【日本語教師】オンラインレッスンの難しさとは?
【前編】― 現場で感じた6つのリアル ―
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はじめに
先日、日本語教師を目指して準備をされている方から、こんなご相談をいただきました。
「日本語教師を目指しているのですが、オンラインで教えるか迷っています。まだ実際に働いたことがないので、オンライン特有の難しさや心構えが知りたいです。」
これから一歩を踏み出そうとしている方にとって、オンラインか対面かは大きな選択ですよね。働き方だけでなく、教え方や関係性の築き方にも関わる問題だからです。
そこで今回は、このご不安にお応えする形で、cotoのオンライン講師である私の体験と考えをシェアしたいと思います。
私は別の学校では、対面授業も担当していますので、両方を比較しながらお話しします。
これから働き方を考えるうえでのヒントになればうれしいです。
オンライン特有の難しさ
① 必ずしも集中できる環境とは限らない
対面授業の場合、学生は学校まで足を運び、学習に集中しやすい環境に身を置きます。
学校へ向かう移動時間のあいだに、自然と「勉強モード」に切り替わっていることも多いでしょう。
一方、オンラインでは、必ずしも集中できる環境から受講しているとは限りません。
たとえば――
- 寝起きで、まだ頭がはっきりしていない
- 職場や家庭の生活音が入る
- 荷物が届く、子どもが泣く、ペットが騒ぐなど、途中で中断が入る
- スマートフォンなど、気が散るものが近くにある
もちろん、ほとんどの学生さんは真剣にレッスンを受けてくださっていますし、学校としても「集中できる環境から受講してください」とお伝えしています。
それでも、「どこからでも受講できる」という便利さの裏側には、こうした難しさもあるのがオンライン授業です。
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② 学生の状況がつかみにくい
レッスン中はカメラをオンにしていただいていますが、画面に映るのはせいぜい胸から上くらいです。
たとえば、読解中心のレッスンで「どのように線を引いているのかな」「ちゃんと設問に目を通しているかな」と気になっても、手元までは見えません。
画面共有をしてもらい、カーソルで示してもらう方法もありますが、毎回お願いするのは少し手間がかかりますし、気も引けます。
また、グループレッスンでブレイクアウトルームを使ってペアワークをするときも、自分が入っていないルームの様子はまったく見えません。
対面授業のように、教室全体を一目で把握することができないのです。
そのため、オンラインでは
- ブレイクアウト前に指示をできるだけ具体的に出す
- 活動中はこまめにルームを回る
といった工夫がより重要になります。
③ 対面より距離が縮めにくい
こちらの記事(日本語教師の働き方:告示校で働いてわかったCotoとの違い)でも触れましたが、雑談のしやすさという点では、やはり対面授業のほうに分があると感じます。
ちょっとした立ち話や、授業前後の何気ない一言。
そうした時間が、実は心理的な距離をぐっと縮めてくれるものです。
オンラインでは、どうしても「授業開始 → 本題 → 終了」という流れになりやすく、自然な雑談が生まれにくい傾向があります。
だからこそ、雑談は“おまけ”ではなく、大切なコミュニケーションの時間だと意識する必要があると感じています。
どんどん話してくれる学生でない限り、教師側のちょっとした自己開示も効果的です。
自分の失敗談や最近あった小さな出来事など、ほんの少し共有するだけでも、場の空気はやわらぎます。
また、グループレッスンでは、教師と学生のやりとりだけでなく、学生同士のやりとりの時間を意識的に増やすことも大切でしょう。
個人の考えや経験が自然と出てくるようなアクティビティを設計しておくと、関係性は少しずつ深まっていきます。
それから、オンライン用のアイスブレイクもたくさんあります。
これまでいろいろ試してきましたが、「これはよかった!」というものもあれば、正直ズッコケたものもありました(笑)。
そのあたりは、また別の機会にご紹介できればと思います。
④ 電波環境に左右される
オンラインレッスンの“命綱”ともいえるのが、インターネット回線です。
これが不安定だと、どんなに準備をしていても、レッスンどころではありません。
また、使用している会議システムに障害が発生する可能性もゼロではありません。
私を含め、多くの先生方は万が一に備えて、
- 複数のネット回線を用意する
- パソコンを複数台持つ
- メインとは別の会議システムを準備しておく
といった対策をしています。
それでも、学生側の通信環境に問題がある場合は、正直どうにもならないこともあります。
オンライン授業では、「自分の力ではコントロールできない要素がある」という前提で動くことも、大切な心構えの一つだと感じています。
⑤ 学生が“蒸発”しやすい
「いつでも、どこからでも受講できる」というオンラインの気軽さ。
これは大きな魅力ですが、裏を返せば「いつでもやめられる」ということでもあります。
それまで継続してレッスンを受けていた学生が、ある日突然パタリと来なくなる。
オンラインでは、決して珍しいことではありません。
教師としては心配になりますし、正直なところ、少しがっかりしてしまうこともあります。
「何かできたことがあったのでは」と、振り返ってしまう夜もあります。
忙しくなったのかもしれない。
学習の優先順位が下がったのかもしれない。
もしかしたら、レッスンに不満があったのかもしれない。
いろいろ考えてしまいますが、それを確かめる術は、基本的にはありません。
体感ではありますが、この「突然来なくなる」確率は、対面校よりも高いように感じています。
オンラインで教える以上、「出会いも別れも早い」という側面があることも、心に留めておく必要があるのかもしれません。
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⑥ ある程度のITスキルは必要
当然ですが、オンラインレッスンではパソコンを使います。
そのため、ある程度のITスキルは必要になります。
チャット機能や画面共有、ブレイクアウトルームの設定など、会議システムの基本操作は問題なく扱えるようにしておきたいところです。
また、音声が聞こえない、画面が固まる、といったちょっとしたトラブルに慌てず対応できるくらいのITリテラシーも求められます。
とはいえ、最初から完璧である必要はありません。
使いながら覚えていく部分も大きいですし、経験を重ねるうちに自然と慣れていきます。
「授業力+最低限のIT対応力」
これがオンライン教師の基本セット、といえるかもしれません。
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ここまで、オンライン特有の難しさについてお話ししました。
では、それでも私がオンラインで教え続けている理由は何なのか。
後編では、オンラインだからこそ得られる価値についてお話ししたいと思います。
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まとめ
オンライン日本語レッスンには、対面授業とは違った難しさがあります。
学生の学習環境が見えにくいこと、画面越しでは距離を縮めにくいこと、通信トラブルなど、思い通りにいかない場面も少なくありません。
また、オンラインの気軽さゆえに、学生との関係が突然途切れてしまうこともあります。教師としては少し寂しく感じる瞬間でもあります。
それでも、こうした特徴をあらかじめ知っておくことで、「オンラインだから大変なのは自分だけではない」と少し気持ちが楽になるのではないでしょうか。
私自身も、試行錯誤しながらオンラインで教えています。
後編では、そんな経験の中で感じている「オンラインだからこそ得られる良さ」についてお話ししたいと思います。
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