受身① 有情の受身と非情の受身

受身① 有情の受身と非情の受身

受身には有情の受身と非情の受身があります。

有情の受身と非情の受身は受け手(主語)が、有生物(人・動物)なのか、無生物(モノ・コト)なのかで分けます。

有情の受身vs非情の受身。直接受身vs間接受身。受け身の分け方は色々あります。今回はひとまず有情の受身と非情の受身で分けてみます。

有生物が主語になる受身文を「有情の受身」といい、無生物が主語になる受身文を「非情の受身」といいます。

有情の受身は話し手の気持ちを表し、会話の中で多く使われます。一方の非情の受身は客観的に物事を述べるときに用い、文章やスピーチの中で多く使われます。

 

非情の受け身

いよいよ今日からオリンピックですね。非情の受身を練習するにはもってこいです。非情の受身はニュース、新聞などの報道文や説明文などでたくさん出てきます。

現在起こっていることをタイミングよく取り上げることができると、学習者も教室の外ですぐに使えるのでいいですね。特に語彙のコントロールはしていませんが、今回の東京オリンピックでも色々な例文が考えられます。

<例文>

  • 今日から東京でオリンピックが開催されます。
  • 東京オリンピックはコロナで1年延期されていました。
  • コロナなので、オリンピックは無観客で行われます。
  • オリンピックのスタジアムは隈研吾によって造られました。
  • 東京の夏は暑いので、熱中症が心配されています。
  • 今日から東京で交通規制が実施されます。
  • 新しい音声翻訳機が発売されました。
  • 色々な問題がメディアで取り上げられています。

 

※硬い書き言葉の文章の中で、「建てる」「描く」「書く」「生み出す」「作る」「発見する」「デザインする」など「何かを作り出す」と言いたい場合、「によって」が使われます。ただし「によって裁かれる」「によって罰せられる」などの例外もあります。

書き言葉で多く使われる非情の受身ですが、テレビのレポーターになってニュースで報道するという役割を演じてみたりすると、アウトプットの練習になりますね。(こういう発表の前には発音練習もしたくなりますね〜。隙間でちょいちょい発音練習を入れていくのは有効です・・・脱線しました・・・)

 

日本語の受身は主語に有生物を取るのが基本です。有生物でなければ、何かを受けた(あるいは被った)と認識することができないからです。つまり受身文を作ろうと思うことができないからです。特に動作主を取り上げる必要がない場合(動作主が不特定多数だったり、言う必要がなかったり、わからない場合)、例のように例外的に無生物(モノ・コト)を主語にすることができます。

 

有情の受け身

日本語の受身といえばコレ!初級のテキストでは気持ちを表せる有情の受身がはじめに取り上げられています。

有情の受身文とは「自分が相手から一方的に動作・影響を受けたときの心の動きを述べた文」です。ですから、会話の中で多く使われます。有情の受身は人(多くは「わたし」)を主語にした受身文が多く(ゆえに省略されることが多い)、迷惑の意味を表すことが多いと言われています。

<例文>

  • 嘘をついて、父に叱られた。
  • 彼女にフラれた。
  • かゆーい、蚊に刺された〜!
  • 食べようとして残しておいたケーキを 兄に 食べられた。
  • 弟に買ったばかりのパソコンを壊された。
  • うちの前にマンションが建てられて、富士山が見えなくなってしまった。
  • ショック・・・子供に車を傷つけられた。
  • 友達の赤ちゃんをだっこしたら、泣かれちゃって、まいったよ。
  • 先生に発音を褒められた。
  • メアリーさんに告白された。
  • 山田くんにドライブに誘われました。
  • 誕生日に彼に結婚を申し込まれた。

 

※最後の4つには迷惑の意味がありません。迷惑の意味は「文」「文脈」によって生じます。「ほめる」のように動詞の意味によっては「〜してもらった」というポジティブなニュアンスの受身になることもあります。

 

有情の受身のまとめの活動や復習では「ちょっと聞いて!」と残念な1日をペアワークで話したりすると面白いです。ある程度慣れてきたら、既習文型と組み合わせるとより自然な会話になります。(会話はインターラクティブなものなので、残念な話を聞いたときのリアクションも色々なパターンで紹介できるといいですね。)

  • 私の妹、ひどいんです。隠しておいたチョコレートを食べられたんです。それから、新しく買った靴を履かれたんです。しかも、汚されたんです。
  • 今日は最悪な1日だったんです。朝の電車で足を踏まれたんです。それから、コーヒーをこぼされたんです。しかも、遅刻して上司に怒られたんです。

「どんな場面でどう使ったらいいかわからない」「受身って苦手」と言う学習者は少なくありません。残念な1日もそうですが、子供のころに兄弟にされて嫌だったことなど、必ず誰でも体験をしたことがあるようなトピックで「あー、あるある!」と共感できるような例文、彼らの想像力が膨らむような例文を考えておきましょう。

 

>>>次回は有情の受身で出した例文を直接受身と間接受身という分け方で見ていきます。

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