例文トレ#15 本日のお題「(使役受け身)ことほど、いやなものはない」
私は、数年前、とても賢い学生に「私は、とうの昔に使役受身を理解して使おうとするのをやめた!」と、堂々たる学習放棄宣言をいただいたことがあります。
彼女いわく、「なぜなら日本人が『使役受身』を使う場面や現象においては『しなければいけない(いけなかった)』で代用できるから」とのこと(す、するどい!)。それからというもの、われわれがあえて使役受身を使う意味って何なんだろう〜?、どうすれば学生が使役受身を使ってみたいと思えるかな?と導入場面の工夫についてあれこれ考えを巡らせてきました。が、いまひとつコレ!というものが浮かばず・・・。というわけで、ここはみなさんのお力を借りるしかない!と、例文作成トレーニングのお題にしてみました。
今回は「( )ことほど、いやなものはない」で、ちょっと縛りのある文にしてみます。( )内に、あなたの心情にしっくりくる使役受身文を入れてください。という形で、フィクション可・語彙制限なしで募集しました。
「使役受身」と「~しなければいけない」の決定的な違い
今回もたくさんの例文、ありがとうござます。見えましたよ〜、光が見えました。
「~しなければいけない」と「使役受身」の決定的な違いは、やはり、そのアクションをしなければいけない人の立場の弱さや、人間関係ゆえの、不満や愚痴がはっきりと言えるということではないでしょうか。
「〜しなければいけない」には、「私はやりたくないんだけれども…」「私が望んだことではないけれども…」というニュアンスを含意することはできますが、誰のせいで?みたいなところって隠されていますよね。かすかに匂わせることはできたとしても、はっきりと文の中には入れられない。
でも、 「使役受身」には文型として入れられる。日本人はよく我慢強いとか不満を言わない人たちとか言われてますが、実はしっかり文型として不満や愚痴やぼやきの形があるって、ある意味すごくないですか?!
「使役受身」「受身」「使役」どれもそうですが、導入するときには、そのアクションを強いる人、強いられる人のパワーバランスが、普遍的で、わかりやすいものがいいですね。教科書的には「親⇔子」がよく出がちですが、cotoに来るような大人の学習者には「妻⇔夫」「上司⇔部下」「客⇔店員」の例のほうが「あるある」感が出て実感しやすいのかなと思います。
また、今回の例文には出ませんでしたが、鬼コーチと選手みたいな立場とか思いっきりフィクションにふって導入するのもいいかもしれません(鬼教師と、おびえる学生でもいいですが)。以下、みなさんの例文を立場別に分けてみました。文中に「だれに」が明示されていないときもありますが、推し量って分けてあります。
「(使役受け身)ことほど、いやなものはない」の例文
■妻⇔夫
- 化粧をしているときにせかされる(急がされる:今回の使役受身というお題に沿えばこの形)ことほど嫌なものはない
- 化粧する妻に待たされることほど、いやなものはない。
※同じ現象の裏表で語られていて、これはおもしろかったです~
■上司⇔部下
- 上司から、忘年会の幹事をさせられることほど、いやなものはない。
- 行きたくない忘年会に行かされることほど、いやなものはない。(コロナで減ったかな?)
■先生⇔学生
- 給食を残さず全部食べさせられるほど、いやなものはない。(小学生の頃)
- お正月から書き初めを書かされるほど、いやなものはない。(習字が苦手な小学生だった私)
- 廊下に立たされることほど、いやなものはない。
■親⇔子
- 大掃除を手伝わされることほど、いやなものはない。(年末の子どもの心情…)
■姑⇔嫁
- お節料理を作らされることほど、いやなものはない。(嫁として辛い…)
■客⇔店員
- (服屋で)特に気に入ったわけでもないのに、試着させられる程 いやなものはない。
- (鞄屋で)ただ見ているだけなのに、鏡の前に立たされる程、いやなものはない。
- 電話口で待たされることほど、いやなことはない。さんざん待たされたあげく、他の部署に掛け直しさせられるなんてこともしばしば・・・
- 正月に働かされることほど、いやなものはない。(年中無休の店の店員…)
■のび太⇔ジャイアン
- ジャイアンの歌を聞かされることほど、いやなものはない。
※日本人にとって、のびた⇔ジャイアンの関係性は普遍的。
海外では賛否両論ある『ドラえもん』ですが、日本社会の縮図。学習者にも積極的に読んでほしいっ。そして願わくばジャイアンの憎めないパワハラ?感も汲んでもらいたい(笑)
■その他(文中に、誰に?が明示されていませんが、それがなくても普遍性のある不満?かな)
- 子供の自慢話を聞かされることほど、いやなものはない。
- 買い物に付き合わされることほど、いやなものはない。
- ずっと愚痴を聞かされることほど、いやなものはない。
- 演歌を歌わされることほど、いやなものはない。
- 関西人がいない場所で、関西弁喋ってみて〜、と喋らされることほどいやなものはない。
※使役受け身の基礎知識、教え方のコツについて知りたい方は、関連記事『使役受け身』をご覧ください!
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