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終助詞の「の」は、単なる疑問詞の「の」なのか。
「~の?」って言われると、こわくない?!
いつかの講師室での雑談。
- 明日早いの?
- うん早いの。
終助詞「の」には、1)疑問と2)断定の意味がありますが、1)疑問の場合、単なる疑問文というより、場合によっては尋問されているように聞こえて「こわく」感じることがない?という話が出ました。
また、学生から、どういうときに「の」を使えばいいのか、フォーマルスタイルの疑問詞「か」を単に「の」に置き換えれば、カジュアルスタイルの疑問文になるのか、という質問を受けたときにどう教えるべきかという話にもなり…。というわけで、今回は終助詞の「の」について考えてみようと思います。
「~の?」は、カジュアルスタイルの疑問詞なのか?
フォーマル⇆カジュアル
疑問詞「か」を単に「の」に置き換えれば、カジュアルスタイルの疑問文になるのでしょうか。以下3つの例をみてみましょう。
例)
- 暑いですか? Formalな疑問文
- 暑い? (上昇イントネーションによる)Casualな疑問文
- 暑いの? Casualな疑問文
1)のFormalな疑問文と同じ意味を伝えるCasualな疑問文は2)で、もちろん例に挙げた「い形容詞」以外にもあらゆる品詞(動詞:行く?、な形容詞:ひま?、名詞:先生?)のPlain Forumが用いられます。では3)の疑問文は何なのでしょうか。日本人同士の会話をよく聞く機会のある学生からは、単に「か」を「の」に置き換えればCasualな疑問文になるんですか?という質問もしばしば受けることがあります。
一瞬「そうです!」と言ってしまいそうになるのですが、厳密には1)=3)ではない。カジュアルに話したい学生が、「の」をただの疑問の終助詞と思って例外なくつけてしまうと、変なニュアンスがつき、へたをすると人間関係にヒビが入るということもあるかもしれません。これこそが、講師室での雑談に出てきた、場合によっては「こわい」印象与えてしまう、というところとも関係していると思います。
終助詞「の」は、こわい?
ではどうして終助詞「の」が「こわい」「怒ってる?」という印象を与えるのか。それは「の」が、フォーマルスタイルの叙述文「ん(の) です」という文型の「ん(の)」の部分であるからだと言えます。
- 暑いんですか?
- 暑いの?
この場合は、1)と2)が同じ意味になり、違いはformalityの部分だけであると説明できます。
ご存知のとおり「んですか」には主に、
①理由を求めたり説明したりする機能
②推測した内容の確認機能
の2つがあります。
例文で分析してみる
講師室で先生方から挙げてもらった例文をもとに、「の」の正体を見ていきたいと思います。
友だちが物欲しそうに何かを見ている。
A:欲しいの?
⇒②推測した内容の確認機能
(友だちはそれが欲しいに違いないと推測し、確認の質問をしている)
B:うん、でも迷ってる。
次会ったときにその商品を持っていた。
A:あ、買ったの?!
⇒②推測した内容の確認機能
(友だちはその商品を結局買ったと推測し、確認の質問をしている)
B:結局買っちゃった。
私、虫、だめなの。
⇒①理由を求めたり説明したりする機能
(虫はダメだから、、、その虫をどかしてください、ここにはいたくないetcと説明している)
会社で
A:「今日、飲みに行かないの?」
⇒②推測した内容の確認機能
(今日は会社の飲み会のはずだが普通に帰ろうとしている同僚をみて、確認の質問をしている)
B:「えっ、仕事のあとに上司と飲みに行かなきゃいけないの?」
⇒①理由を求めたり説明したりする機能
(上司と飲みにいく理由がわからないので、その理由を尋ねるために質問をしている)
娘と母との会話
前日の夜
母:明日朝早いの?
⇒②推測した内容の確認機能
(娘の様子からから、確認の質問をしている)
娘:うん、漢字テストがあるの。
⇒①理由を求めたり説明したりする機能
(朝早い理由を説明している)
早く学校に行って勉強しなきゃ。
母:大変なのね。
娘:実は教科書学校にあって、ノー勉なの。
⇒①理由を求めたり説明したりする機能
(朝早い理由をもっと詳しく説明している)
母:えっそうなの!?
⇒①理由を求めたり説明したりする機能
(朝早い理由の説明を繰り返しすことで驚きを表現している)
翌朝…
母:まだ起きないの?早くいくんでしょ?
⇒①理由を求めたり説明したりする機能
(早く起きると言ったのに、起きていない様子をみて起きない理由を確認している)
娘:眠すぎて起きられないの…
⇒①理由を求めたり説明したりする機能
(早く起きられない理由を説明している)
「の」が意図するもの
「の」がときと場合によっては、怖く聞こえたり(尋問調)するのは、文脈や、受け取る側の感じ方にもよるかと思いますが、「の」自体に、間接的にですが、理由を問うたり、確認したりする意味があるからなのではないかと思います。発言の意図を受け手に察してもらう(受け手が文字以上のことを察してしまう、ときには拡大解釈してしまう)コミュニケーションスタイルは、聞き手・話し手それぞれの性格と関係性など、いろんな要素が混じり合い掛け算となって、いろいろなニュアンスを持ってしまうものだと思います。たった一音「の」をつけただけなのに、です。
個人的には、「の」は概して、断定しない分、一見やさしそうに聞こえますが、実は怖い?ニュアンスを感じ取ってしまう終助詞だと感じます。「理由」を問うたり、説明したり(言い訳や、察してくださいのサイン)って結構アグレッシブだなと…私自身は感じてしまうんです。(昨今話題のpassive aggressiveにもつながっていると思います⇒リンク)これは、私自身のコミュニケーションスタイルが、竹を割った性格同様、竹を割っていくスタイル=言葉を文字通りに受けたりとったりすることのほうにより優しさや誠実性があると思っているからなのかもしれません。
学生にはこう説明する(まとめ)
学生から、「~の?」の「の」ってなんですか?と聞かれたら…
・「んですか」のカジュアルスタイルである。
・「んですか」と同じ、理由を問うたり、確認する機能がある。
・カジュアルスタイルの疑問文であれば「の」はつけず、単にプレインフォームの上昇アクセントだけでよい。
以上3点をおさえるといいかと思います。
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