日本語語彙表現:困ったときのオノマトペ ~病院編~

日本語語彙表現:困ったときのオノマトペ ~病院編~

新オノマトペ&定番オノマトペ

「うわぁぁぁ~このワンちゃん、モフモフがすぎるっ!」「かわいいぃぃぃぃ!この猫様モフモフしたい!」

ペット系の動画を見ると、これらのコメントで溢れていますね。他にも「パヤパヤ」「ポヨポヨ」「ミュンミュン」など、見慣れないのになんとな〜く意味が分かってしまうオノマトペで溢れています。

文化庁から発表された国語に関する世論調査(「もふもふ」「まったり」浸透、8割気にせず 国語世論調査 – 日本経済新聞 (nikkei.com))によると、動物などがふんわりと柔らかそうなことを意味する「もふもふ」や、ゆっくりのんびりするという意味の「まったり」といった新しい表現の使用を「気にならない」とした人が8割に上ったそうです。

年代別に見ると、若い年代ほどこのような新しい表現を許容する人が多いとのこと。より適切に気持ちや状況を形容する表現として、このような新しい言葉が市民権を得ていくのでしょう。

一方で、ずいぶん前から存在する、生活する上で欠かせないオノマトペも多数あります。

その場面は「病院」。オノマトペは、より正確に自分の病状や痛みの程度を伝え、的確な診断につなげる助けになります。

実際にこちらの調査(「オノマトペ」診断の一助に 頭痛や腰痛などの慢性痛) – 産経ニュース (sankei.com))によると、「痛みを表現する際にズキズキなどのオノマトペを活用している人」と「オノマトペを使ったことで痛みを理解してもらえたと考えている人」は、それぞれ80%を超えています。

私もイチ日本語教師として、学習者さんが体調が悪くなったり怪我をしたりしたとき、周りの人やお医者さんに、自分の症状を適切に伝えられるようになってほしいと願っております。

というわけで今回は、病気や怪我の症状を伝える際のオノマトペについて見ていきましょう。

痛み・不快感を表すオノマトペ

「頭がガンガンするんです」「この部分がゴリゴリして…」など、頭痛や腰痛などで病院を受診し、患者が医師に痛みを伝える際、オノマトペを使うことが多いです。面白いことに、そのオノマトペと実際に診断された病名には、一定の関係があることが実態調査で明らかになっています。

画像:「オノマトペ」診断の一助に 頭痛や腰痛などの慢性痛) – 産経ニュース(sankei.com) 

上記の表を見ると、強い痛みを伝えるとき、とりあえず「ズキズキ」と「ガンガン」さえ覚えておけばなんとかなりそうな気がしますね(笑) これらは、痛みのオノマトペ界隈の一軍選手というわけです。

ちなみに、使い方が限定されている二軍選手の一例はこちらです。

  • 「イガイガ」

例:喉がイガイガする。

風邪を引いたときなど、喉の痛みや不快な様子を表しますが、喉以外には使わないですね。 

  • 「ドロドロ」

例:昨日、健康診断の結果が来たんですが、私の血は(           )だそうです。

これはCotoのオリジナル教材にあったものです。人間関係がドロドロとは言いますが(笑)、病院で「ドロドロ」というと、もう血液しかありえないですね。

  • 「ぱんぱん」

例1:一日中歩いたので、足がぱんぱんです。

例2:昨日飲みすぎたので、今日は顔がぱんぱんです。

理由が何であれ、腫れている様と言えば「ぱんぱん」の登場です。響きは可愛らしいのですが、ぱんぱんの状態ってけっこうしんどいんですよね…マッサージでもみもみ…

オノマトペの「感覚」をどう理解してもらうか

日常的に使われているのに、教えるのがなかなか難しいオノマトペ。ネイティブの感覚を学習者さんにどのように伝えたらいいのでしょうか。

①清音か濁音かを意識する

こちらの記事にもありますが、濁音には大きい、重い、鈍い、汚い、パワフルなどのイメージがあります。一方、清音は小さい、軽い、鋭い、美しいというイメージがあります。初めてオノマトペを学ぶ学生さんには、まずはこの点を伝えておくと、その後の学習のヒントになるでしょう。

②頻出のオノマトペを覚えるようにする

私の学生さんでオノマトペが大好きで、オノマトペに関する本を取り寄せて読み込んでいる方がいます。彼は自他共に認める言語オタクなので、新しいオノマトペに出会う度に目をキラキラさせているのですが、こういうタイプの方は稀だと思います。

オノマトペは無数にありますし、しかも次々と生まれているようです。そのため日常的に頻出&汎用性がある一軍オノマトペだけは覚えるようにすると、負担が少なくて済むと思います。今回の病院編でいうと、「ガンガン」と「ズキズキ」ですね。

③「~のような」と例えで説明する

例えば、「チクチク」は「素肌の上にこのセーターを着るときのような痛み」「細い針でつつかれるような痛み」、「ヒリヒリ」は「日焼け止めを塗らずに1日外にいたので、日焼けをしてしまいました。その日シャワーを浴びたときのような痛み」「チリペッパーがたくさん入った辛いラーメンを食べました。その時の舌のような…」など、例を出して使う場面をイメージしてもらいます。

④イラストや動画を使う

感覚的なオノマトペを言葉や文字だけで説明するのは、なかなか骨が折れます。イラストや動画を使って視覚的に理解してもらうのが一番手っ取り早い気がします。

実際に日本語ネイティブがどのようにオノマトペを学んでいるのかを考えてみますと、冒頭のもふもふペット動画のように、映像を見て「うわぁぁぁ~このワンちゃん、モフモフがすぎるっ!」(ほほう。こういう場面で「もふもふ」という言葉を使うのか)と、表現を吸収しているわけですね。

ちなみに、こちらは国民的フリーイラストサイト「いらすとや」で、「ガンガン」と検索した結果↓

もう説明はいらないですね!

それから、国際交流基金が制作したこのようなサイトもあります。動画時間が短いので、レッスンにちょこっと組み込むのもアリですね!

「ひきだすにほんご 気持ちが伝わるオノマトペ

オノマトペの教材として使える書籍や動画はどんどん充実してきていると感じます。別の機会にまた紹介させていただきます。

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