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例文トレ#18「~中」の正しいアウトプットは意外と難しい!?
今回の例文作成テーマは「(動詞)中」です。
“休暇中”、”セール期間中”など「(名詞)中」においては、学生にとって理解もしやすく、非文も出にくいと感じますが、こと「(動詞)中」に関しては、なまじ動作進行の「~ている」と紹介したがために、非文にあらずとも、なんとなくしっくりこない例文を産出されたことも多いような気がします。
中級以降で多い、“理解は易く、アウトプットは難し”の典型ともいれるこの文型をみなさんの例文をもとに解き明かしていきましょう。
今回はいつも以上にたくさんの例文が出ました。フィールドワークもあったりして、いつもながらご協力と熱意に感謝!
それもそのはず、この文型、動作の意を含む漢語語彙(「~(を)する」で動詞になるタイプ)との親和性がものすごく高いのですよね(これも今回みなさんの例文から改めて実感)。
では、いったいどれぐらいの漢語語彙と結びつくんだろう?とふと思い、今話題の生成AI、ChatGPT様におたずねしたところ「多すぎて答えを出せません」と…。AIも匙をなげる多さであることはわかりました(笑)。
じゃあ、動作を伴う漢語語彙なら何でもいけるとなれば、漢字圏の学生だったら、アウトプットも問題なくできるのでは?という仮説のもと、中国語に詳しそうな先生方に中国語にも「~中」という使い方があるかどうかお聞きしてみたところ、あることはあるが日本語の意味とは多少ズレがあることが判明。
ということはだれにとっても「~中」の正しいアウトプットは難しいということになりますね。
「~中」について、考えてみた
前置きが長くなりましたが、ここからは、学生の誤文の発生理由について、今回みなさんからいただいた例文を眺めながら気が付いたことをもとに書いていきます。学生に正しくインプットさせるためには以下の3つの角度から、「~中」の特徴をおさえることが重要です。
①動作進行の「~ている」との相違点・類似および同一点
「~中です:課長は会議中です」と名詞文の場合についてだけですが、動作進行「ている」の意味用法を、まんま適用させないことが大事です。
「~中」は、動作の進行中というよりは、「中」という漢字が示すとおり途中である、つまり終わっていない状態(未完了)の強調に使われているからです。
ビジネスシーンでそれを言えば、佳境感、手が離せない感を出せます。「(あいにく)会議中なんです」「検討中でございまして」といえば、あとは推して測るべし、というようなニュアンスが出せるように思います。「修行中」「見習い中」「研修中」「勉強中」「トレーニング中」などから感じられる道半ば感も、終わっていない状態(未完了)の強調という概念と合致します。
「調整中」「工事中」「発券中」などお知らせ・注意喚起などの掲示物に多いのも、この途中感を出すのに適しているからかなと思います。そしてもちろん掲示物に適するゆえんは、漢字3~4文字で表せる簡潔性、ビジュアルの強さという他の理由もあるかと思います。
で、ここでふと思ったのが英訳についてです。「~中」の訳で、しばしば「in the middle of」という「中」まんま直訳というのを見かけます。しかしここは middle よりunder(その状況下にある/過程としての:未完了状態)のほうが英語がわかる人にはピンとくるものなのではないか?と思ったりもしました。たとえば、調査中=under investigation、under construction=建設中みたいな感じですね。
ここまでは未完了感をだす「~中」の機能にフォーカスをしてきましたが、違う用法もあるので注意しておかなければいけません。それは”ときのことば”として使用される場合です。
a)「散歩中、雨に降られてしまった」
b)「旅行中(も)、仕事が気になってしょうがなかった」
a)は雨が降った「とき(時点、タイミング)」を規定し、b)は、その動作の間ずっと、という動作継続の意味を表します。
“ときのことば”として使う場合、「~中」は「~ている」と置き換えられそうですが、a)「散歩していたら(散歩しているとき)」、b)「旅行している間(ずっと)」と文型は異なってくるのはおもしろい点です(おそらく、後件との関連でこうなるのでしょうが)。
②動詞の種類によって、「~中」が使用不可のものがある
時間的に点である瞬間動詞は「~中」が使えません。
<例> 結婚中× 離婚中× 恋愛中〇 婚約中〇 入院中〇 退院中×
※愛情(愛憎?)関連の動詞に関して、点(結婚・離婚)と線(恋愛・婚約)があるの、おもしろいですね。
③和語やカタカナ語彙との親和性は?
和語の場合・・・
- 漢語語彙との結びつきがよい「~中」ですが、和語との連結には制限があるようです。
<例> 乗り中×/乗車中〇 食べ中×/食事中〇
- 「和語+中」が可能なパターンについては、動詞(ます形の語幹)が名詞化したもののみ可能です。
<例> 考え中、見習い中、話し中、着替え中
ここは押さえておかないと学習者の非文を生むきっかけになりかねません。
カタカナの場合・・・
和語には接続制限がある「~中」ですが、カタカナ語とは親和性があるのは、これまたおもしろいポイントです(「(カタカナ語)+する」動詞になるから接続できるんでしょうけど)。
<例>ダイエット中、メイク中、リハビリ中、アルバイト中、テスト中、セール中、ミーティング中
また、若い世代では新しい和語との結びつき事例もちらほらあるようです。どれがどこまで耐久性があるか、これからも注視していきたいです。
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