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聞かれたらこう答える:「は」と「が」の違い
■突然くるから怖い質問
学生に「突然聞かれたら困る質問」第一位(coto調べ)に君臨する「は」と「が」の違い。とりわけこの質問は初級の学習者から聞かれることが多いのではないでしょうか。授業の流れを止めず、初級レベルでも、媒介語なしでも、わかりやすく簡潔に答えられる方法(first-aid)について考えてみました。
■まずはこれだけ
「は」も「が」も、それぞれ助詞としていろいろな機能がありますが、初級学習者の場合、名詞文「~は~です」「~が~です」だけにフォーカスして教えたほうがわかりやすいです。実のところ(私の経験上)、初級学生にとっての疑問は、その機能(主題か主語か)についてであることがほとんどです。例えば英語だと「私はシェフです」「私がシェフです」は、どちらも”I am the(a) chef.”という訳文になってしまい、違いが出にくいため、疑問に思う人が多いということです。
というわけで…
「は」とは?
►私はシェフです。
主題(topic marker)の助詞。助詞をはさんでシェフのほうに情報のフォーカスがある。
私 < シェフ
まずは自己紹介のときに使う叙述文と言い切って説明してしまってもいいかと思います。
「が」とは?
►私がシェフです。
述部「シェフです」を規定する助詞(identifier)。助詞をはさんで「私」のほうに情報フォーカスがある。
私 > シェフ。
「私がシェフです」というとき、大事なのは、前提に「誰がシェフですか」という問いがあること。
A:誰(どなた)が、シェフですか。Who is the chef?
B:私がシェフです。 I am the chef.
英語の場合、[I]にストレスを置く言い方の機能だと説明するのもわかりやすいでしょう。
■もう少し説明するなら…
応急処置的模範解答は、以上の「は=主題」「が=主語」の説明で十分です。が、それ以外に学生からのよくある質問として、以下のようなものがあります。
「会議室が何階ですか」と言えないのはどうしてですか。
次のように答えます。
►会議室は何階ですか。
►何階が会議室ですか。
疑問詞疑問文には2つの形式があります。
①「~は疑問詞です・ますか」
②「疑問詞が~です・ますか」
学生には助詞(「は」or「が」)が決まるのは疑問詞の位置である、というルールをまずは教えましょう。
①は+疑問詞
②疑問詞+が
■もっと
学生のレベルやふさわしいタイミングなどに応じて、「は」「が」の違いについて、次のような説明もすることができると思います。
以前私が英語を習っていたイギリス人の先生が、日本人には相当難しい冠詞(a/the)問題について、「迷ったら、もう全部にtheをつけておけば~?」と若干投げやりなアドバイスをくれたのですが、それにならって?私も「は」をデフォルトとし、「が」が特例とする案を学生に説明するときは採択しています。なので、その特例についてだけは、しっかり覚えるよう指導します。
「が」が適用されるべき3つのケース(「は」は絶対NG)
- 「疑問詞+が」の答え(明日だれが来るの?トムさんとハナちゃんが来る)
- 名修飾節の主語(「私が編んだセーターを息子はよく着ていた。」)
- 従属節の主語(「息子が小さかったとき、よく(私は)セーターを編んであげていた」「彼が来るなら(私は)行きたくない」)
ただし①は直接質問されなくても言外にsub-textとして、つまり隠れた質問として想定されているような場面では、突然(のように感じますが)「が」が出現します。たとえば「私がやりましょうか」のような文。場面は飲み会の幹事を決めようとしてもだれもやる人がいない、やりそうにないとき、やってと言われてはいないけれど、全然決まる気配がないという無為な時間に耐えられず…こう言っちゃうこと、ありますよね。
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