「あいだに」を導入してみよう
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はじめに
これからの日本語教育は、タスク遂行/can-do型のカリキュラム、教授法が主流となることが確実な昨今。しかし当面は、いままで通りの文型積み上げ式を続けていくという先生方もいらっしゃるかと思います。
カリキュラムは「積み上げ式」であっても、言語の基本は「話すこと」。学ぶ楽しみを考えれば、いかに身近な場面や状況においての導入、パターン練習、応用練習を行うことは、can-do型のそれと大きく主旨を異にするというわけではないと思います。
というわけで、今回は初級教科書「げんき」16課で学習する「あいだに」の導入場面や練習のさせ方にフォーカスをして、楽しく効率的に学べる方法をご紹介します。
導入例
どの文型でもそうですが、導入時の文脈や状況設定は重要です。
現在、わたしの担当しているクラスは日中の、全員が駐在員のご家族(主婦・主夫)なので、みなさんが想像しやすい以下2つの場面を設定しました。
①場面(状況)提示
場面1
Aさんは 赤ちゃんが います。
Bさんは 子どもが二人います。8歳と10歳です。
AさんもBさんも、毎日 いそがしいです。
いそがしすぎて、本が読めません。ドラマも見られません。音楽も聞けません。コーヒーも飲めません。リラックスできません…。
でも赤ちゃんはよく寝ます。
いま寝ています。
→ 赤ちゃんが 寝ているあいだに、Aさんは本を読みます。
子どもは学校に行きます。
→ 子どもが 学校にいっているあいだに、Bさんは日本語を勉強します。
進出文型の意味が理解できているかは、以上2文の提出をした上で学生の反応を観察していれば、ある程度判断ができます。
理解度を確認するためにもう一場面提示してみます。
場面2
私はいま日本に住んでいます。でも来年帰国します。
日本に住んでいるあいだに、すもうを見たり、いろいろ温泉に行ったり、したいです。
すでに場面を一つ提示したときに学生の理解度が高そうであれば、上記のように後件にバリエーション(~たり、~たり)を加えてみてもいいです。
このあたりで、すでに後件を言いたそうな学生がいれば、文作をしてもらってもいいでしょう。
わたしのクラスでは、
・料理やスキーを習いたいです。
・アジアのほかの国を旅行したいです。
・日本語を勉強したり、日本で旅行したりします。
などが出ました。
②文法解説
「あいだに」の使用場面と機能は理解できたところで…上記で提示した文を講師のあとについて復唱し、文法解説に入ります。
Aさんは赤ちゃんがいて、毎日いそがしいですが、赤ちゃんはよく寝ます。
例えば、午前11時、午後2時、寝ます。
いま、寝ていますから...
↓
↓
↓
赤ちゃんが 寝ているあいだに、本を読みます。
「short form(普通形)」あいだに、…。
「あいだに」は、限られた時間(limited time)、たとえば昼寝の30分の間だけ、日本にいる2年間の間だけ、英語でいうところの「during」や、「一方でwhile」「並行して」の意味があることを理解させます。「あいだ」という語彙はすでに位置詞(between)として既習であり、物理的な限定的空間内での使用法は理解しているはずなので、その語彙の意味を時間の限定性に類推・応用できる学生もいると思います。
また、名詞接続もできることも、ここで提示します。
たとえば、「昼、寝ます」→「昼寝」と言います。
昼寝(ひるね)のあいだに、…。
「noun」の あいだに
(赤ちゃんの)昼寝のあいだに、Aさんも昼寝します。
部長が
【Noun】
会議(ミーティング)の あいだに
【Verb】
会議を している あいだに
会議に 出ている あいだに
両親が
【Noun】
留守の あいだに
旅行の あいだに
【Verb】
仕事をしている あいだに
いない あいだに
いろんな接続パターンを提示して、後件を作ってもらうのもいいでしょう。ただし「あいだに」の後件には制限が多いので、例えば「両親が留守のあいだに、学校をサボります」は言えますが「両親が留守のあいだに、学校に行きません/勉強しません」と否定形は接続しにくいので、絵カードを使って講師側が後件提示をする(使える語彙を限定しておく)などの工夫は必要です。
導入構成の整理
最後に、導入をどういう構成で行うか整理しましょう。
①導入場面と導入文は最低2つ、できれば3つ準備する。
3つ目はスペアで2つ導入した時点でピンと来ていなさそうなときだけ提示します。あまり導入が長くなってもだれます。そして大事なのは講師がしびれをきらしてすぐに英語で文型の意味を提示してしまわないことです。学生からduring?の意味ですか、などと聞いてきた場合は別ですが、直接法を採用している場合は、できる限り間接言語に頼ることをせず、場面で理解してもらうことに努めます。そういう意味でも適切な(ここでいう適切性は学生の属性との親和性:このクラスであれば駐在員家族で、小さい子どもがいそうな世代:ただし子どもがいない人もいるので配慮は必要)場面設定が大事だということになります。
②口慣らし(リピート)、理解Qを入れること
進出文型を口に出す、口慣らしをするのは、まだ接続ルールを説明する前であっても大事なことです。講師側が思うより学生側にとってはいまから学ぶ文型の明らかな動機付けとなります。スムーズに言えなくてもいいのですが、とにかく「口に出す」という行為は必要です。
そして、導入フェーズの最後に「理解Q」=学生の理解を確かめるための文作、前件をlong formで提示して「short form+あいだに」と変換して言い直すことができるかという接続確認のための練習や、前件を提示したあとに、適切な後件が産出できるか(「あいだに」の場合は自由作文ではなく絵カードなどを使って語彙の制限をすること)を確認します。
補足:文末制限について
なお、(習得文型の違いで)学生によっては「とき」との違いについて、質問を受けることがあるかもしれません。過去の出来事において使う場合、「あいだに」は前件の継続中に後件が一回起こる、「とき」は制限なし、という整理を講師側が持っておくと、学習者から聞かれたときに対応しやすいです。
「あいだに」のあとは→「一回切り」の出来事
寝ているあいだに、地震があったようだ。
留守のあいだに、泥棒に入られた。
「あいだ」のあとは→「〜ていた(継続・習慣)」と「〜だった(状況)」
留守のあいだ、換気扇をつけっぱなしにしていた。
仕事のあいだ、空腹だった/おなかがすいていた。
「とき」のあとは → 制限なし「一回切り」「〜ていた(継続)」「〜だった(状況)」
寝ているとき、地震があったようだ。
仕事のとき、(ずっと)お腹がすいていた。
留守のとき、(ずっと)少しだけ窓を開けていた。
ただし、げんきでは「とき(18課)」は「あいだに(16課)」のあとに出てくるため、この授業段階での対比提示は不要です。講師の知識としてだけ、持っておくといいでしょう。
なお、「あいだに」は習慣性を述べるときは「否定形」はなじみにくいという性質もあります。
✕部長が会議のあいだに、仕事しない。
〇部長が会議のあいだに、休憩する。
学生側の自由作文にはさせず、講師側が絵カードや口頭キューの提示などで後件のコントロールをすることが大切です。
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