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ヴォイス
出来事をどの立場(視点)から表現するかという点に注目したものをヴォイス(態)/voiceと言います。
たとえば、「誘う」行為をする太郎を主語とする能動態の文 (1) が、表現を変えると、(2)の花子を主語とする文(受動態)となったり、(3)の健太を主語とする文(使役態) となったりします。また、(4)のような可能態にもなります。
どれも太郎が花子を「誘う」ことには違いはありませんが、視点の違いによってニュアンスが異なります。
(1) 太郎が花子を誘った。
(2) 花子が太郎に誘われた。
(3) 健太が太郎に花子を誘わせた。
(4) 太郎なら花子を誘えるよ。
助詞の変化に注目して文をみてみましょう。(1)では、「太郎」は格助詞「が」、「花子」は格助詞「を」で示されています。これが、(2)のように受動態になると、「花子」は格助詞「が」、「太郎」は「に」で示されます。このように、動詞の形が変化することによって文全体の格関係が変化する文法形式、これがヴォイスです。
日本語教育では広義のヴォイスとして能動/受動、使役、可能、自発、授受、動詞の自他などの表現が取り上げられています。ここでは初級で取り扱う受身、使役、可能の3つを例文を挙げて紹介します。
受動態(受身・受け身/passive form)
人やものが他からの動作・作業によって影響を受けるという意味を表すために用いられる表現。
話し手の視点・関心・共感が動作主よりもその動作の対象にある場合に使われます。初級ではまずこの3つから。
① 直接受身:母に 褒められて、うれしかった。
② 間接受身(被害の受身・持ち主の受け身):泥棒に財布を盗まれた。
③ 非情の受身:オリンピックは4年に1度 行われる。
※さらに詳しく受け身について知りたい方はこちらの記事(受け身①、受け身②)をご覧ください。
使役態(使役/causative form)
基本的には何かの行動や役目を命令、または強制的にさせるという意図を表す表現。初級ではまずこの2つから。
① 強制:母親は 子供に 掃除を させます。(母→子供:母は子供の気持ちを考慮していない。)
② 許可:私は 子供に 1日30分 ゲームをさせます。(母→子供:私は子供の意向を聞いている。)
※さらに詳しく使役について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
「Vてもらう」文 vs 使役
「~てくれる」「~てもらう」は、何らかの行為を相手から受け取る際に使う表現です。
太郎は 友達に 荷物を 運んでもらった。 vs 太郎は 友達に 荷物を 運ばせた。
「運んでもらった」はその行為に感謝の気持ちを持っている時に使います。
一方、「運ばせた」は命令し、強制的に何かをさせたという時に使います。
「Vてもらう」文 vs 受身
弟が カメラを 直してくれた。vs 私は 兄に 大事なカメラを 壊された。
「直してくれた」も上の例と同様、感謝の気持ちを表しています。
一方、受身の「壊された」は”兄のせいで壊れた”と残念な気持ちを表しています。これを「迷惑の受身」といいます。
使役受け身
使役で言い表されたことが、さらに受け身の形で表現されることを「使役受け身」と言います。
*グループⅠの動詞の場合、「持たせられる」の縮約形の「持たされる」で受け身形と紛らわしいので注意が必要!
① 迷惑に感じている:大家さんの都合で 引っ越しさせられた。
② 迷惑に感じていない(話し手が強い印象を受けた場合):この映画を見て、多くのことを 考えさせられた。
可能態(potencial form)
動作主がその動作・行為をすることが可能な状態にあるということを述べる形式のものを「可能形」と言います。
① 能力:私は 漢字が 書けます(漢字を 書くことができます)。
② 状況:この水は汚いので、飲めません(飲むことができません)。
*「ら」が抜けた形「ら抜き言葉」(食べれる/着れる/来れる)で用いられることも多いです。「ら抜き言葉」はこちらの記事をチェックしてみてください。
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