ゼロ初級者からよく聞かれる質問:生活でよく耳にする表現について
今、その質問?
cotoの学習者は、日本での「生活者」であることが多く、日常生活でよく耳にする言葉、目にする文字の意味などを、質問されることがよくあります。そしてそれは往々にして、今やっている授業の内容とは直接関係のない質問であることが多く、プライベートレッスンであれば、どこまでも学生に付き合うことはできますが、グループレッスンの場合、その匙加減が難しく感じることも多いのではないかと思います。
「あ、先生そういえば、これって…」「興味本位の質問にはなりますが…」という授業中に突然切り込んでくるような質問のしかたであることが多いので、講師のハンドリング力が多いに必要になってくるでしょう。
では、その匙加減とやらを、どのようにして決めたらいいかというと、いちばん大事なのは、
①クラス全体で共有すべき価値のあるもの、つまり他のクラスメートも生活者として知っておいたほうがいいと講師が判断して思うもの、または他の学習者もそういえば気になっていたであろう(よくぞ聞いてくれた!タイプの)質問
②答えに時間がかからない(長くても5分ぐらいで説明可能な)質問
のことです。
講師として経験を重ねれば、いま答えるべき質問かどうか、また自分がどれぐらい簡潔に答えられる質問かがわかるのですが、講師歴がまた短い先生などは、迷うところかもしれません。
ということで、今回は、初級の学生からよく聞かれる質問と、その答え方についていくつか紹介していきたいと思います。
文脈で意味が変わる表現
(1)ちょっと
日本語の中には、同じ言葉でもさまざまな意味や使い方をもった言葉が多くあります。「ちょっと」はその代表的なものです。
1.数量や程度
「ちょっと」とは、もともと「少し」と同じ意味で、「量が少ない」、「程度が低い」ことを表す言葉です。
- ちょっと待ってください。 Please wait a little.
- もうちょっと安いのはありませんか。 Do you have a little cheaper one?
2.婉曲的な否定
実際の運用ではこの「少し」であることを断りなどの時の婉曲表現のように使うこともあります。
- さあ、ちょっとわかりません。 Sorry I don’t know,
- ごめんなさい、金曜日はちょっと…… Sorry I won’t be available Friday.
ここでの「ちょっと」は、断ることをより柔らかく相手にとって受け入れやすくするための表現です。
(2)すみません
「すみません」は日本語の中でもっとも便利な表現の一つです。代表的な使い方は下記の三つです。
①呼びかけ
お店などで店員を呼ぶ時に使う他、とっさに人を呼び止める時にも使うことができます。
②あやまる
少し丁寧なお詫びの言葉として使われます。カジュアルな表現では「ごめん」や「ごめんなさい」、丁寧では「申し訳ありません」が使われます。
③お礼をいう
日本の特に年配の方になると、ありがとうより「すみません」でお礼を気持ちを表現することが多いです。
(3)気をつけて
「気をつけて」には以下の2つの意味があり、英語のtake careとは用法が異なるため、注意が必要です。
①人を見送るときのあいさつ
「道中の安全を祈る」という意味があるため、別れの場面で、見送る側のみが使える表現です。お互いが別々の場所に帰るという場合は「じゃあまた(明日、来週、今度etc..)」などの表現を使います。
②注意喚起
「注意してください」という意味があるため、お店の人がお客さんに対して使います。例えば、熱い飲み物や食べ物に対して、また、ある商品に対して間違った使い方をすると危険だという注意喚起のために使います。
(4)そうです
「そうです」の「そう」は英語の”so”の意味で、前述の内容を受け、同じフレーズの繰り返しを避けるために使う表現です。そこに疑問の終助詞「か」、同意の終助詞「ね」、教示の終助詞「よ」をつけると、それぞれ異なったニュアンスが付け加えられます。またイントネーションでも意味が変わります。
Aの発言に対する、Bのリアクション ⅰ) ~ ⅳ)で、それぞれ違いを見てみましょう。
例)
A:東京の夏は蒸し暑いです。
B:
ⅰ) そうですか↑(with rising intonation)。I don’t think so.
上昇イントネーションと一緒に使えば相手の発言に同意しないという意味になります。
ⅱ)そうですか↓(with falling intonation)。I’m just listening.
下降イントネーションと一緒に使えば「聞いていますよ」という相づち表現になります。
ⅲ)そうですね。I think so, too.
相手の意見に同意するという意味です。
ⅳ)そうですよ。Didn’t you know?
相手の意見に対し、「私は知っていましたよ(あなたは知らなかったんですね)」という意味が伝わります。
(5)けっこうです / だいじょうぶです / いいです
「~、いらないです」は、直接的な表現ですが、これ以外にも、「けっこうです」「だいじょうぶです」「いいです」など、提案を受けて丁寧に断る、間接的表現があります。しかし、これらの表現の文字通りの意味は「けっこうです= that’s fine」、「だいじょうぶです= it’s OK」, 「いいです=that’s good」など肯定的なものです。それが、以下のような文脈の下でのみ、丁寧な断りの表現として使われるので注意が必要です。
1.提案を丁寧に断る
<飲食店や訪問先で>
Q お茶は、いかがですか。
A いいえ、けっこうです/だいじょうぶです/いいです =No, thank you
断る場合は、まず「いいえ」から始めたほうがクリアです。提案を受ける場合は、「はい、ありがとうございます/おねがいします」と言いましょう。
<お店で>
Q ふくろ(ポイントカード)は?
A けっこうです/だいじょうぶです/いいです = I am fine./ No, thank you
必要なときは、「おねがいします」と言いましょう。
- 確認されて、許諾する
以下のような質問に対しては、文字通り、肯定的な意味を伝えられます。問題ないという許諾の意味では、必ず「はい」から始めてください。
Q お茶で、いいですか。
A はい、(お茶で) けっこうです/だいじょうぶです/いいです = tea is fine.
※昨今(2025年8月時点)、断わりのフレーズとして「だいじょうぶです」を使う人が増えているようです。coto教師を対象にとったアンケートと結果分析についての記事「【だいじょうぶです】は、どう大丈夫なのか」もありますので、どうぞ。→コチラ