例文トレ#14 誤用あるある「知りません」と「わかりません」

例文トレ#14 誤用あるある「知りません」と「わかりません」

本日のお題は「知らない」と「わからない」です。そういえば、むか~しむかし、テレビで『あなたの知らない世界』って、怪奇現象や心霊写真を紹介するようなコーナーがあったよなぁ(笑)。これは「わからない」と置き換えはできないんですよね…。

そうそう、今盛り上がっているFIFAワールドカップですが、私は何回聞いてもオフサイドの意味がわかりません。これは「知らない」に置き換えるとおかしい…。

会話のスタイルでも誤用例を見てみましょう。

私:「もうすぐ冬休みですね。クリスマス、なにか予定がありますか」 学習者:「まだ知りません」

私:「おなかがすきましたね。昼ごはん、何を食べますか」 学習者:「うーん、知りません」

A:「すみません、今、何時ですか」B:「知りません」

 

私たちは日本語教師ですから「あー、あるあるだね」ととくに驚きはしませんが、普通は「えっ」と若干戸惑うでしょうね。非常につっけんどんで突き放された印象を受けます。(もちろん、あえてのつっけんどんを意図して言うなら別ですが…)

この「知らない」「わからない」の使い方については、よく学習者から質問も来ますし、上級者でもあいまいなまま使っていたりすることが多いですよね。それでは本日も例文で掘り下げていきましょう。

 

「わかりません」vs「知りません」

どちらの例文も学生は “I don’t know.”と言いたかったのでしょうね。

日本語にはこの”I don’t know” が「わからない」として使われる場合と、「知らない」として使われる場合があります。これらの違いがなかなか伝わらない…。

ということで、まず英語話者(or 英語の理解できる人)には「知らない」っていう言葉の裏に”who cares?” という、ちょっとやさぐれたニュアンスが入ってしまうことを認識してもらったほうがいいでしょう。

その上で、やさぐれ感がでないために「わからない・わかりません」を使うと伝えます。そうすると、たいてい学習者は「わかりません」って”I don’t understand”の意味じゃないの?と言います。

まあ、そうなんですけどね…。大丈夫です。このやりとりの流れは想定内。でも、もう少しブレイクダウンしていく必要がありそうですね。さあ、みなさん、ここからどうしますか?

わからない

  1. 理解できない  don’t understand
  2. 決めていない  haven’t decided yet
  3. (残念ながら、恥ずかしながら、あいにく)知識がない  not sure, I am afraid but..(don’t know)
  4. 認識・識別できない can’t recognize/notice

冒頭の『あなたの知らない世界』が「わからない」に置き換えられない理由、サッカーの『オフサイド』が「わからない」で正解な理由、会話文の誤用もこれで説明ができそうですね。

知らない

  1. 情報、知識、面識がない(わからなくても別に恥ずかしくはない)

あれ、「知らない」を使う場面って「わからない」に比べると意外と少ない!?

2.他の人のことについて答えるとき
「知らない」を使っても大丈夫な場面を会話例で具体的に見てみましょう。「~を知っていますか?」「(~について)知らない?」という疑問文の答えとして言うときです。

<例>

  • A:(雑誌などその人がはっきり写っている写真を見せながら)「この人誰か知ってる?」 B:「ん〜知らない」

「知っている?」と聞かれた場合、Noの場合はたいてい「知らない」と答えます。ただ、

  • A:(電車の中から通り過ぎるポスターを見て)「あの俳優さん知ってる?」B:「え?!どこ?わからなかった」

なんてケースもあります・・・

 

次に、答える側の心理状況も見てみましょう。

  • 私:「ねえ、私のメガネ、どこ?」 夫:「知らないよ」
  • 夫:「昨日買ったアイス、ないんだけど」私:「知らない(汗)」

→あなたのメガネ・アイスなんだから知らなくて当たり前でしょ、という場面では「知らない」が自然です。(言い換えると、突き放してもOKパターンと言える!?)

 

もうひとつ、coto講師のAさんが作ってくれた少し長めの会話文もご紹介します。

<会話例>
娘:「ドーハの悲劇」って何?
私:あ、知らないよね。
娘:うん、知らない。
***説明後***
娘:ふーん。知らなかった。
「ドーハの歓喜」って言うけど、「悲劇」の反対語知ってる?
私:うっ…ちょっとわからない。(←知らない、とは言いたくない)
娘:「喜劇」だよ。
私:おー、それは思いつかなかった!

1993年、お嬢さんが生まれる前のことですからね。知らなくても当然、恥ずかしくないです。でも、日本語教師である母が語彙について聞かれたら「知らない」とは言いたくない。その気持ち、わかります。で、3の「わからない」になるんでしょうね。

 

いかがでしたでしょうか。「わからない」と「知らない」って、簡単なようで実は奥が深いのですね〜。「知らない」について、日本語教育の現場で、われわれがもっとも恐れなければいけないのは、学生がこれを適切に使えないことで生まれてしまうコミュニケーションへの悪影響です。日本人との会話で誤解を与えないためにも、誤用に気がついたら直してあげられるといいですね。

それではまた次回✋

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