中級文法コラム13.「〜とたん」、「〜かと思ったら」の使い分け
こんにちは。今回は「〜とたん」「〜かと思ったら」を取り上げてみます。
A:10月に入ったとたん、涼しくなってきましたね。
B:本当ですね。先月まで猛暑続きだったのに… 気づけば、今年も残すところあと3か月ですね。
A:ついこの間年が明けたかと思ったら、もう年末ですか… 早いものですね。
B:年末と言えば、そろそろ年賀状…
A:最近の若い子たちはもう年賀状書かないようですね。
B:ああ、みんなSNSで送り合ってますよね。
A:私も今年からそうしようかな。
B:時代ですねぇ…
どれも「そのあとすぐに何かがおこる」というような印象を受けます。例文を作って比べていきましょう。
とたん
※「とたん」については第8回のコラムでも触れていますので、あわせてご参照ください。
- 餌の入った棚を開けたとたん、うち中の猫が集まって来た。
- チケットのオンライン販売が開始されたとたん、サーバーがダウンした。
- 皆に恐れられていた部長が異動したとたん、課長が威張り始めた。
- 人一倍おしゃれに気を使っていた彼女が、結婚したとたんズボラになった。
「とたん」はある行為をした次の瞬間、予想外のことが起こったときに使います。「すぐに」という意味と混同してしまうと間違いが起きますので、気をつけましょう!
たとえば、「パソコンを買ったとたん、壊れた」これは「パソコンを買って、すぐに壊れた」と言ったほうが正しそうです。
「すぐに」は時間的な要素しかないのに対して、「とたん」には予想外ではあるものの、前の行為と結果には少なからず関連があるのではないかと思います。
「パソコンを買った」と「壊れた」に結びつきはなさそうですが、「棚を開ける」⇒「猫たちは餌の時間だと察する」。「オンライン販売が開始される」⇒「アクセスが集中する」。「部長が異動する」⇒「課長のおさえていた部分が表れる」。「結婚した」⇒「目的達成から気が抜ける」。ちなみにパソコンの例は、「電源を入れたとたん、パソコンが壊れた」なら正しそうですね。パソコンを起動させたことがトラブルにつながったと考えられます。
かと思ったら
- 後半終了まで残り30秒。勝ったかと思ったら同点ゴールを決められた。
- 地震が起きたかと思ったら、電気が消えた。
- ドミノ1万個並べ終えたかと思ったら、足元のドミノを誤って蹴ってしまった…
- Aくん、先生にこっぴどく怒られたかと思ったら、もうへらへら笑っている。
「かと思ったら」も、次の瞬間予想外のことが起こる… あれ? じゃあ、「とたん」に置き換えられるでしょうか?
えーっと…
- 「勝ったとたん、同点ゴールを決められた」×
- 「地震が起きたとたん、電気が消えた」〇
- 「並べ終えたとたん、ドミノを蹴ってしまった」う~ん…△
- 「怒られたととたん、へらへら笑っている」(A君はアホか! ×)
同じ用法かなと思ったんですが、置き換えられないものもありますね。
どうしてでしょう。
「思った」というのだから、「認識」の差でしょうか? 「とたん」は前件も後件も事態を説明しているのに対し、「かと思たら」は、直前までそう認識していたのに予想外の事態が起きた、ということを言いたいときに使っているのでしょうか。
直前まで「勝った」と認識していたのに勝てなかった。「地震が起きた」と認識した瞬間に電気が消えた。「並べ終えた」と認識した瞬間にミスを犯してしまった。Aくん「おこられてるなぁ」と認識していたのに、もう笑っている。あいつ、懲りてないな…。ということです。「瞬間的」ということにとらわれてましたが、「認識」が大事だったんですね。
それに、冒頭の「年が明けたかと思ったら、もう年末」は「瞬間」でもないですね。「年明け」と認識していたのに、気づけば年末。と考えられますね。
そう考えると、「間違えた!」と同じ用法なんじゃないでしょうか??
「ゴキブリかと思ったら、おにぎりだった」・・・見間違えた。ゴキブリだと認識したけど、違った!!
「山田さんかと思ったら、知らない人だった」・・・山田さんと認識して話しかけたら、人違いだった!!
そう考えたら、ものすごく単純な気がしてきました。いやあ、このコラムを書くまで全然気が付きませんでした。
まとめ「〜とたん」「〜かと思ったら」
まとめてみましょう。
とたん…行為や事態の直後に予想外のことが起こる。前件と後件には予想外ながらも関連性がある。
かと思ったら…前件と認識していたら、予想外の事態が起きた。
皆さんもいろいろ例文を考えて検証してみてください。
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