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Coto全体会報告レポート②日本語教師なら必ず出くわす?よくある3つの「困った…」ケース
Cotoでは、定期的に全体会が開催されております。
先日行われた全体会では、ゲストスピーカーのお話や、いろいろな拠点の先生同士が学び合うケーススタディがありました。この会の様子や学びを2回にわたってご報告しています。
なお、1回目のレポートはこちら(Coto全体会報告レポート① 発達障害者支援の現場から学ぶ日本語教育)です。
2回目の今回は、全体会の後半で行われたケーススタディでの学びをシェアさせていただきます。
Cotoのみならず、きっと日本語教師というお仕事をしている方なら、「あるある!」「わかる~!」というケースばかりだと思いますので、楽しんで読んでいただければ嬉しいです。
3つのケーススタディ
ケーススタディは、ZOOM上のブレイクアウトルームでグループに分かれて行われました。(実際に各グループでどのような意見が出たのかは、参加された方だけのヒ・ミ・ツです)
この記事では、全体でシェアされたアイデアや考え方の一部を紹介させていただきます。
ケース①<プライベートレッスン> 何度やっても文法や語彙が覚えられない
何度繰り返し勉強しても、文法や語彙が覚えられない。
その場では言えても、次のレッスンではすっかり忘れてしまう学生。
毎回カリキュラム通りに進めるのが困難な学生がいたら、どうしますか?
プライベートレッスンなので、柔軟に対応できそうですね。
挙がっていた意見としては、「毎回のレッスンで復習をする」「どのようなやり方がいいか学習者に聞く」などがありました。
人間は忘却する生き物なので、むしろ全部覚えている方がオカシイと思います。私なんて一生懸命に英単語を覚えても、次の日には8割がた忘れています(涙)
とはいえ、何度やっても覚えられないというのは困りものですね。
どのようにしたら覚えやすいかは、人それぞれのやり方があります。目から入った情報の方が覚えやすいという人、耳から入った情報の方が記憶に残るという人、とにかく声に出したり書いたりして体を使った方がいい人など様々です。
覚え方が人それぞれなので、いろいろなやり方でやってみて、どれが一番良いか学習者さんと一緒に考えていくのが良さそうですよね。
他に、以下のようなことが考えられると思います。
・学習内容が学生のレベルと合っていない
・「完璧じゃないといけない」「自信がなくて答えたくない」といった心理的要因がある
・沈黙期(サイレント・ピリオド)に入っており、言葉を耳から取り入れてはいるが、アウトプットがうまくできない
・なんらかの学習障害がある
などです。
または、教師が練習のための練習をさせてしまっているケースもあるかもしれません。こちらの記事(アクティブな日本語クラス活動のヒント)をご参照ください。
ケース②<グループレッスン> 授業に集中していない
レッスン中、ぼーっとしてあまり発話しない、集中できていない学生がいます。
どのように対応しますか?どんなことに気をつけたほうがいいでしょうか?
さて、これは対面レッスンとオンラインクラスではだいぶ様子が違うようでした。
こちらの記事(日本語教師あるある!?学生の受講態度が気になるとき)にも書きましたが、このようなケースはオンラインあるあるで、学生がいつも集中できる環境でレッスンを受けているとは限りません。学生が移動しながら、食事しながら、お子さんをあやしながら、猫ちゃんをなでながら(笑)レッスンを受けていることもあります。
このケース②では、たまたま私のブレイクアウトルームのグループが、みんなオンラインレッスンの先生でしたので、「こういうことあるよね〜」と、飲み会か?!というほど盛り上がりました。
ポイントとなるのは「グループレッスン」であるということです。プライベートレッスンとは違い、他の学生さんもいるので、クラスへの影響を考慮する必要があります。
「他の学生さんの満足度を下げないために、発言を促すときは最初に当てないようにしている」という意見が出ていました。該当の学生が話を聞いておらず、教師がもう一度質問を繰り返すことでレッスンのリズムが悪くなり、他の学生がイラついてしまうかもしれないからです。また、当の学生も気まずい思いをしてしまうかもしれません。
それから、私の個人的な体験ですが、ある学生さんが旅行先からモリモリ食事をしながら参加していた時がありました。私はその学生に、「画面・音声をオフにして、ゆっくり食べながら見ていていいですよ。話せる状態になったら参加してね」と伝えました。
発言を促すときは、他の学生の発話が終ったあとに、「〇〇さん、話せますか?」と話を振って、発話できるようならしてもらいました。
レッスンのリズムが崩れることなく、他の学生にも影響が出ず、該当学生は気兼ねなくゆっくり食事ができ(笑)、無事レッスンを終えることができました。
他に、ひょっとしたらレッスンが退屈でぼーっとしている可能性もあります。こちらの記事(レッスンを退屈させないためのコツいろいろ)もご参考になさってみてください。
ケース③<グループレッスン> 学生同士のレベル差がある
毎回レッスンには参加しているが、学習した内容がなかなか定着しない学生がいます。
レベル差があり、ハンドリングが難しいクラスを担当する場合、どんな工夫をしますか?
日頃から取り組んでいる工夫があれば、シェアしてください。
これは日本語教師の永遠のテーマかもしれませんね。
「ペアワークで奇数になったときは、教師と組む」「資料を渡し、予習・復習に役立ててもらう」「どのようなスキルや勉強が足りていないのかをアドバイスする」「最初に当てない」「間違っても大丈夫!架空の話でもいいから話してみて!と、発話に対する恐怖心を取り除く」「プライベートレッスンでフォローする」…など、他にもたくさんの意見が出ていました。
一方で、「現実的には、誰も置いて行かない授業は難しい…」というお声もありました。グループレッスンで、学習者間のレベル差がないほうが珍しいのかもしれません。
クラスハンドリングについては、こちらの記事(日本語クラスマネジメント法:レベル差のあるクラスの場合)も参考にしてみてください。
「できること」が前提だと苦しい…
最後に、前回の記事(Coto全体会報告レポート① 発達障害者支援の現場から学ぶ日本語教育)でもご紹介したゲストスピーカーである園田先生のお話をご紹介します。
園田先生は、発達・学習障害がある学生さんと日々接しているため、「覚えられなくて当然」「できなくて当然」「クラスに差があって当然」と思っているとのこと。
学生をできるようにさせなくては!遅れている学生を何とかしなくては!と教師が力めば力むほど、それが学生に伝わる。そしてさらに悪い結果となる、とおっしゃっていました。
問題に対してのテクニックはたくさんあると思います。でもテクニックの前に、教師自身が必要以上に力まず、あるがままでいること。そして学生をコントロールしようとしないこと…このような教師のマインドセットが大切だと思います。
ーー学生が向き合うべき問題を教師が勝手に背負わないーー。そのことについては、こちらの記事(日本語教師が病まないために:日本語教師のメンタルヘルスを考える)にも書きましたので、よろしければご覧ください。
以上、2回にわたっての全体会の報告レポートでした!
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