文型導入時によく聞かれる質問:「意向形+ と 思っています」の場合

文型導入時によく聞かれる質問:「意向形+ と 思っています」の場合

はじめに

「意向形+ と 思っています」を導入した際、よく聞かれる質問があります。それは、

「行こうと思っています」と「行くと思います」の違いは何ですか?

というものです。

みなさんなら何と答えるでしょうか。

この違いを説明するには、いくつか整理すべき文法ポイントがあり、すぐに答えるのが難しい質問です。が、学習者は、初級後半(N4)レベルということもあり、説明は簡潔にわかりやすく、しかも授業進行やその日のカリキュラムの妨げにならないよう(新出文型はあくまでも「意向形と思っています」なので)工夫をしなければいけません。

というわけで、今回は押さえるべき文法ポイントと、学生への説明の方法について考えてみたいと思います。

■「行くと思います」の文法検証

「~と思います」という文型は、初級の教科書「げんき」の場合、8課で初めて導入されます。そして、この文型の引用部分(「思う」の前の部分)は全ての品詞でショートフォーム(普通形)が来ると教えます。

例)

来週、漢字のテストがあります。

先生は難しいテストをつくると思います。<動詞>

でも、

私は中国人ですから、

漢字のテストは、

やさしいと思います。<い形容詞>

簡単だと思います。<な形容詞>

簡単な問題だと思います。<名詞(句)>

このときに学生は「~と思います」構文=I think that構文であると認識していると思われます。が、しかしこれが実は完全にイコールではないところが肝です。

イコールではない部分、それは何か。それは、日本語には引用部分の主語に制限がある、その制限は述部の特性によって生まれるというところです。

例)

このバスに乗れば、(私は)学校に間に合うと思います。

学校まで時間通りに行けると思います。

でも、学校に間に合っても、(私は)一時間目の授業には出ないと思います。

つまり、引用部分の主語が「私」の場合、述部は「ない形」や可能形、無意志動詞が来なければいけないのです。

ここで、改めて学生からの質問に戻れば「行くと思います」という文の主語は、述部の動詞が「行く」という意志動詞であるため、「私」という一人称ではなく、その他の人称であるのです。

■「行こうと思っています」の文法検証

対して、「行こうと思っています」の主語は「私」だと考えるのが妥当です。

例)

私は来年N2を受けようと思っています。〇

友だちは来年N2を受けようと思っています。?

友だちは来年N2を受けようと思っている そうです/はずです/ようです。〇

また、この文型の意味は「予定」であると教えがちですが、大事なのはそこにmood(様)があることです。予定に対する確信度や心持ちなどは本人以外わかりえないので、この文型の主語は一人称の「私」と考えるのが妥当なんだと思います。

加えて、意向形自体が、意志動詞にしかない活用形です(✕雨が降ろう、✕学校に間に合おう)。ここで、一部の人称に制限が生まれるという点もとりあえず記しておきます。

■学生に短く説明してみよう

・伝えるべき文法のエッセンスは「主語」の違い

「行こうと思っています」→「行く」のは「私」

「行くと思います」→「行く」の主語は、私以外の誰か。

例)

私は明日の飲み会に行こうと思っています。

部長も明日の飲み会に行くと思います。

・とりあえず今は保留すべきこと

①「行こうと思っています」の主語が「私」以外の場合も考えられないことはないが、初級のうちは、そのあたりは置いておく。

②「思っています」と「思います」にも意味・ニュアンスに違いがあるが、そこも説明を求められない限り、講師側は意識的にいうことは避けておく。ちなみに「思っています」は「~ている」という文法機能の持つ「継続性」の意味であり、ある程度時間の幅を持って「考えている」ことになる。他方、「思います」は瞬間的な判断である。例えば、「部長も明日の飲み会に行くんでしょうか」という問いに対しての答え「ええ、行くと思いますよ」などの場面で出やすい。

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