AIと日本語教育

AIと日本語教育

AIのある生活

皆さんは「AI」と聞いてどう感じますか。自分とはあまり関係のないジャンルの話ですか、それとも身近な存在ですか。

少し前までは、何か知りたいことや調べたいことがあった場合、①検索エンジンにワードや文を入れ、②出てきた結果の中から自分で気になる記事を開いて、③それらを複合的に読み解いて、④答えに辿り着いていましたよね。

それがここ数年のAIの進化と台頭(?)はすさまじく、例えば何かについて調べたいな、と思って「○○について教えて」と入力すれば、インターネット上に上がっているそれに関する情報を瞬時に集めて解析して、ものの数秒、あっという間にまとめを生成。

得意なのは調べ物だけではありません。自分の写真を送って「○○風、こんなイメージで」とオーダーすれば、あっという間に望みのイラストを描いてくれて、動画投稿サイトのサムネイルだって、イベントのポスターだってお手のもの!顔写真を送れば、メイクのアドバイスや似合う色を教えてくれて、ちょっと困ったことがあって聞いてみれば、「○○についてですね、いつもお疲れ様です。」と答える前に私たちを労ってくれる心遣い!溜まった仕事のメールも代わりに読んで大事なものをピックアップ、会議の議事録だって瞬時に要約、人事考課資料も上手に作文。

仕事に趣味に遊びに、そして暇つぶしや悩み相談に、何でもどんなことでも助けてくれて、答えてくれて、聞いてくれる。私たちの希望をすべて叶えてくれる「万能の相棒」ともいえる存在―それがAI。ほんの1~2年のあいだに私たちの生活の中に一気に浸透し、もう切っても切り離せないものになってきている感覚を抱く方も多いのではないでしょうか。

私のAI体験

さて、じゃあ本当にAIは万能選手なのでしょうか。何でも知っていて、ひとつも間違えなくて、色々なことを代行してくれる―博士のような、執事のような、コンシェルジュのような「パーフェクトなプロフェッショナル」なのでしょうか。

少し前の事、講師室でAIで顔相や手相が見られるという話を聞きました。「へぇ、すごい!そんなこともできちゃうんだ!」とても興味が湧き、どうするのか尋ねると、顔写真を送って『顔相を見て』と入れればOK、とのこと。早速トライしてみました。グルグル・・・。しばらく(と言ってもほんの数秒)待つと、つらつらと私の顔から読み解いた色々なことを次々と箇条書きにしてくれます。すごい!どんなことを教えてくれるんだろう。ワクワクしながら読み始めると・・・。「あれ?なにこれ。」”目が大きく、眉が自然で長めで鼻がまっすぐで・・・”―これって写真を見たまんまじゃん!そしてさらに、”日本語教育や人と関わる仕事に向いている相です。”、”教える仕事が向いています。”んん?これは明らかに私が日本語教師だと知っての回答。

でもよく考えればそれもそのはず。これまでレッスン準備のために、そのAIに聞いたり調べてもらったことが何度もあり、私がこの仕事をしている事はとうに知っているんです。

ここで気付きました。つまりAIは、「これまでの情報をもとに、それらしい答えを組み立てている存在」だと。

そしてまたある時、ホストファミリーとして留学生にどう言えば分かってもらえるか、どうすれば誤解なくお互い冷静に話ができるか悩んでいた時のこと。同じシチュエーションの友人…といってもそうそう身近にいないので、相談するにも状況説明が大変だし。検索エンジンで調べても日本人でホストファミリーをする人の絶対数が少ないため類似の悩みに辿り着けず。さてどうしたものかと考えて、ダメ元で軽い気持ちでAIにアドバイスを求めたことがあったんです。すると、びっくり。「いつもお仕事をしながら留学生のお世話、大変ですよね。お疲れ様です。そんな忙しいあなたが、こんなことで悩まなくてはいけないのはつらいですよね。」と、回答を示す前に、ものすごく私に寄り添う言葉をかけてくれたんです。まるでカウンセラーのように・・・。その言葉だけで「あぁ、分かってくれる人がいた。」と半分くらい気持ちが軽くなるのを感じました。AIは人の心を掴んだり、いなしたりすることもできるんだ、なんていいヤツ!

それからしばらく経って、留学生との間にまた新たな悩みが出てきました。どうしようかな…。

今度もまたまた軽い気持ちで相談内容を入力し、送信!―「新たな問題が発生したんですね。またホストであるあなたを悩ませるなんて礼儀と自覚を欠いていますね。」今度は回答の前にこんなことを言ってきたんです。なんだろう、この違和感・・・。この距離感の近さに対して、相手が生身の人間だったら絶対思わないのに、人ではないAIとなると、どこか自分をコントロールしようとしているような、耳障りのいいことを言って分かったふりをしているような…。急に出てきたものを素直に受け取れなくなったんです。

私をこんな気持ちにさせるAIとはいったい何者なんでしょう。

AIって、つまり何?

ではここで、改めてAIの定義を確認してみることにしましょう。

AIには実は種類があり、最近私たちが日常的に耳にしたり目にするAIというのは、「生成AI」のことを言います。これに対して従来のAIは「識別系AI」と呼ばれ、顔認証システムや生産ラインでの良品/不良品の識別をするカメラなどに代表されます。これは事前に答えを学習させておくことで、新たな情報が入力された際にそれが正しいかどうかを判断するタイプのAIで、膨大な機会学習をさせておくことでYES/NOが分かる仕組みです。

「識別系AI」と「生成AI」の違いって?

二つの一番大きな違いは「創造できるか否か」です。「識別系AI」が正解か不正解かを判断するのに対し、「生成AI」は新しいアイデアやコンテンツを創出する能力を持つので、人間の創造性に近い形で新しい価値を生み出せるのです。

日本語教育的に言うと、クローズド・クエスチョンかオープンクエスチョンかの違い、といったところでしょうか。

「生成AI」のしくみ

「生成AI」は膨大なデータを利用して新たなものを生み出すしくみ。「大量のデータ」は私たちが個人で集めるにはどうしても限界がありますから、『餅は餅屋』のことわざどおり、得意なことは得意な人に任せて、その時間を他のこと―レッスンの構成や教師としてのスキルアップに充てた方が効率的で効果的な気がしますよね。

じゃあ、どうやって「テキスト生成AI(ChatGPT、Claude、Geminiなど)」に私たちの求めるものを出してもらったらいいのでしょう。

プロンプト命

プロンプトとは、AIに対して行う具体的な指示や質問を指します。精度の高い文章や画像を生成するには、明確かつ詳細で具体的なプロンプトを設定することが重要と言われています。例えば 「○○の要約をして」というざっくりとした指示ではなく、「○○を400字以内で、初心者向けに要約して」と細かく指定する。そうすることで AIは「ハルシネーション(誤情報)」を減らし、より目的に近い回答を生成しやすくなります。

私たちが「AI」をパートナーとして活用し、目的に応じて適切に指示を出すことで、より質の高い成果を得ることができます。

これがこれからの日本語教師に求められる新たなスキルなのかもしれません。

AIも万能じゃない

ではAIが生成したものはすべて正確で完璧なものなのでしょうか。生成AIの多くは、インターネット上に公開されている膨大なデータを学習対象としています。ということは、AIは学習データに基づいて「それらしい答え」を出力しているに過ぎない、と言い換えることもできます。長い年月をかけて積み上げて、磨き上げるという「キャリア形成」の考え方ではなく、既にあるものを集約して解を導き出す「学習型」が得意技ですから、現時点では人間のような深い専門性を身につけることや、相手の感情を正しく理解することは難しいとされています。

生成AIが万能であるわけではないのです。

生成AIのリスク

では生成AIに作ってもらった文章や画像、イラストなどはそっくりそのまま使えるのでしょうか。残念ながら、そのまま使うには注意が必要です。そのまま使用してしまうと、意図せず著作権を侵害してしまう可能性がゼロではないと言われています。

生成したコンテンツを利用する際には著作権の侵害に十分注意し、必要に応じて専門家に相談したり意見を求めることが重要になってきます。

日本語教育にどう生かす?

じゃあ私たちの現場、日本語教育にはどう活用したらいいんでしょう。

まず持っておきたいのは「全部任せる」でも「全部疑う」でもない、というニュートラルな姿勢。

AIはあくまで「たたき台を作る係」であり、最終的な判断と責任は、日本語教師である私たちが持つべきです。このスタンスさえあれば、AIは強力なパートナーになります。ゼロから考えるより、出てきたものを「使える・使えない」と選別・修正していく方がはるかに効率的ですし、結果として質の高い日本語授業を提供することにもつながります。

そしてAIに仕事をしてもらう時は「プロンプト」がとても大事。

例えば次のレッスンが「~たいです」だった場合、より具体的な指示を出すようにすると求めているものを得やすくなります。「どこで・何を・いくつ買ってきて」と、誰かに買い物を頼むのに似ています。

例1:「N3レベルで『~たい』の例文を20個作って」

例2:「初級クラスで『〜たいです』を導入する授業の流れを提案して」

ただしAIが作ったものはあくまでも「案」。それは「材料」でしかありませんから、そのまま使うのではなく、必ず自分で考えるプロセス―つまり「調理する」ステップが重要です。

AIと上手に付き合えば、いつでも質の高い・楽しいレッスンが提供し続けられる。私たち日本語教師の教案作成・教材作成の心強い相棒ですね!

まとめ

現場に立つ私たちが「どんな授業にしたいか」「この学習者に何が必要か」を、自分の頭で考えることをやめてしまったら、AIに使われる教師になってしまい「その先生らしさ」は瞬時に失われてしまいます。学習者の顔も、クラスの雰囲気も、その日の流れも知っているのは私たち教師だけ。

AIには絶対に出せない「『私』のレッスン」、「『生』のレッスン」に仕上げる最後の一手が、我々の腕の見せどころと言えるのではないでしょうか。

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