日本語文法:終助詞「よ」が気になる「よ」!

終助詞「よ」が気になる「よ」!

「よ」「よ」「よ」って何回言うの~

今日は、私が最近気になっている表現について、ちょっとお話ししたいと思います。それは終助詞の「」について。もともとはYoutube界隈の、Youtuber用語だと思うのですが、「新しい××食べる」「新しくできた××、行く」「いま注目の××する」etc…ビデオの中には「」「」「」のオンパレード。

例えば簡単・手抜き料理の作り方を説明する動画などでも「まずは××洗う」「短冊に切る」「レンジに入れる」って、数十秒のうちにどこまで「」を多用するんだ!と、若干イラっとしたのは私だけ?でしょうか。
で、この「イラっ」の原因は何だろうとずっと考えていたところ、先日ひとつの結論に至りました。それは「よ」の機能:「教示」との関係。Youtuberが「よ」を連発するのは、「教示」という機能の中でも、どちらかというとその前の、人の気を引きたい「見て、見て!、聞いて、聞いて!」のほう、視聴者のattentionを求めるゆえの「よ」という結論です。

いまの動画づくりでは短い時間の中で強いインパクトを残すことが求められます。そこでは視聴者を飽きさせないよう、絶え間ない注意喚起!(よく見て~!聞いて~!というリマインド)が必要なのでしょうね(おそらく)。
で、そのような所作や言動にいちいち私が「ん?」となってしまうのは、私はいままさに(多少の)興味を持ってあなたの動画を見ているのに、わざわざ何回も「見て、見て!」となぜ言う~と感じるからなんだろうな、ということです。

「よ」の機能について考えた

話を日本語教育に戻します。初級ではよく「よ」と「ね」の違いはなんだという質問があります。この説明については、先生方もいろいろ工夫をされていると思いますが、私はいろんな例文を出す以外にも、その機能を説明する短くインパクトのある英語もほしいとずっと思っていました。そして、私は、この自分のイラっ(狭小な心)の理由を探る中で「よ-notification」「ね-agreement」という言葉がぴったりじゃないかと思い始めたのです。「よ」は聞き手に、教える(教示)という機能から派生して、「はい、よく聞いて」というような強い注意喚起の意味もあることから、場合によってはattention!(reminder, warning)などのような訳語のほうがぴったりくることもあるような気がしています。

「よ」の機能を説明するとき注意すべきこと

と、以上のような説明をしていると、ときどき学生から「『よ』はより丁寧度が増す表現、polite expressionだと習ったんですが違いますか?」と言われることがあります。なぜか「よ」はやさしく親切な表現=丁寧な表現であると思っている学生が多い、また先生からそう説明されたという学生も多いようです。

たとえば、道案内の場面で

郵便局はどこですか。
まっすぐ行くと右にありますよ。

ここでは「右にあります」という叙述文のみより、「右にありますよ」と「よ」で終わるほうが、丁寧にやさしく聞こえるという印象を持つ母語話者は多く、それで「よ」=丁寧と説明してしまう先生も多いからかなと推測します。

確かに、断定をしないというのが「やさしさ」ととらえればそうなのかもしれないのですが、私はむしろ終助詞の「よ」がつけば、その機能は注意喚起「今から言うことよく聞いてくださいね」ということだと感じます。念押しともいってもいいでしょう。「右にあります」よ=(気を付けて聞いてね)です。

またあるときラジオのDJ(若い女性)が、こんな話をしていました。「好きだよ」って言い方って「やさしい~(目が♡)」。

私のこと好き?
好きだよ。

う~ん、これは「やさしさ」なのかそうなのか。「よ」の機能に照らせば、ただの「よく聞いて」とするアテンションがほしいだけの甘えん坊メンタル発動にしか思えないのだが…と感じるのは私だけ…(かな)。

人に何かを教える、「教示」にはある種の「おせっかい」と「心配」のスパイスがあり、そのさじかげんは、聞き手・話し手の関係性や、受け取る側のその人となり(教えてもらってありがとうという素直さ VS わかってますよのプライド、どちらが優位にくるか)などとも関連があるのかもしれません。

やさしさ=「丁寧」という公式には、ちょっとだけ警鐘を鳴らさせていただきます「よ」!というのが日本語教師としての私の見解です。「よ」のその先にあるもの、含み(implication)は、ただただやさしさに収れんしていくばかりではないというのが私がいま思っていることです。

参考までに、以下に3つ例を挙げてみました。同じ「よ」でも、いろんなニュアンスの違いがありますね。

「よ」の例文と場面(文脈)

①窓に背を向けている学生と、窓が見える場所にいる講師という状況での講師の発話。
「あ、雨ですよ!」
学生に急に雨が降ってきたことを教える、「教示」の一例。
②明日BBQの予定があるという学生に
「明日は雨ですよ」
これも「教示」という言えば教示ですが、若干大きなお世話にも聞こえます。「雨なのに行くんですか?」という含みがあるようにも感じる。
③授業の最後に先生が放つ一言
「明日はテストですよ」
この「よ」は、リマインダー機能、お知らせ機能とともに「今日はうちに帰ってちゃんと勉強してください!」という念押しでもある。

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■終助詞「の」は疑問詞?⇒コチラ

■助詞の省略について⇒コチラ

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