受身② 直接受身と間接受身
今回も先週に引き続き、受身を見ていきたいと思います。前回は受身を有情の受身と非情の受身で分けました。
学習者に教えるときは、話し手の視点から述べるときの「〜は〜に〜られる」「〜は〜に〜を〜られます」、物事の状況や事実を受身表現を使って説明するときの「モノが〜られます」で、特別な言葉を使わずに教えたほうがいいです。イラストもたくさんあるので、そういったものもどんどん使うといいですね。
でも、日本語を教える私たちはもうちょっと深く理解し、受身の特徴をとらえておいたほうがいいですね。というわけで、今回は直接受身と間接受身に分けて見ていきます。
直接受身・間接受身とは
はじめて受身を学習者に導入するときの定番の文がこちら・・・
直接受身:私は 父に 怒られた。
>>>主語(私)が、誰か(父)によって、直接的に何かをされる(怒られる)
間接受身:私は 母に 日記を 見られた。
>>>主語(私)が、誰か(母)によって、間接的に何かをされる(日記を見られる)
直接受身・間接受身の特徴
直接受身と間接受身を次の4つの観点から見てみましょう。
- 対応する能動文があるかどうか。
 - 迷惑の意味があるかどうか。
 - 英語に訳せるかどうか。
 - 受身の助詞の種類
 
| 特徴 | 直接受身 | 間接受身 | 
| 対応する能動文 | ある
 <例文:ヲ格> 能:母が私をほめた。 受:(私は)母にほめられた。 
 能:ハチが私を刺した。 受:(私は)ハチに刺された。 
 <例文:二格> 能:先生が私に質問した。 受:(私は)先生に質問された。 
 
 *日本語の文では、1つの文に人が2人現れるとき、主語は・・・ 人: 私>あなた>三人称 三人称:人>動物>無生物 つまり、私>母 私>先生 私>蚊 
 それを踏まえて、この例文。大谷選手により注目すると・・・ 
 (所属するリーグが違うのでありえませんが・・・) 
  | 
ない
 
 能:隣の人が騒いだ。 受:(私は)隣の人に騒がれた。 
 能:夜中に子供が泣いた 受:(私は)夜中に子供に泣かれた。 
 能:雨が降った。 受:(私は)雨に降られた。 
 ◆持ち主の受け身◆ 能:犬が私の手を噛んだ。 受:(私は)犬に手を噛まれた。・・・「手」は体の一部 
 能:妹が私のケーキを食べた。 受:(私は)妹にケーキを食べられた。・・・「ケーキ」は持ち物 
 ※直接受け身で『私のケーキが妹に食べられた。』とも言えなくもないが、主語は妹>私のケーキなので、妹のほうが良い。 *「持ち主の受け身」は間接受身文の一種で、影響を受ける目的語の所有者が主語となります。(分類の方法は研究者によっても異なる)  | 
| 迷惑の意味 | ない | ある
 「〜に〜を〜られる」は個人的な話題で使われることが多く、迷惑の意味が生じやすくなります。このような性質から迷惑受身とも言われています。  | 
| 英語訳 | できる
 “I get scolded by my father.” “Lego is loved by people all over the world”  | 
しにくい
 *受動文では、能動文にない「私は」が現れ、主語になっています。そこで、対応する能動文を持たないと言われます。  | 
| 受け身の助詞 | 1.     AがBにCを渡す(送る、勧める、与える)の場合は「から」
 
 2. AがBを設計する(建てる、作る、書く、発見する、発明する)の場合は「によって」 
 
 3. 原因・手段の「で」 
 
 4. 心情を表す動詞(愛する・慕う・尊敬する・思う)は「に」「から」どちらもO K 
 
  | 
「に格」しかとらない | 
			
		
					






