中級文法コラム27 「もの」シリーズ
A:ああ、またX社からメールが来てる。
B:何か問題があるんですか?
A:いや、X社の要求は厳しいものがあるんですよね。コストとか、納期とか無理なことばっかりで…
B:困りますね。
A:X社の担当者、どうにかならないものかな~。クビになるとか…
B:ははは、そんなこと言うものではないですよ。大事なお客様なんだから。
A:いやいや、今度そんな要求してきたら、絶対聞いてやるものかって思いますよ。
B:まあまあ、落ち着いてください。そんな感情的にならないで。無理なら無理とちゃんと先方に理解してもらえるように伝えなきゃ。仕事とはそういうものですよ。
こんにちは。「もの」を使った文型って色々ありますね。文末表現としての「もの」だけでも、「ものだ」「ものではない」「ものか」「ないものか」「ものがある」など・・・盛りだくさん。今回は「もの」シリーズでいってみたいと思います。
今回も一つずつ例文を作って見ていきましょう。
ものだ
<例文1>
- 学生は勉強するものだ。
- 子供はわがままを言うものだ。
こちらは、前件の定義づけのような使い方でしょうか。本来の性質・変わらない事実を述べるときに使われます。
否定形は「〜ないものだ」になります。例えば、「親になってみないと、親の気持ちはわからないものです」
<例文2>
- 年末は忙しいものだ。
- 約束は守るものだ。
こちらは、常識、一般的な考えですね。それが普通だということを言いたいときに使いますね。
人に対して使うとアドバイスや注意にもなります。否定形は「〜ものではない」です。
<例文3>
- いつか、月に行ってみたいものだ。
- 若さを保つ秘訣を知りたいものだ。
「行ってみたいなあ」「知りたいなあ」と、自分の夢や希望を伝えたいときに使います。
<例文4>
- いやぁ、若いのに大したものだ。
- みんなが無理だと思っていたのに、あきらめないでよく頑張ったものだ。
感心したり、感動したりしたときの表現でもありますね。
<例文5>
- 昔はよく友達とカラオケに行ったものだ。
- 学生時代はポケベルでメッセージを送り合ったものだ。
昔を懐かしんだり、思い出したりするときに使いますね。
なんと最初の「ものだ」だけで、5つも意味があった・・・。文脈の中で、どの「ものだ」なのか判断するには読解力も必要そうですね。うーん、困ったもんだ〜。この先大丈夫かな。とりあえず、次に行きましょう。
ものではない
<例文1>
- 人の悪口を言うものではない。
- 誰かの迷惑になることはするものではありません。
- 口の中にものを入れたまましゃべるもんじゃない。
まず、一般的な常識として、してはいけないこと、よくないとされていることを言いますね。
「~すべきではない」という意味で、注意や忠告などに用いられます。
<例文2>
- 知らないことに口をはさむものではないね。恥をかいちゃった。
- テストの前日に徹夜で勉強なんかするものじゃないね。テスト中眠くてたまらなかったよ。
やってしまったことの反省。一度経験して、こりゃ良くないぞと分かったときに口にしそうですね。
<例文3>
- 試験に合格すればいいというものではない。ちゃんと理解することが大切だ。
- 一回説明を聞けば理解できるというものではありません。
「という」をつけると、前件のイメージが強いけど、そうではないと否定したいという意味で使えますね。
ものか
- こんなまずい店、二度と来るものか。
- 誰があの人になんか会うものか。顔も見たくない。
- こんなことで絶対にあきらめるものか。
これは、かなり強い否定ですね。誰かに対してというよりは、自分の感情を強く口に出しています。
「二度と」「絶対に」「決して」などの言葉がよく一緒に使われます。
ないものか
- あの歌手のコンサートチケット、何とか手に入らないものか…
- なんか、もっと簡単にできる方法はないものかな。
- もっといいやり方はないものだろうか。
無理そうなことだけど、実現したらうれしいなぁ・・・という気持ちのときに使います。
「なんとか」や「どうにか」とよくセットで使います。どんな方法でもいいから実現したいという気持ちが伝わりますね。
ものがある
- 彼の話し方は人をイライラさせるものがある。
- 彼女の歌声には惹かれるものがある。
- 彼のスピーチには、人の心を引きつけるものがあります。
どこがそうなのかははっきりわからないけれど、なんとなくそのように感じるというニュアンスで使っています。
「ものがある」の前には感情を表す言葉がくることが多いです。
JLPT N2の文法テキストなどを見ると、まとめて「ものシリーズ」がでてきます。体系的に学べるという点で一見良さそうですが、逆に混乱してしまうかも・・・。学習者が混乱しないように、例文はもちろん、どんな動詞や副詞と一緒に使うかをチェックしておく、可能ならイラストや写真を使って印象付ける、などこの文型を取り扱う際はしっかりした準備が必要ですね。
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