「〜てみる」についてちょっと考えてみた!

「〜てみる」についてちょっと考えてみた!

以前、どこかで「デキる人は『考えてみます』とは言わない」というコラムを読んだことがあります。考えるときは重要なものだけを選択し、集中して掘り下げていきます。だから、「なんとなく全部を考えること」のはムダなんだとか。

「てみる」は「いいかどうかわからないので実際に行動して確かめる」「その行為を試しにする」にときに使われますが、たしかに「てみる」にはふわっとしていて、なんとなく感があります。

今日は、この良い意味で控えめ、ある意味曖昧で不明瞭な感じの「てみる」を深掘りしていきます。Cotoの先生方にも例文のご協力をいただきながらちょっと考えてみるつもりが、沼案件な予感がするのは私だけ!?

 

「〜てみる」を使った例文

<例文>

  1. グラミー賞をとったSamara Joy、お勧めだよ。一度聞いてみて!
  2. 先生が勧めてくれた小説を読んでみようと思います。
  3. あれ、スコットさんが来ていませんね。メッセージを送ってみます。
  4. 近所に新しく沖縄料理の店ができたので、お昼にさっそく行ってみた。
  5. いつかクルーズ船で世界一周してみたい。
  6. 「言うだけ言ってみようかな」「うん、ダメもとで言ってみ。ワンチャンあるかもよ」
  7. 似合うかどうかわからないから、着てみたほうがいいね。
  8. かわいい猫ちゃんですね。触ってみてもいいですか。
  9. 今年は運動するぞー!と目標を掲げてみたものの、既に挫折気味です・・・
  10. PCR検査をしてみたら、陽性だった。無症状なのに・・・
  11. 最近猫が粗相するので、トイレを替えてみたけど関係なかった。砂かな、歳かな・・・
  12. 自分で考えてみてって言われても・・・
  13. 何度も試してみるのですが、やっぱりしいたけだけは食べられません。
  14. 最近CMで見るchocoZAP、安いし着替えもいらないし、思い切って始めてみました!
  15. みなさんも一文、考えてみてくださーい!!!

 

「〜てみる」を深掘りしてみたら、いろんな特徴があった・・・

1. 意志動詞ONLY

「〜てみる」の前の動詞を見てください。意志を表す動詞がきているのがわかります。無意志動詞は使われません。「意志動詞 vs 無意思動詞」についてはコトハジメのブログ記事をご覧ください。

 

2. ほかの文型との組み合わせで使うことが多い

上の例文をみると、「〜てみます」の単純な言い切りで使うことはあまりなく、ほかの文型との組み合わせで使うことが多いようですね。

例えば、「〜てみたい」のような願望、「〜てみよう」のような意向形、「〜てみてください」「〜てみてもいいですか」のような依頼、「〜てみたら、〜てみると」のような条件など

ということは、「〜てみます」単体で導入しても、実際には使える場面が意外と少ないということです。

 

3. 否定形で答えることはない

「てみる」は「結果を確かめるために“お試し”する」のが前提なので否定の形では使われません。

A:新しいショッピングモールができたんだって。行ってみない?
B:❌う〜ん。混みそうだから、行ってみない。→ ⭕️行かない・行きたくない

会話文などを考える時に、気をつけたほうが良さそうですね。

 

4. あくまでも“お試し”

「てみる」は“お試し”で何かをするときに使われます。そのため明らかに“お試し”の範囲を超えているとき、継続的・習慣的なことには使えません。

  • このドラマ面白いから、全部見てみて。❌
  • あそこのラーメンおいしいから、たくさん食べてみて。❌

“お試し”なら「全部」「たくさん」ではなく、「ちょっと」です。また、あくまで“お試し”なので、最後までする必要もありません。

  • 一話見てみたけど、つまらなかった。
  • 一口食べてみたけど、やっぱり口に合わなかった。

 

5. 控えめな配慮表現(にもなる)

「このテキスト、お勧めだよ。是非使って」これだと半強制的で押しつけがましい。「使って」と先生に言われたら、「はい、使います。これで勉強します」と圧で思わず買ってしまいそう(笑)。一方、「使ってみて」でオファーされると、圧はぐっと弱くなります。圧をかけないところが、配慮なのでしょうね。

もう一つ、会話文を見てみましょう。

先生:先日、家族でスノーボードに行ってきたんですよ。Bさん、やったことがありますか。
学生:ありません。私もスノーボードやってみたいです。

この場合、 「私もスノーボードやりたいです」だとやる気満々、前のめりな感じで相手も引いてしまうかもしれないから、「〜てみたいです」で一歩引いて控えめなニュアンスにするのでしょう。場合によっては社交辞令で、相手に話を合わせているだけなんてことも。これも配慮なのでしょう。

「てみる」は目上の人や初対面の人などとの会話の場面、ビジネスの場面でよく使われます。この使い分け、日本人はおそらく無意識でしているでしょうね。フワッと控えめにも、モヤっと曖昧にもできるので何かと好都合。

「もう少し考えてみます」「検討してみます」などという発言をいろんな場面で聞きますが、YesなのかNoなのか、配慮なのかなんなのか、俎上に載ることすらないのか、日本人でも「ん、どっち?」となることがあります。この辺の判断は外国人にはなかなか難しいですね。でも、学習者も日本滞在歴が長くなると「あ、Noなのね」とわかるようになるようですよ・・・笑。

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