気になる学生の口癖 日本語教師としてどのように直す?

気になる学生の口癖 日本語教師としてどのように直す?

以前コチラの記事(気になる学生の口癖 日本語教師としてどう捉える?)で、「そもそも口癖は直すべき?」「日本語教師の役割って?」ということについて書かせていただきました。

口癖はあって当然!とはいえ、言葉が詰まった時に同じ言葉を繰り返す、日本語ネイティブが使わないような不自然な口癖を使う、癖が強くて会話が疲れる…これのような気になる口癖が化石化してしまっているケースにも出くわすこともあるでしょう。

口癖があったとしても、意味は通じるので会話自体はできます。ただ、日本語として不自然だったり、場合によっては相手に不快感を与えてしまったりすることも。巷の日本人はいちいち指摘しないでしょうから、日本語教師の出番となります。

でも、具体的に日本語学習者に多い口癖って何でしょうか?教師として気をつけたほうがいいことは?学生の口癖を直すときの心理的抵抗を下げるには?

ということで、今回は第2弾として、口癖についてもう一歩踏み込んで考えていきたいと思います。

気になる口癖にどんなものがある?

人の数だけ口癖はありますし、すべての口癖を直す必要はないのですが、この職業をやっていると、どの先生方にも「うーん、その口癖はちょっと…」と感じたご経験があると思います。

周りの先生にどんな口癖が気になったかうかがったところ、次のようなお声がありました。

  • 「でも」

「でも」を順接の意味で使っていることがあるようです。「では」と勘違いしている?母語干渉?(順接/逆接ともに同じ間投詞が使われる言語があるため)

  • 「なんか」「なんとなく」

これらは、日本人も何かを思い出しながらしゃべるときに多用しがちな語彙です。私の知人で、「なんか」と「ホントに」を1分間に300回ぐらい使う人がいました。言葉数のわりに中身がなく、イライラして距離をとったことも…。その人の悪口を言いたいわけではなく、どんな口癖でも多用することはコミュニケーションの弊害になるなと思った次第です。他人事ではありません…自分も気をつけなければ!

  • 「んです」や終助詞「よ」

こちらは韓国語にも同じような表現があるそうです。ただ、日本語の適用場面とは少しズレがあるようで、多用されると気になります。

  • 終助詞「ね」

テキストで終助詞「ね」が出てきたときに、学生に「聞き手と情報が共有されているときに使う」「同意・共感・確認の意味がある」「これはagreementです」「isn’t it? right?」などと説明すると思います。

学生さんは最初は相手への親密さや共感を示したくて「ね」を使っていたのかもしれませんが、いつの間にか化石化して、何でもかんでも「ね」をつけてしまうケースも見かけます。

聞き手としては、同意を強要されているような押しつけがましさや、馴れ馴れしさを感じるかもしれません。

  • やたら女性っぽい話し方

「そうなの」「やだぁ」「まあ」「あらら」という字面を見ると、「話し手は女性」と想像する方が多いのではないでしょうか。

ノンバイナリーの世界にはなりつつありますが、まだまだ日本語には「女性言葉」なるものが存在するので、男子学生に多用されると気になってしまうところです。

教師自身が自分の口癖に気づいているか?

学生の口癖が気になり始めたら、まず考えなければならないのは自分の口癖が学生に移っていないか、ということです。

例えば、前述のやたら女性っぽい話し方についてですが、日本語教師には女性が多く、その影響を受けている可能性があります。

もちろん、男性の学習者の中にはパートナー(女性)との時間が長い方もいるので、教師1人から影響を受けているわけではないと思いますが、他者の口癖を指摘する前にまず自分の口癖の検証が必要でしょう。

そんな私も自己検証の重要性を思い知らされたことがありました。コチラの記事(オンライン日本語教師は「孤独」なのか?【Cotoの取り組み】)でもご紹介しましたが、Cotoのオンラインには、互助会という取り組みがあります。これはレッスンの録画を見て教師同士が学び合うというものですが、私は自分の録画をみて、「あの〜」「え~」という口癖が思ったよりもずっと出ていることに愕然としました。

実は別の仕事の関係で、自分のプレゼンの録画(聞き手は日本人)を見たのですが、こちらにはほとんど口癖は出ていませんでした。なのに!日本語レッスン中には口癖が出ることが多い…。なぜ…?

理由を考えてみたところ、できるだけ学生さんが分かる日本語で説明したくて、「学生さんが分かる表現は…」と言葉選びをしている時の時間稼ぎに、無意識に口癖が出ていることが分かりました。

自分の癖を直視することは、正直言ってあまり快いものではありません。でも、日本語教師は学生さんへの影響が大きい存在であることを考えると、自己検証は避けて通れなさそうです。。

指摘するときの心理的抵抗感を下げるには?

学生さんの気になる口癖を直せるのは日本語教師だけだ!…というものの、なかなか指摘しづらいのではないでしょうか。それは、私もです。。

ただ、気になったところは間髪入れず直す!というマインドセットが時には必要だと思います。なぜなら、放置期間が長くなるほど化石化が進み、直しにくくなるからです。

それに、だいぶ経ってから指摘すると、「えっ…今更?今まで何も言ってこなかったよね?」と不信感を抱かれてしまうかもしれません。

フリートーク時は、いちいち指摘すると話の流れが悪くなったり、気分を妨げてしまったりするので、そのタイミングでは直さなくてもいいのかなと思います。学生さんが身構えて、口が重くなってしまうのは本末転倒ですよね。

会話練習やロールプレイ・短いスピーチなどのメタ言語環境下、つまり「私はこの場面の登場人物にすぎない」という状況下で直すのはいかがでしょうか?

このような練習の後では、教師のフィードバックがあるのが普通なので、直されるほうも直すほうにも心理的負担が少ないかなと思います。

それからやはり一番いいのは、学生さんが自分で気づき、自覚することだと思います。語学教育の場に限りませんが、自分の修正点は他者から指摘されるよりも、自分で気づき自分で考えて改善する方が主体的行動がとれるため、学習効果が高いと考えます。

コチラの記事(気になる学生の口癖 日本語教師としてどう捉える?)でもご紹介しましたが、ロープレやスピーチの録画を見て、気づいたことを話してもらい、一緒にどうやって改善するかを考える…、教師はその気づきのサポートをする役割ですね。

というわけで今回は、学生の口癖についての第2弾として、よくある口癖・マインドセット・心理的抵抗感の下げ方について考えてきました。

口癖は多用や誤用には気をつけたいところですが、その人らしさを表す個性でもあると思います。そのため、「これは気になるから使わないようにして」と否定的な指摘をすると、まるで個性までも否定されたかのような感覚が残ってしまうかもしれません。「ここはこう言い換えたほうがもっと自然ですよ」「こういう言い方もあるから使ってみて」などと肯定的な表現で伝えられたらいいですよね。

 

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