例文トレ#11 本日のお題「なんとかする」
今回は語彙編の応用編で「なんとかする」について考えたいと思います。対語である「なんとかなる」は、けっこうどの言語話者にも伝わりやすい概念だと思うのですが(the Beatlesも”Let it be”と歌ったように)、「なんとかする」のほうでいつも説明に窮してしまいます。
「なんとかする」って一体何をすることなんでしょうか。これを言うときのメンタリティやコンテクストはなんなのでしょうか。本日も講師の皆さんから例文を募集しました。
「なんとかする」の例文
- 健康診断まであと1週間切った。やばい。体重をなんとかしなきゃ。
- この部屋、もうちょっとなんとかしてよ~(家族の汚すぎる部屋にキレながら)
- パソコンに詳しいAさんに頼めば、なんとかしてくれるはずっ!
- 庭の草がボーボー、あー、なんとかしなきゃ。でも、暑いし蚊に刺されるし、、、誰かなんとかして〜!
- クレーマーが来た!店長なんとかしてください…。他のお客さんに迷惑ですし、私じゃ対処できません。
- 今日中に報告書を提出しなくちゃいけない…。他にも仕事が溜まっているけど、何とかして間に合わせます!
- 寝坊して起きたら、髪が寝癖でひどいことに。 5分でなんとかしなきゃ。
- わあ、コップを派手に倒しちゃった。テーブルの上は私が何とかするから、あなたは下を何とかして〜!
- <夕食の準備>
夫:ドレッシングを作ろうとしたら、マヨネーズがないんだけど…。
妻:他の調味料で何とかして! - <コンサート会場で>
スタッフA:山本さん、まだゲストが会場につかないんです。
司会:え?! どれぐらいかかるの?!
スタッフA:あと10分くらいです。なんとかして、時間をかせいでください!
なかなかドラマチックな展開ですね。私の頭の中の「なんとかする」イメージは、問題が発生して主人公が「私がなんとかするからっ!」みたいな、まさにテレビドラマのシチュエーションです。私が脚本家だったら、間違いなくこのベタな状況で書いちゃいそうです。
インターネットでこの言葉を検索したら「なんとかする力」というワードがヒットしました。そして、これはリーダーに欠かせないスキルとのこと。頼りになる、自分が責任をもってこの仕事を成し遂げる強い意志がある、といったポジティブなワードがならんでいました。でも、本当にポジティブなメンタリティのときに使う言葉なのでしょうか・・・疑問です。
「なんとかする」を使うときのメンタリティ
さてさて、みなさんの例文を見てわかったことをまとめてみます。
- 「なんとかする」の同義語は(問題)を解決する。
- でも、その解決に向けての具体的な方策は知らない。
- そして、これを使う状況は、かなり切羽詰まっている。
この切羽詰まった&追い込まれた状況のとき、われわれは「解決する」という具体性のある強い語彙ではなく「なんとかする」を使ってしまいます。このメンタリティってどんなんでしょうね?
「解決する」だと「責任が生じるようで怖いから、ちょっとだけ曖昧にしといてみる?」みたいなことなんでしょうか。(だって”HOW” がわかんないんだもん…)
兎にも角にもこのフレーズ、話を終わらせるパワーワードであることは間違いないですね。
ちょこっと、横道に・・・
他の言語にもこのような言い回しがあるのでしょうか。
英語では”I will manage.” みたいに言って話を終わらせるのを聞いたことがあります(しかしこれを言っていたのは英語ネイティブじゃなくドイツ語圏の人だった…)。ただ、manageだと「ちょっと嫌だけど」というニュアンスが含まれてくるので、もしかすると人に使うのは失礼かもしれませんね。
いろいろな言い方がありそうですが、”I’ll do it somehow.” “I’ll take care of it somehow.” だと、「ちょっと難しそうだけど、何とかするよ」で前向きに解決してくれそうな気がしますが、いかがでしょうか。聞いたことはありませんが(笑)・・・う〜ん、とっても気になるっ!ネイティブの方に是非聞いてみたいです。
欧米人は波風立てるところに労力を惜しまず、日本人は凪であることにパワーを使う感じ!?「なんとかする」もまた日本人的な表現の一つなのかもしれませんね。
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