日本語教育:途中で心が折れない楽しい漢字学習

途中で心が折れない楽しい漢字学習

昨日、校内でワークショップを開きました。テーマは『途中で心が折れない楽しい漢字学習』です。ありがたいことに、今回たくさんの方が参加してくださいました!それだけ皆さんの漢字学習への関心が高いということですね。

特にcotoは学習者のほとんどが非漢字圏の方です。「漢字の習得がなかなか進まない」「漢字があるばかりにやる気が出ない」といって心が折れてしまう、漢字で悩んでいる人って本当に多いんですね。

漢字学習が難しい理由

  1. 漢字の形に馴染みがない:ビジュアルがかっこいい、絵とかデザインみたい→文字としての認識がない
  2. 量が多い:漢字は常用漢字だけで2136字(文化庁)一方、アルファベットは?
  3. 学習者の母語の文字が表音文字:1つの文字が意味もあらわすってどういうこと??
  4. 漢字には音読み・訓読みがある:読み方は1つじゃないって、めんどくさっ。
  5. 知らない語彙を覚えて、さらに漢字を覚えるって大変:日本人は漢字を学習する前からある程度言葉の意味を知っているけど、日本語学習者は状況が違う。語彙も漢字も覚えなくてはいけない。
  6. 読み方が分かっても、使い方がわからない。使うシーンがわからない。

うーっ、どんどんハードルがあがっちゃう・・・やっぱりどう考えても難しいかも〜。

そうですね、漢字学習が難しいのは事実です。読み方がたくさんあって複雑でめんどくさいというこの漢字への不安感や抵抗感を取り除くために、私たち日本語教師は何ができるのでしょうか。

 

漢字のオリエンテーション

難しいのはわかっているけれど、教える側にバイアスがかかっていたら、それは学習者にも伝わってしまいます。学習者のモチベーションは教える人によって大きく変わります。ということで、何事も最初が肝心です!今日は私が行なっている「漢字オリエンテーション」をご紹介します。

0. イントロダクション

まずは漢字が読めるとできること、また漢字本来の魅力をはじめにしっかり伝えたいです。

「日本語の漢字ってたくさんありますね。漢字って、一つの字に読み方がいくつかあるけど、意味はだいたい同じだから、もし漢字が読めなくても、意味はわかるんですよ、すごいしょう。面白いですね〜」みたいな感じです。

それから、以下の内容でオリエンテーションを進めます。今回は「日」を例をあげてみます。まずは漢字はじめてクラスなら・・・1〜3を伝えます。ぜひ明るく、楽しく、テンション高めで進めてください。これらは外国語に翻訳されたものを読んでもらってもいいと思います。

1.表語文字

漢字は「音」と「意味」の両方を表すということを上のようなものを作って見せてあげるといいです。

 

2.絵からできら漢字もある!

これはイラストで導入できますね。ビジュアルイメージは印象に残りますし、そこで語られるストーリーが興味深かったりします。ただ、上記のような象形文字は指事文字と合わせても13%ぐらいしかないので、残念ながらすぐにネタは尽きてしまいます。

がしかし、覚えられれば、はっきりいってイラストもストーリーもフェイクでいいっ!漢字のなりたち(字源)が明らかに誤りであったとしても、私たちは専門家を育成するわけではありません。「漢字が読めるようになる」のが真の目的なので、イラストもストーリーも記憶の助けになればOKというのが日本語教育のスタンスです。

ただ、イラストもストーリーもなかなか自分では思いつきません。そこに時間をかける必要はありません。そのような時はテキストをぜひ使ってください。素晴らしいアイデアがたくさんあります。おすすめのテキストはこちらの記事をご覧ください!1、2冊お手元にあると安心です。

 

3. 音読みと訓読み

音読み:中国から来たことば、だから、聞いただけでは意味が分かりません。「日本」「月曜日」など、他の漢字とセットで使うことが多いですね。

訓読み:昔からある日本のことば。「今日はゴミの日です」聞いて意味の分かるものが多いです。

ここでは▶︎/▷で音読みと訓読みの違いを見せていますが、色で分けるのもOKです!

 

以上が「漢字オリエン」です。相手は大人ですからね。どんなものか、なぜ学んだ方がいいのかをちゃんと説明してあげる。これが誠実な対応なんじゃないかと思っています。

やっとここでスタート。さあ、今日の漢字です。漢字を導入、読み方と書き方を紹介します。何回か書いてもらったら、単語だけでなく文の中でどのように使われているか確認することもお勧めします。単語で覚えていても、使い方がわからなければ意味がありませんからね。助詞もしっかりチェックしたいですね〜。

ちなみに、書き順は正しく指導すべき?という質問があります。私は最初こそ書き順を見せますが、あまりうるさく言いません。基本的には形さえ整っていればOKとしています。今の時代手書きで書くことは稀ですから、書けなくても読めればOKとしています。

 

もうちょっと・・・「形」と「意味」→「音」にフォーカス

もう少し漢字学習が進んだら、漢字の左のパーツは「意味」、右のパーツは「音」を表すということを伝えたいですね。またまたざっくりですが・・・

まずは、部首を紹介します。言い方はパーツや部品でもなんでもいいです。たとえば、「日」がパーツの「明」、「日と月でとっても明るいですね」とストーリーで導入します。読み方が特別の「明日」も導入して、「みなさんの明日は明るいです」なんてストーリーを作って紹介したら、きっと楽しいし、記憶にも残ります。

そのうちに、「語、話、読」など左のパーツが「言」の漢字はことばに関係します。なんて紹介ができるようになります。このようなステップで学習を進めていくと、新しく習う漢字のパーツは、既習漢字のパーツの一部と重なる場合が増えるくるので、覚えるのがどんどん楽になります。

そしてステップアップ、ここに「音」の要素を加えると、覚えるためのヒントがさらに増えます。たとえば、「青、清、晴、精・・・」は、音読みなら「せい」ですね。右のパーツは読みを表します、といった具合です。こういう発見ってちょっとワクワクしませんか。

ここまでくると、学習者も一人で漢字学習ができるようになるのではないでしょうか。

 

 

いかがでしたか。やっぱり漢字指導は大変そうですか。まあ、大変ですね。だからこそ、はじめに(折に触れて)漢字の魅力をしっかり伝えておくことが重要だったりします。学習者がそれを好きになるかどうか、途中で心折れずに続けられるかどうかは講師次第です。漢字学習に限られたことではありませんが、講師が「難しい、大変だ」という先入観を学習者に与えてはいけません。難しいものほどこそ入念に準備をし、レッスンのときは笑顔で、楽しいよ〜、面白いよ〜!とテンション高く盛り上げていきたいものです。

written by Kazuko

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