日本語文法:「そう よう みたい らしい」の違い

「そう よう みたい らしい」ってどう違う?に簡潔に答える方法

学生に聞かれて冷や汗をかく質問、第3位(coto調べ)

「そう よう みたい らしい」って何が違う?この質問にフリーズしたことのある先生はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。cotoで簡単なアンケートをとったときにも、「は・が」の違い、「と・ば・たら・なら」の違いに次いで、答えるのが難しい質問の第3位でした。

「そう よう みたい らしい」どれも推量、なにかの根拠をもって話者の主観で判断することなので、学生には違いが見えにくい。とくに英語で訳されるとit seemsや it looks などに集約されがちなので、学生から「違いは何だ?」という疑問ももちろん生まれますし、その分、誤用も生まれやすいです。

そこで、学生から急に違いを聞かれたときのFirst-Aid、応急対応策として、以下の分類を考えてみました。ここさえ押さえておけば学生の理解に役立つ、先生も慌てず対処できる教え方のご提案です。

ステップbyステップで説明しよう

まずは違いの根拠となる以下についてクリアにしておきます。

■推量に至る情報ソースは何か

  • 視覚情報か
  • 総合情報:視覚・聴覚・その他の感覚(第六感も含む)・経験知か

その上で、まずは以下の2つを学生に明示。

①)a)そう b)よう/みたい c)らしい 3つのグループに分ける。

②よう/みたいは formal/casualの違いだけなので、同じグループに入れる。

「そう よう みたい らしい」を分解していく

ここでいよいよ個別の説明に入ります。

a)そう

a)そうは、学生にとって一番理解がたやすいと思われる。情報ソース、推量の根拠が、目の前の視覚情報というポイントにだけに言及する。

例)(黒い雨雲を見て)雨が降りそうです。

⇒文法的には「推量」より「様態」と分類するほうが適当かもしれない。英語だとit looksで言うことが多そうである。

⇒厳密に言うと、「そう」の情報ソースは、視覚情報だけではないが、ここではひとまず学生には言わないでおきます。例)「・・・・ということも言えそうです・考えられそうです」総合的な情報、経験知や考察から総合的に判断、しかし断定を避ける言い方として使うこともある。そうなると「よう・みたい・らしい」との境目が曖昧になるが、違うのはより直観的であること。

b)よう/みたい と c)らしい

まずは、a)そう、と違うところは情報ソースが総合情報(知覚情報、経験知などすべて)であること。

そのうえで、b)よう/みたい c)らしいの違いは何かという議論へ行く。

先生:質問ありますか。

学生:(しーん)

先生:(声が上がらない、もう帰り支度を始めているetcなどの様子から)

では、質問はないよう(みたい)なので終わりましょう。

⇒このときに「ないらしい」とは言わない。

ということから、

「ようだ・みたいだ」とは

・自身が直接体験した知識(総合情報)から判断すること。

「らしい」とは

間接的に、見たり聞いたり読んだりしたこと、信憑性を担保しないで言えること。

彼はまじめそうです。⇒「そう」は外観からの直観的な判断。

彼はまじめなよう/まじめみたいです。⇒直接体験、「彼」に会ったことがあることからジャッジ。

彼はまじめらしいです。⇒「彼」とは話したことはなく(直接経験なし)、誰かから「彼」について聞いた、それも噂話程度にだったり、またその噂でさえ直接聞いたわけでもない、小耳にはさんだ程度であっても使える。ということから「らしい」には、ジャッジの根拠がゆるくても、その推測が正しくなくても私には関係ないという責任回避のニュアンスが漂うこともある。

「ようだ・みたいだ」についてもう少し

・第三者の気持ちについてなど本人以外にはわからないこと、第三者にはあくまでも推測の領域を出ない場合、「ようだ・みたいだ」を使う。

学生には不満があるようだ・みたいだ

・また第三者の「予定」なども、確実に知っていたとしても「ようだ・みたいだ」が出現することが多い。⇒明言を避ける≒責任回避および控え目(丁寧さ:その第3者および聞き手への配慮、どちらの方向も含む)。家族など自分と近い人については自分と同じように扱うので明言してもいい。

好きなミュージシャンが同じ仲間内(推し活動中)での会話

A:Bさん、次のツアーも行く?

B:うん、行くよ。次は夫も参加するよ。

A:Cさんは?

B:Cさんは行かないみたい。(直接聞いているなら「行かない」そうだよ。と言ってもいいが、明言を避ける「みたい」のほうがコミュニケーション手段としては出現しやすい。

・「ようだ・みたいだ」の推量の根拠は、視覚・聴覚・その他いろんな感覚および、いままでの自分の経験知など総合的なものからである。

理解確認問題として、以下の状況で、「そう・よう(みたい)・らしい」について、学生と考えてみるのもいい。

友だちとハイキング中の山道に、湧き水があった。見た目は透明できれいな水、それが「飲めるか否か」について話す場面。

A:この水、飲めるかな。

B:飲めそうだよね。    ⇒見た目で直観的に判断。

飲めるよう・みたいだよ。 ⇒遠くで飲んでいる人がいるのが見える。

飲めるらしいけど。    ⇒すぐにインターネットでググってみた。

まとめ(指導のポイント)

  1. そう 推量の根拠は視覚情報、見て直観的にそう思う
  2. よう・みたい 「よう」はフォーマル、「みたい」はカジュアル。推量の根拠は五感や経験知すべて。見たり、聞いたり、読んだりした総合的な情報に基づいてそう思う。その事象に「直接」関わっていることがポイント。
  3. らしい 推量の根拠は五感や経験知すべて。その点では「よう・みたい」と同じだが決定的に違うのは、その事象に直接関わっていないこと。あくまで「間接」体験からのジャッジ。

もっと

・Almost の意味の「そう」は違う文型としてしっかり入れておきたい。「推量」ではなく、「兆候・可能性」の意味です。

あぶない!落ちそう。

だめだ!吐きそう。

あの人もう限界じゃない?すぐにでも会社、辞めそう。

・「だろう」は、推量より可能性の文型と考えたほうがいい。

推量:そう(「様態」との境目は曖昧…)、よう・みたい、らしい

可能性:だろう(強い可能性、主観)、そう(可能性がある、兆候がある)

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■「と・たら・ば・なら」どう違う⇒コチラ

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