「一つの専門性を深めていく」という形だけじゃないんだと思います。

いくつかの経験を重ねていって、それぞれが影響し合いながら、自分にしかない組み合わせになっていく。

そう考えると、「今やっていることが、将来何の役に立つんだろう」と思う経験も、あとから別のところでつながる可能性がありますよね。

T: そうですね。だから、あんまり「これは日本語教師に必要ないから」って切り離さなくてもいいのかもしれない。

M: うん。そして、そういう意味でも、キャリアに完成形ってないんでしょうね。

T: 私、Cotoって、有名なテーマパークにちょっと似てるなと思っていて。あそこって、「永遠に完成しないテーマパーク」っていうコンセプトなんですよ。

仕事をゆっくりやってるから終わらないんじゃなくて、常に拡張し続ける、常に新しいものをつくっていく、という姿勢。それとすごく同じものを感じるんです。

M: 「完成形がない」って、いいですね。

T: そう。日本語教師も、ここまでできたから終わり、っていう線を自分で引いたら、そこから先の成長ってなくなっちゃうじゃないですか。「まだいける」「まだやれる」っていう、常に自分の「伸びしろ」を信じて、スパイラルアップをイメージし続ける。私、そういう感じが好きなんです。

M: そう考えると、3年目って「完成」じゃなくて、むしろここからなのかもしれないですね。

 

T: ええ。5年後、10年後に何をしているかなんて、今はわからない。でも、今までやってきたことが思いがけないところでつながったり、新しい「やってみたい」が出てきたりする。その繰り返しなのかもしれません。

M:そうですね。 だから、よく石の上にも三年と言われるんですね。キャリアは「3年目から」なんですよ。

T: うん。

M: じゃあ、これからも、面白そうなものが出てきたら(笑)。

T: 食らいつきます(笑)。

M: (笑)。

おわりに

日本語教師として3年。振り返ってみると、二人とも、最初から今の自分を思い描いていたわけではありませんでした。日々のレッスンや学生との関わりを重ねる中で、少しずつ自分なりの教え方や働き方が見えてきました。

そして、ここまで来られたのは、自分たちだけの力ではありません。学生からもらった気づきや学び、周りの先生やスタッフからの支え、そして新しいことに挑戦する機会。その一つひとつが、今の二人につながっています。

だからこそ、これからも、目の前の仕事を大切にしながら、面白そうだと思ったことには一歩踏み出してみる。そして、そこで得た経験や学びを、また誰かに返していく。

3年後、5年後、その先に、二人がどんな仕事をしているのかは、本人たちにもまだわかりません。

完成形がないからこそ、これからが楽しみです。

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