「のに」と「ても」の使い分け
『「〜のに」と「〜ても」は同じですか』と学習者に聞かれたことはありませんか。この「〜のに」と「〜ても」、学習者がよく混乱する表現の一つです。
「〜のに」も「〜ても」も逆説を表します。それでは、「〜のに」も「〜ても」の違いはなんでしょうか。
「~のに」は事実の逆接に用います。一方、「~ても」は事実の逆接にも使えますが、主に仮定の逆接に用います。仮定の逆接とは、まだ本当に起きていないことの逆接です。
例文をあげて、見ていきましょう。
「〜のに」:事実の逆説
<例文>
- たくさん勉強したのに、試験に落ちた。
- 彼ってイケメンなのに、モテないんだよね。
- 薬を飲んだのに、効かない。
- 毎日運動しているのに、痩せない。
- 1時間も待ったのに、彼女は来なかった。
- 電池を変えたのに、動かない。
「~のに」は自分の期待と違うことがおきて、驚いたり、失望したときによく使われます。多くの場合、話者が予想に反する事実に出会ったときに、「えっ」「まさか」などの驚きや、「なんで」「どうして」「変だ」「おかしい」などの困惑や不満、「ショック」などの失望の気持ちを表すときに使います。
例えば、「たくさん勉強したのに、試験に落ちた。」には「ガーン、まじか〜ショック・・・」という感情が含まれています。
※「~のに」の文の後件に命令、依頼、意志、質問などの話し手の意思表現はきません。
×休みの日なのに、仕事に行きますか。
×休みの日なのに、仕事に行くかもしれない。
「〜ても」:事実の逆説
<例文>
- 薬を飲んでも、熱が下がらない。
- たくさん勉強しても、成績が上がりません。
- 友達にメールをしても、全然返信がない。
- 電池を変えても動かない。
- 若い頃は、徹夜しても平気だった。
- 辞書で調べても分からない。
「~ても」は、単なる逆接条件を表す時に多く使います。この「~ても」は、仮定のことではありません。「薬を飲んだ」「たくさん勉強した」は事実です。
この「〜ても・・・」は予想していなかったことが起こることを表します。ここが「~のに」と、混乱しやすい原因です。
「〜ても」 仮定な逆接
前件成立→後件成立を表す「~たら」とは反対の用法です。後件には色々な意思表現がきます。”たとえ”「親に反対されても」「走っても」ということで、これは仮定です。
<例文>
- 親に反対されても、僕たちは結婚するつもりです。
- 走っても間に合わないだろう。
- いくら言っても、無駄だと思う。
- 何があっても、彼女と別れるつもりはない。
- 寝坊しても、朝ごはんはちゃんと食べなさい。
- 辛くても、がまんしろ。
追記
関連記事:「のに」と「けど」の使い分け
日本語を教えるときに、こっちは事実の「ても」で、こっちは仮定の「ても」です、などと学習者に説明する必要は一切ありません。分けて紹介する必要も全くありません。
学習者に教えるべき文法と、日本語教師が知っておくべき文法は全く違います。「何をどう、どこまで言うべきか?」「何を言わないべきか?」を考えてみるとよいでしょう。
学習が進み、あれっ、同じ?どこが違うの??と学習者自身が疑問に感じて質問してきたら、「~のに」は話し手が驚いたり、失望したりした時など自分の気持ちを表したいときに使うんですよ!と例文をいくつかあげたり、会話の場面を見せたりして、そのニュアンスを感じてもらえればいいのではないでしょうか。
例文が思いつかなかったときは、ぜひこちらの文を参考にしてみてください。
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