教案づくりのヒント:「フリートークしたい!」にどう応える?

学習者からよくあるリクエスト「フリートークしたい!」にどう対処するか

 

「フリートーク」は魔法のことば

初級、中級、上級と、どのレベルにおいても、文法ではなく「フリートークをしたい」というリクエストが学生から出ることがあります。

「フリートーク」は魔法のことばです。自由度が高い、楽しそう(≒文法学習はつまらない?!)、興味があることだけしゃべれるようになれる、語学習得の最短ルート!と誰もが思ってしまう魔法。

でも、このようなリクエストに日本語教師として、二つ返事で応えていいものでしょうか。そもそも、上級ならまだしも、初級のうちは十分な語彙や文法という武器がないのに、どうやって会話をホールドしていくことができるんだ?と思う先生方もいらっしゃるでしょう。また、「フリートーク」のトピックを、毎回毎回どう設定していっていいか、頭が痛い~という先生方も多いかと思います。

そこで今回は「フリートーク」というお題が学生から与えられたときに、どう対処できるか・するべきかについて、いくつかご提案をしてみたいと思います。

授業には学習フレームが必須

「フリートーク」とは、目的(会話ができるようになりたい!)であって、方法ではありません。なので、目的を果たすためには、しかるべき方法(学習フレーム)が必要です。

以下のような授業フレームをもっておくと授業計画も立てやすく、進行もしやすく、ひいては学習者の満足度も高くなるのではないかと思います。

<学習フレーム>

①今日のトピックの発表

②アイスブレイク(トピックに関する簡単なQA)

③語彙の導入

④文型の導入

⑤質問を考える(質問文が文法的に正しく作れるか)

⑥質問⇔答えで会話をする(答えには適宜レベルに応じて必要な語彙・文型を入れる)

それでは、上記のフレームに沿った、具体的な授業例をご紹介します。ここでは、仮に学習者のレベルを初級後半〜中級前半の学習者と設定しておきましょう。

  1. 今日のトピック:SNS(ソーシャルメディア)
  2. アイスブレイク:「~さんは、SNS(ソーシャルメディア)が好きですか」「どんなSNS(ソーシャルメディア)を使っていますか」など。
  3. 語彙リスト:便利・不便、フェイクニュース、調べる、インスタに、アップ(upload)する、Xで、つぶやく…など。学習者のレベルや興味に応じた語彙、また一般的にそのトピックで必ず使いそうな語彙を8個ほど準備しておく。
  4. 文型:~すぎる、~と~くなる(になる)、~と思います、~ので…など自分の考えを説明するときに頻出する文型(思う、~ので)や当該トピックでよく出そうな文型(見すぎると、目が悪くなる、眠れなくなる)を学習者のレベルに合せて導入・紹介する。既習文型で紹介程度というのが望ましいが、簡単な説明で理解できるものであれば、1つぐらい新しい文型があってもよい。
  5. 質問をつくる:疑問詞(いつ、何時間ぐらい、どんな…など)を導入し、当該トピックに関しての質問を数分与えて考えてもらう。最低3つ。プライベートレッスンであれば講師も質問を考えておく(もちろん答えも)。できた疑問文について、文法的な誤りがないかチェックしておく。
  6. 会話:質問に答える形で会話をする。答えについては学習者が語彙が足りなそう(答えに窮している様子)だったら、学習者のレベルに応じた語彙を適宜補足してあげてもいいが、語彙にせよ文型にせよなるべくこの授業で導入したものでカバーできないか、学習者のみならず講師も頭の片隅に置いておくこと。

授業フレームの中でも「質問がつくれる」というスキルがもっとも大事

「会話ができる」を、語学学習の観点から言い換えると「会話がホールドできる(途切れない)」という意味です。そして、その会話の持続には「質問がつくれる」スキルの重要度がかなりの位置をしめます(レベルが低いうちは特に)。

どの外国語学習者も最終目標としている日本語ネイティブとのスムーズな会話、それをなんとなくでも成り立たせていく(沈黙時間を最小限にする)ためには、質問をし続けることが大事なのです。

ではどういう質問をすればいいのでしょう?

質問の内容はシンプルでOK!なのです、例えば、

  • 言葉尻をとらえて、繰り返すことも質問の一つ。
  • yes-no Questionもいいが、いつ・どこで・どう?などの疑問詞をうまく使うこと(文法的に破綻していたらだめですが)でより長く相手に話させる(自分が言いたいことを考える時間がつくれる)。

<会話例>

 日本人:渋谷はいつ行っても人が多いよね。

 学習者:渋谷?

 日本人:そう、昨日、渋谷に行ったんだけど、疲れちゃったよ。

 学習者:ああ、〜さんは、渋谷がきらい?ところで、渋谷で何をしましたか。

日本人はこのあとも質問(というかほぼ相づち)に応える形で、話しを続けるでしょうから、それに応じて上記に述べたような質問スキルを繰り返していく。もちろん自分の意見(私は渋谷が好きだ!)や、その理由などがうまく挟めたらそれはよりいいですね。

その他、注意点など

「フリートーク」をしたいというニーズに応える形で、質問をつくるタスクを入れてあるのは、質問によって、自分が刺激を受けたり、考えたことがなかったことについて気づくことができる、つまり会話の楽しさが味わえるからです。

授業では、できるだけ長い文を使って話せるよう(単語だけの会話にならないよう)指導することも大事です。これをすることで、学習者の満足度も上がります。

この学習フレームで練習すると、たくさんの既習文型や語彙が使えた!という喜びを感じる、新しいことを覚えるより自分の引き出しから使う力を育てる、知っていることを使う喜びを体感してもらうこともできるのでおススメです。会話を紡ぐための、しかるべき道具を与えられること(文法や語彙の導入)がいかに「フリートーク」に大事なのか、学習者にも実践的に理解・体感してもらうことができるかと思います。

最後に

だれしも母語で話しているときは、今まで述べてきたような会話のテクニックなどは、まったく気にせず、自然にしているものなのですが、外国語を学習においては自分の語学力が100%じゃないことが気になり、心理的自己ブロックをしていることがあります。

そのような心理的ハードルを下げるテクニックとしても使える学習法だと思うのでぜひ実践してみてください。

 

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