中級文法コラム8.「〜たとたん」「〜たところ」
<例文>「あの二人、結婚したとたん別れてしまいました。今、離婚届けを出したところです。」
今回は「〜たところ」「〜たとたん」を取り上げたいと思います。この2つ、どちらも行為の直後という意味がありますね。でも、学生も直後という意味だけでは間違った使い方をしてしまいます。学生から質問があったとき困らないように直後以外の意味も探っていきましょう。
〜たところ
・今、ご飯を食べたところです。
・部長はさっきお帰りになったところです。
・(電話で)ごめん。今、うちを出たところ。10分ぐらい遅れそう。
どの例文も食べた直後、帰った直後、うちを出た直後で、時間で考えると本当に「数秒から数分前の行為の後」という状況で使っています。
「〜たところ」vs「〜たばかり」
ちなみに、よく似た文型で「〜たばかり」がありますね。
こちらも行為の後という意味があります。「たばかり」は話し手が短いと感じたかどうかが問題で、実時間はあまり重要ではありません。話し手が短いと感じれば「〜たばかり」を使うことができます。一方で、「〜たところ」は時間がかなり経過していることには使えません。
比較すると・・・
- 日本に来たところです。(数分前に飛行機で到着した)
- 日本に来たばかりです。(日本に来てからまだ数週間。日本の生活に慣れていないので日本に来てからまたあまり時間が過ぎていないと感じている)
- 彼はチームと契約し、プロになったところです。(契約書にサインした直後)
- 彼はプロになったばかりの1年目のルーキーだ。活躍するのはまだ先だろう。(プロになってからまだ1年しか過ぎていない。今後の選手人生の長さを考えれば1年なんてまだ短いと感じている)
〜とたん
さて、「たところ」と「とたん」に戻って、今度は「とたん」についてです。
行為の直後に起きたことを言いますが、その起きたことは話し手にとって意外性のあること(予想外のこと)が多いです。
・窓を開けたとたん、ハトが飛び込んできた。
・パソコンの電源を入れたとたん、変な音がして止まってしまった。
・電話を切ったとたん、彼は顔色を変えて飛び出していった。
前件は行為ですが、その直後に予想外のことが起きています。
上のように瞬間的な驚きの場面で使うことが多いですが下のような場面でも使えます。
彼は入社したとたん、辞めてしまった。
⇨入社から辞めるまでは、たぶん数日から数週間はあると思いますが、辞めるまでの期間があまりに短く驚いています。
あの二人は結婚したとたん、別れてしまった。
⇨こちらも、結婚してから別れるまで数週間から数か月はあると思いますが、え?もう離婚したの??と驚きを感じるぐらい短い期間だということです。
今までおとなしかった息子が、サッカーを始めたとたん活発になり、言いたいこともはっきり言うようになった。
⇨サッカーを始めたその日に急に活発になったわけではなく、短い期間の間に活発な性格に変わったというような感じでしょうか。
薬を飲んだとたん元気になった。
これはちょっと微妙ですけど、セーフでしょうか。ドラゴンボールの「仙豆」のような効果を想像しちゃいますが、もちろんそうではなく、薬を飲んでから劇的に短い時間でよくなったというニュアンスだと思います。
このように、「たとたん」は行為の“直後”の予想外の現象に驚いていますが、この“直後”は文脈によって多少幅があります。話者の主観が入るので、実際に時間がすぐでなくても使うことができるようですね。
そして、後件は予想外のことがくるので、自分の意思ですること。当然結果がわかっているようなことには使いません。
例えば・・・
×私は、今日家に帰ったとたん寝ます。(自分の意思なので予想外ではない)
⇒私は、今日家に変えたらすぐ寝ます。
×コーヒーを飲んだとたん熱かったです。(コーヒーは飲む前から熱い)
⇒コーヒーを飲んだら熱かった。
×スイッチを押したとたん電気がついた。(電気のスイッチだから当然つくのはわかっている)
⇒スイッチを押したら電気がついた。
まとめ
「たところ」は行為のあと現実的な時間の短さにフォーカスしています。
「たとたん」は行為の後に起きたことに驚きを感じているというところにフォーカスしています。
Customer Reviews
Thanks for submitting your comment!