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使いこなすとなると、結構難しい「可能動詞」
「可能動詞はいつ使うんですか」ちょっと驚くこの質問、しかしこの質問を受けたことは日本語教師人生の中で一度や二度ではありません。活用形の名前にも「可能 potential」とついているし、日本語教師としては「可能形」ほど、意味や機能について説明不要な活用形はないと思いきや、国や言語の違う学生にとっては実は使いこなすのは、けっこう難しいのではないかと思っています。
■可能動詞の意味と機能
まずは基本、可能動詞の意味機能を見てみましょう。「可能動詞がいつ使えるのかわからない」という学生にも、このように機能ごとに文を提示していけば、理解は難しくないと思います。
<意味機能>
- 個人の能力 ability 100メートル9秒台で走れます。
- 場の能力 capacity この会場には1000人、入れます(受け入れられます)。
- 可能性 possibility/availability 明日は出張のため授業に出席できません。
- 許可 to be allowed ここではたばこは吸えません。
また、例えば一つの可能動詞文「お酒が飲めない」が、場面や状況によって、いろんな解釈ができることを提示してみてもいいかもしれません。
- 飲んでみたいんですけど、あまり飲めないんです。(成人しているが、体質的に不可能)
- まだお酒が飲めないんです。(未成年だから法律的に許可されていない)
- 上司の前では、あまりお酒が飲めない。(社会的規範やモラル、マナーなどの制限)
- あいつの酒が飲めるか!(個人的な理由やこだわり)
■可能動詞がうまく使えない場面や文型って…?
上記で挙げた意味機能でいうと、どの言語でも同様なものがありそうだし、どの学生にとっても可能動詞を使うのはたやすそうに思えます。が、しかし、それが「文型表現」になった時点で、可能動詞がうまく使えなくなっていく学生が多いように思うのです。
例えば、以下のような文型には可能動詞を使わなければいけないのですが、正しく使える学生は少ないと感じます。
目的・ゴールの「(可能動詞)ように」
×日本の会社に入るようにN1の勉強を頑張っている。 ※正解は「入れる」ように
希望・願望の「(可能動詞)といいですね・といいんですが」
×日本の会社に入るといいですね。※正解は「入れる」といい
理由の並列「し、し」
×寒いのが好きだし、スキーをするし、冬が好きです。※正解は「スキーができる」し
また、以下のような機能や文脈の場合、可能動詞を使うのが自然であるが、学生からうまく出ないことが多いです。
弁明・釈明の文脈
いそがしかったので宿題をしませんでした。※よりいい表現は「できませんでした。」
うちでは勉強しないので、宿題は要らないです。よりいい表現は「勉強できないので」
■誤用をどう指導していくか
なぜ学生はこのような誤用をするのでしょうか。その理由を探るには、日本語ではなぜ可能動詞を使うのかについて考えてみたほうが良さそうです。
可能形というとなぜか自分の努力をもって達成する何かという思い込みがあるからか(努力が実っていま英語が話せる!いろんな国の人とコミュニケーションできる!とか)、意志的なものだと思いがちです。でも実は、可能動詞は無意志、「能力や可能性がある」ということ、「(自分のぞましい、理想の、適切な)状態・状況」についての描写表現でしかないことを今一度意識しておくことが大事です。願望の「~といい」の前が可能動詞であることが多いのも、その望ましき状態を願っていると考えれば学生への説明や誤分訂正も難しくないのではないでしょうか。
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