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中級文法コラム12.「ない」シリーズ
「わけにはいかない」・「ないではいられない」・「てはいられない」
今回の中級日本語文法は「~ない」を使用した文型を取り上げてみたいと思います。
A:「ねえ、ビリー・アイリッシュの来日コンサートだって」
B:「え? いつ? 行かないではいられないよ」
A:「えーっとね、〇月〇日」
B:「…私の結婚式の日だ…。招待状も送っちゃったし、今更キャンセルするわけにはいかないよ…」
A:「あら、残念。こうしてはいられない! はやくチケット取らないと、なくなっちゃうよ! じゃ、またね」
B:「あ、ちょっと、私の結婚式は?? …来ないの??」
学生の皆さんは「ない」を使っているから否定の意味だと考えてしまいがちですが、どうでしょうか。
「わけにはいかない」「ないではいられない」「てはいられない」の3つ、 感情的な違いがありそうですね?
今回も学生に違いを説明できるように例文をあげて、違いを探してみましょう。
わけにはいかない
<例1>彼女に怒られるから、きのこ苦手だけど食べないわけにはいかない。
→ 彼女自慢のきのこ料理、食べなかったどんな事態が待ち受けているでしょう。そう考えると「食べない」という選択肢はなさそうです・・・。
<例2>新しいスマホを買いたいけど、今日買っちゃうと今月生活できなくなっちゃうよ… 欲しいけど、今買うわけにはいかないな…
→ 今手持ちのお金はあるけど、今月の生活費を考えると買ったら生活できなくなりそう。そう考えると、「買う」のは難しいです。
<例3>お客様の忘れ物ですから、安易に捨てるわけにはいかないんですよ…
→ 一流ホテルではゴミ箱に捨ててあったものでも、数か月間は保管するとテレビで見たことがあります。そこまででなくても、お客さんの忘れ物、あなたは安易に捨てられますか? たぶん、捨てたいけど、でも… と心理的なブレーキがかかると思います。
<例4>親友だから、かわいそうだけど本当のことを話さないわけにはいかない。
→ 話せば親友が傷つくのはわかっている。でも、話さなかったらきっと後悔するし、あとで親友との間の遺恨になるかも… そう考えると「話さない」というのはできない。
▶︎このように、「~する」「~しない」という判断を躊躇する理由や状況があって、自分の本来の意思には合わないけど「~する」「~しない」ことをあきらめる。という場面で使っているように思います。
ないではいられない
<例1>めっちゃ面白い話聞いちゃった。みんなに言わないではいられない。
→ こんな面白い話は、自分の心の中だけに留めておくなんて無理。誰かに話したいという気持ちが止められない!
<例2>
A:「見て、部長すごいキレてるけど、歯に青海苔ついている…」
B:「あは!ほんとだ!ぶはは!」
部長:「何だ、お前たち。何がおかしい!」
AB:「すみません…」
A:「何で笑うんだよ!」
B:「あの顔見たら、笑わないではいられないだろ!」
→ 面白すぎて、笑いを止められなかった。
<例3>溺れている子どもを見て、助けないではいられなかった。
→ 自分の命が危険だとかそんなことは考える余裕もなかった。気がついたら海に飛び込んでいた。
<例4>どうしても合格したかったから、あの時は隣の人の答えを見ないではいられなかった。でも見なければよかった。
→ 悪いとわかっていたけど、自分の欲求を止められなかった。
▶︎ある状況で、冷静な判断ができず、感情そのままに行動してしまったとき。欲求をおさえきれずに行動に移してしまったときなどに使っているようですね。
てはいられない
<例1>子供が料理を手伝ってくれているけど、手を切りそうで見てはいられない。
→ 見ているだけだとけがをしそうなので、助けてしまった。
<例2>彼の言い分に私も黙ってはいられなかった。
→ 黙って聞いていたらだんだん腹が立ってきて言い返してしまった。
<例3>明日、プレゼンなんだよ。今日は飲みになんて行ってはいられないよ。ごめん。
→ 飲み会よりプレゼンが大事。今は飲み会に行っている場合ではない。
<例4>え? 生まれる?! こうしてはいられない。みんなすみません。今日は帰ります!
→ 子供が生まれそうと連絡があったら、仕事なんかしている場合ではないですね。仕事より大切なこともある。
▶︎上の二つの文は、感情そのままに我慢できなかったから、その行為をやめて次のことをする。
下の二つもその行為をやめて次のことをしますが、もっと大事なことがあるから~をしている場合じゃない。というストレートな気持ちが出ているように思います。
「ない」シリーズのまとめ
- わけにはいかない…状況や理由から躊躇して、意に反するけど行為をあきらめる。
- ないではいられない…感情のコントロールがきかず、「しない」という判断ができないで感情のまま行動してしまう。
- てはいられない…感情的にその行為を続けられない。他の行動に移してしまう。また、もっと大事なことがあるからその行為をしている場合じゃないという感情。
いかがでしたでしょうか。どれも感情が大きく影響している文法ですね。感情の説明は言葉だけでは難しいと思います。導入する時は感情豊かに場面を演じてみてください。
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