Contents
困ったときのオノマトペ ~故障編~
「あれ?なんか変だ…」どう伝える?
「なんかガタガタ音がするんです」「脱水の時、キュルキュルって音がしてるんですよ」
もしこんな訴えを聞いたら、「あぁ〜洗濯機が故障しかかっているな」「修理の人に見てもらった方がいいかも」と思うでしょう。
もちろんこれらの不具合を「変な音がする」「大きな音がした」「何か引っかかっているみたい」など、オノマトペを使わずに言うこともできます。
ただ、オノマトペを使うことで状況をより正確に、より臨場感をもって伝えることができます。
ということで今回は、困ったときのオノマトペ~故障編~として、家電が故障したかも?というときに便利なオノマトペについて考えてみたいと思います。
「故障したかも?」のオノマトペ
洗濯機を例として、故障やエラーについて家電メーカーのホームページではどのように記載されているかを見てみます。
まず、シャープのホームページです。
『洗いやすすぎの給水以外に水の流れる「シャー」や「ジャー」と音がする』『脱水中に「ガタガタ」「ゴトゴト」など大きな音や振動がする』など、オノマトペのオンパレードですね。ちなみにこれらは正常音だそうです。
異常音の例としては、ドラム回転中に「ギー」「ガー」「キュルキュル」など、こすれた音が挙げられています。
次に、パナソニックのホームページを見てみます。
【ドラム式洗濯機】洗濯機から変わった音・異音がする – 洗濯機/衣類乾燥機 – Panasonic
こちらも洗濯中の音・脱水中の音・乾燥中の音などをオノマトペで説明しています。
異常音の例として、「キーン」「ガリガリ」「カチッ カチッ カチッ」「ギギギ」「キュルキュル」などが挙げられています。
そして、日立のホームページです。
こちらもオノマトペだらけです。『「キーン」という高音や「ガリガリ」と部品がぶつかるような音が出ている場合は、洗濯機内部に異物が挟まっているなど、機械的な問題が発生している可能性があります』ということで、点検がおすすめされています。
…それにしても、どのメーカーさんも当たり前のようにオノマトペを共通言語として駆使していますね。オノマトペがいかに生活に根付いているかを再認識いたしました。
いや〜しかし、日本語の非ネイティブである学生さんに、実際の音とオノマトペを結びつけてもらうにはどうしたものか…と思っていると…なんと!さきほどの日立のホームページに「以下のページで、▶(再生)ボタンを選択すると音が再生されます」こんな音がしたとき(2021年 ドラム式洗濯乾燥機 BD):日立の家電品との表示が!実際の音まで聞けるようになっているではありませんか!
よく見ると、先にご紹介したパナソニック社も「正常な運転音を動画で確認する」とあり、動画を視聴できるようになっていました。
これなら「これはブーンですね」「これはポコポコですね」と、実際の音や映像を使って教えることができますね。
「わかる」から「使える」へ
前回の「困ったときのオノマトペ~病気編~」もそうですが、今回の「故障編」も、誰かが言っているのを聞いて意味が分かるだけでなく、自分が困っている状況を伝えられることが大切になってきます。
オノマトペはとても感覚的なものなので、まずは学生さんには意味やニュアンスなどをつかんでもらうのが良いかと思います。詳しくは、困ったときのオノマトペ~病院編~をご覧ください。
意味をつかんだ後は、ロールプレイで練習します。実際に発話練習させて、日常で使えるレベルにまで引き上げるわけですね。
例えば、頭痛の様を伝えるとき「ガンガン」というオノマトペを使うことがありますが、「頭がガンガンする」というように「する」と一緒に使うことが多いですよね。「頭がガンガンだ」とは言いません。
でも、浮腫んでいる様を伝えるとき「足がパンパンだ」とは言っても、「足がパンパンする」とはまず言いません。
使い方を間違えても意味は分かりますが、ちょっと不自然な感じがします。
一方で、使い方を誤ると相手に誤解を与えてしまうケースもあります。
例:「洗濯機」+「ガタガタ」の場合
「洗濯機からガタガタ音がする」or「洗濯機がガタガタいっている」→異常音がする
「洗濯機がガタガタする」→平らではない床に置いてしまい、置き方が安定しない?
「洗濯機がガタガタだ」→使えるには使えるが、古くてもうすぐお釈迦になりそう?
というわけで、実際に困った場面を想定してロールプレイをします。お医者さん役や修理担当者役に状況を説明してもらうことで、ちゃんと実生活で使えるレベルになっているのか教師側も把握することができるでしょう。せっかくオノマトペの意味を知ったのですから、使ってナンボですね。
充実してきた参考図書
最後に、オノマトペに関する書籍をご紹介します。書籍については、こちらおもしろい日本語のオノマトペ! – 日本語教師応援サイト コトハジメcotohajime でも紹介されていますが、近年たくさんの書籍が発売され、充実してきていると感じます。比較的最近発売されたものを読んでみましたので、よろしければ参考になさってください。
『英語でオノマトペ表現』
英語でオノマトペ表現 | ルーク・タニクリフ |本 | 通販 | Amazon
Cotoの学生さんは英語話者が多いので、日本語で説明するよりも英語で説明する方が効率的な場合もあるでしょう。こちらの書籍は英語ネイティブが書いたもので、例文もたくさんあります。日本語非ネイティブがオノマトペを理解する助けになりそうです。
『「言いたいこと」から引けるオノマトペ辞典』
「言いたいこと」から引けるオノマトペ辞典 | 西谷 裕子 |本 | 通販 | Amazon
辞典というだけあってかなり厚い本です。タイトルにあるように、表現したい内容・意味・状態から引けるようになっているのが特徴です。同じページに同類の言葉が並んでいるので、相違点がすぐに分かるようになっています。例えば、「がたがた」は【振動】のページにあり、ほかに「かたかた」「かたん」「がたん」が記載されています。
『日本語のゆたかさがぐんぐん身につく 子どもオノマトペ辞典』
Amazon.co.jp: 日本語のゆたかさがぐんぐん身につく 子どもオノマトペ辞典 eBook : 竹田晃子, 多屋光孫: 本
「小学校1年生から一人で読める」がコンセプト。オールカラーなので絵本のような感覚で読めます。やはりイラストがあるのは分かりやすいですね。Kindle版でサンプルが読めます。
これらの書籍を動画やWebサイトと合わせて、必要に応じてレッスンに組み込めたらいいですね。
Customer Reviews
Thanks for submitting your comment!