「普通体」と「普通形」は同じもの?
「普通体」と「普通形」はまったく異なる概念です。
名前がとても似ているので、ときどき使い分けがわからなくなったりするかもしれませんね。
普通体は「丁寧かどうか」で文体に関わるものです。
普通形は文中で使われる動詞・い形容詞・な形容詞・名詞などの形に関わるもので、「丁寧かどうか」は関係ありません。
それでは、具体的に2つの違いについて見ていきましょう。
「丁寧体」と「普通体」
日本語教育では、話し言葉と書き言葉の使い分けに注目しています。
話すとき | 書くとき | |
丁寧体 | 聞き手に敬意を表すとき
(目上の人、初対面の人等) |
手紙など |
普通体 | 家族や親しい友人と話すとき | 論文、レポート、日記など |
「丁寧体」と「普通体」のポイントは「文全体が丁寧かどうか」ということです。これは、文末の表現だけでなく、文全”体”に関わるものです。
丁寧体から普通体にするとき(またはその反対も)は文末だけではなく、名詞や表現なども含めた全品詞を整えていく必要があります。例を見てみましょう。
<例> 丁寧体 ⇨ 普通体
- 名詞:こちら、そちら ⇨ こっち、そっち
- 表現:はい、いいえ ⇨ うん、ううん
- 文末表現:そうしましょう ⇨ そうしよう
- 助詞の省略:ごはんを食べにいきませんか? ⇨ ごはん食べ行かない?
- 動詞の縮約:バスが行ってしまいましたね。 ⇨ バス、行っちゃったね。
ここでいっきに複雑さが増し、学生は「うっ」と一瞬固まります。「気を付けることが多すぎて、全然カジュアルに使えないよ・・・ちっ」といった気持ちになるのもわかります。徹底的にやってしまうと、人によっては心理的なハードルが高くなり、モチベーションが下がってしまいます。ここは教師の腕の見せ所かもしれません。
*日本語教育の現場では「です・ます体 / だ・である体 」「敬体 / 常体」という場合もあります。書き言葉の指導をする際に、このような言い方をする場合もあります。学習者がどんなテキストを使っているのか、学校によってもその呼び方は変わります。
*日本語教育ではまずは丁寧体で指導を始めることがほとんどです。普通体はあまりに複雑だからです。初級の中盤あたりで普通体が導入されます。よくあることですが、動詞だけ普通体にして、他は丁寧体を使ってしまったりする学習者がいます。でも、あわてて全てを直す必要はありません。普通体は折に触れて取り上げ、じっくり時間をかけて指導すると良いでしょう。
「丁寧形」と「普通形」
動詞・い形容詞・な形容詞、名詞の活用の“形”のこと。
動詞の場合は「辞書形」「ない形」「た形」の総称です。「会います」の例に挙げてみます。
丁寧形 | 肯定 | 否定 |
非過去 | 会います | 会いません |
過去 | 会いました | 会いませんでした |
普通形 | 肯定 | 否定 |
非過去 | 会う(辞書形) | 会わない(ない形) |
過去 | 会った(た形) | 会わなかった(ない形の過去形/「会わない」のた形) |
<例>
「普通形」+と思います 例文:明日は雨だと思います。風が強いですから。
「普通形」+かもしれない 例文:走れば終電に間に合うかもしれません。
「普通形」+ので、・・・ 例文:具合が悪いので、早めに帰らせていただきます。
「普通形」+名詞 例文:赤いコートを着ている人が花子さんです。
*日本語教育の現場では「ポライト・フォーム / プレイン・フォーム」「ロング・フォーム / ショート・フォーム」などの言い方もあります。学習者がどんなテキストを使っているのか、学校によってもその呼び方は変わります。
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