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中級文法コラム7.「こと」「もの」の使い分け
今回は「もの」「こと」の違いについて見ていきましょう。
まずは本題に入る前に・・・皆さんは「もの」と「こと」、どのようなイメージがありますか。
「こと」は形がなく、起きたりしたりする抽象的なイメージがあります。一方、「もの」は「こと」に比べると、ずっと固体的なイメージがあります。「もの」は形があって見たり触ったりすることはできる物質的なイメージです。これは「もの」が「物」や「者」で表されるように具体的なものであるということに起因していると考えられます。
まずは大きな違いといえばそんなところでしょうか。
このイメージを踏まえ、今回は文末表現としての「もの」「こと」について考えてみたいと思います。
「こと」vs「もの」
さて、こんな例文はどうでしょうか。
まだ高校生なのに100Mを10秒台で走るなんて、すごいことですね。
まだ高校生なのに100Mを10秒台で走るなんて、すごいものですね。
みなさんはどんな時、「すごいことですね」「すごいものですね」を使うでしょうか。
どちらも驚いているときに使うような気がします。どちらも使えるけれど、ニュアンスがちょっと異なるパターンですね。「すごいこと」は「100Mを10秒台で走った事実がすごい」と強調している。「すごいもの」は、100Mを10秒台で走ったのを見て(と聞いて)、心からすごいなぁと感じている。瞬間的な感情ではなく、ちょっと時間差があって、しみじみと心に広がる感じでしょうか。
「もの」を使った表現
負けるものか! 話者の強い意志
だって、知らなかったんだもの・・・。 言い訳の気持ちを含ませる
来年こそコロナが終息してほしいものだ。 希望
人生には困難があるものだ。 それが普通だ。一般的だ。みんな知ってるやろ?
子供のころは、よくここで遊んだものだ。 昔を懐かしむ(「よく」と一緒に言うことが多い)
*感情なので、自分の(思っている)ことを表現する時に使うことが多そうですね。
ただ、、、ここでちょっと脱線します。
皆さんは、100Mを10秒台で走る高校生を間近で見ていたら、なんと言いますか?
a. わー、すごい
b. わー、すごいものだ
直接見て発することばはaだと思います。まずは「わー、すごい!」、ちょっと時間をおいてb「わー、まだに高校生なのにすごいものですね〜」となります。「ものだ」がつくことによって、発話の内容がちょっと間接的に、言い換えれば、客観的になります。いかがでしょうか。
「こと」を使った表現
大会に出場したいなら、予選を勝ち抜くことだ。 条件の提示
本気で病気を治したいなら、お酒はやめることだ。 注意、警告
ゴミは決められた日にだすこと。 ルール、決まり
*相手に(または自分に)対して、「私はこれって大切なことだと思うから伝えたいのよ!自分事として捉えて!」と自分の強い思いを言うときに「こと」を使っています。
それでは、こちらの文はいかがでしょうか。
あなたに会えて、どんなにうれしかったことか。
雪のせいで電車が止まっている。困ったことだ。
* 「か/だ/だろう」の前に「こと」がつくことによって、話し手の「驚き」や「感嘆・感心」「同情」の気持ちが強くなります。「いや〜、本当に・・・だなぁ」といった感じです。これが「もの」になると、ちょっと距離感が出て客観的に聞こえてしまいます。
その他「もの」「こと」を使った表現
ものがある
私だけ仕事で行けなかったが、旅行中の家族から、楽しそうな写真が送られてきた。
楽しそうで何よりだけど、なんだか悲しいものがある…
*何となくそう感じる。
ことがある
私は社員旅行で韓国に行ったことがある。
*経験を伝える。
ものなら
行けるものなら月まで行ってみたいが、私が生きている間には難しそうだ。
*不可能な/実現が難しい希望を言う
ことなら
行けることなら月まで行くのだが、宇宙飛行士にでもならなければ無理だ。
*現実的に不可能なのでしない。
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