日本語教師に求められる役割とは? パート5
「日本語教師に求められる役割」で最後にお伝えしたいのは、キュレーターという役割です。
最近、キュレーション・メディアとかマーケティングなどの世界でもよく聞く言葉ですね。
さて、どのような意味なのでしょうか。
キュレーションとは?
「キュレーション(curation)」とは、
インターネット上にある膨大なコンテンツや商品の中から独自の基準で選別・編集すること、
情報を選んで集めて整理すること、 あるいは収集した情報を特定のテーマに沿って編集し、
そこに新たな意味や価値を付与する作業などと言われています。
英語ではもともと美術館や博物館や美術館で研究・収集・展示・保存・管理などを行う役割の人(学芸員)のことを言うようです。
このキュレーション、情報過多の現代には特に必要なスキルですね。
日本語教師に求められるキュレーターとしての役割とは?
さて、ではこれが日本語教師とどのような関係があるのでしょうか?
ネイティブ日本語教師のもつ言語辞書はそれはそれは膨大なものです。
それに対して学習者は一から知識として積み上げていきます。
例えば、『先生、「こと」ってどういう意味ですか??』
などと聞かれた時、ありとあらゆる「こと」を動員して説明するわけにはいきませんよね。
教師はこれらを一旦言語的に意味や用法のグループに分け、相手が必要をしている答え+相手の日本語レベルを考えながら、どのような出し方が最適かをコントールしていく必要があります。
特に、”相手がなぜ今その言葉を知りたがっているのか”がとても重要です。
具体的には・・・
たとえば、中級程度の学習者が『先生「が」ってどう言う意味ですか?』と学習者が質問したとしましょう。
皆さんだったらどうしますか?
知識がないと、ただたんに困って、「難しいですね。あとで勉強しましょう。」だけで済ませてしまうかもしれません。
知識が豊富な人になると、「こんなときはこーで、あーで・・・」と長〜い説明を始めてしまうこともあるかもしれません。限定の時、初出の時、全体は部分が・・・、好悪、可能、〜たい、知覚動詞をいうとき等、いろんなシーンが浮かぶでしょう。
そんな時は「いい質問ですね。なぜそれを知りたいと思ったのですか?」とぜひ聞いてみてください。
『普通は「私は田中です」ですよね。昨日「私が田中です」といっているのを聞きました。
どうして「私が」なのでしょうか?』
ははーん、なるほど。聞きたかったポイントはここか!ここまでくれば、答えはわかりやすいです。
『主語の「は」のかわりに、「が」を使うことでA=Bの時の、「A」がはっきりしないから、はっきりさせたい時につかいますね。特に「A」を言いたい、強調したいときに使います。
A:誰が犯人ですか?
B:田中さんが犯人です! (他のだれでもなく彼である)・・・・』
という具合になります。いかがですか。
最後に
知識があることももちろん大事、でも、それをどのように出すか、これもまた大事なことです。
知識として知ってることをなんでもかんでも伝えるのではなく、相手が求めているものに対して、的確な情報を整理して渡してあげること=キュレーションすること、それが日本語教師の付加価値です。
キュレーターしての役割は日本語教師にとって非常に大切な役割であると言えます。ぜひ身につけたいですね。
今回で「日本語教師に求められる役割シリーズ」は最終回となります。
次回からは、「日本を客観視する」というシリーズでお届けしたいと思います。
日本語教師として海外の方と触れていると、日本語だけではなく日本の生活、文化、さまざまな話題について話す機会があります。
なぜ日本はこうなんだ??? という好奇心はもちろん、怒りや悲しみなどいろんな感情を感じる学生と接することもあるでしょう。中には、私たち自身が日本を客観視できていないとうまく答えられないことが多くあります。
次回以降のシリーズでは、そんな時に少しでも役に立つような話題に少しずつ触れていきたいと思います。
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