レッスンを退屈させないためのコツいろいろ

レッスンのコツいろいろ

みなさんにとって、学生からもらうフィードバックの中で何が一番うれしいですか。「わかりやすい」「ためになる」「たのしい」…等々、ほめられるならなんだってうれしいですが、「もう少しこうしたい」「こういうのはいやだった」等、少々ネガティブなフィードバックでさえ、自分の授業を客観的にみる姿勢を忘れないために必要で、フィードバックをもらえること自体ありがたいことですよね。

私がもらってうれしいフィードバックは…、フィードバックというより学生の反応というんでしょうか。レッスンの最後に「え、もう終わり?時間がたつのが早かった」と言われること。うれしいと同時に「一番報われた!」と感じます。

先生の音頭にのせられて口を動かし、手を動かすうちに何だか終わった!というのが学習者にとっても、講師にとってもハッピーであることには間違いないはず。というわけで、今回はスムーズなレッスン運びのコツとしていくつか、私の経験の中からシェアしていきたいと思います。

流れを止めるものだけど、止めるだけの価値を与える

さきほど「時間を忘れるほど、いい流れで終われる」がハッピーだ!といったそばから、自己矛盾することを書いてしまいますが、「流れをとめる」べき要素というのがレッスンの中には存在します。それは「間違い訂正」。ネイティブであるからこそ、そして日本語教師だからこそ直せる間違い。しかし、これほどタイミングをはじめ、学生のプライド(屈辱を感じる、恥ずかしい)の問題もあるし、なかなか一筋縄ではいかないものはないですよね。

実際、多くの先生方から「学生が話しているとき、間違いをどのタイミングで訂正したらいいか」について悩んでいるというお声を聞きます。

というわけで、まずは、流れを止める要素である「間違い訂正」を、いかに学習者・講師ともに最小限のストレスで克服するかについてのヒントをご紹介します。

何をいつ訂正するか

「間違い訂正」で注意すべきは、訂正ポイントをしぼる、タイミングを見計らうという2点かなと思います。
<直すべき項目>
※下記の項目のうち、通常は、①~⑤ぐらいを直してあげるのがよいのかなと思います。
①助詞
②語彙
③時制
④活用
⑤発音
⑥フォーマリティ(カジュアルとフォーマルが不適当な感じで混ざる)
⑦接続詞
⑧いかにも英語直訳という構成の文
⑨全体的に何を言いたいかわからない、論理の破綻など

<タイミング>

いつ直すべきか、については以下2つの適切なタイミングがあると思います。

①1文終わるまでは待つ→せめて、最低1文はフィニッシュさせてあげたい。
②言い淀むまでは待つ→発話が止まった時点で、それは語彙を探しているということ。この言いよどむタイミングで、語彙を与え、それまでに気になった間違いもまとめて直す。
スピーチなど特別なタスクを課しているときなどは、全部聞いてから、①~⑨の項目、すべてを直すべきだとは思いますが、意見を言わせたり、文作をさせたりするときは項目を絞って、タイミングを見るっていうのが、2大原則かなと思います。
なお、多少しつこくても都度直しが効果的と思えるものは以下の文法事項です。
  1. い形容詞の活用:これは「い形容詞」だから、活用はこうですよ、という理屈はさておき、とりあえずはシンプルに講師が言い直すほうがいいです。活用ルールの復習までさかのぼりすぎると、学生の気持ちが萎えることがあり、またクラス運営的にも時間をとってしまうので、とにかくシンプルに「まちがった」→「言い直す」にフォーカスしたほうがいいかと思います。「い形容詞」「な形容詞」が既習であれば、学生はその違いが活用にもあることは知っているハズ。でも発話の段階ではなかなか正しく言えないものなのです。どの学習者も形容詞の活用が定着するまでには時間がかかるので、間違えた時点での都度直しというのが私は効果的ではないかと思っています。
  2. 助詞:これも「形容詞」と同様、あまりに混乱あるいは基本ルールを理解していないのであれば、さかのぼって説明することも大事ですが、「まちがった」→「言い直す」というシンプルなやりとりのほうがいいのかなと思っています。
では、なぜこの二つについて、都度直しをおススメするのはなぜかというと、これらの間違いほど
・化石化しやすく、
・日常生活ではなんとなく通じてしまい、見過ごされてしまうことが多い
から。放っておくと、学習者本人が、ことの重大性(助詞を間違えただけで稚拙に聞こえてしまう!)を意識化するチャンスを妨げてしまうのです。
上級学習者なのに、助詞や形容詞の間違いをしてしまえば、日本語教師以外の普通の日本人なら「この人の日本語はつたない」というジャッジを与えてしまいがちです。そのような判定の不利益を学習者が被らないようにすることは日本語教師の大事な職務の一つだと思います。

リピート(復唱練習)へのハードルを下げる

学生によっては、復唱練習に意味を感じず、あるいはめんどくさいか恥ずかしがって(?)、教師の後についてリピートをするのにストレスを感じる人がいます。また、そのような態度をとられると、講師側もひるんでしまい、レッスンの中に取り入れなくなるという現象が起きることが多いです。

しかしながら、言語教育、とりわけ「会話」を主体に進めていくcotoのようなレッスンの中においては、聞いた音を同じように複製できる能力が、語学力(会話力)の上達にどれだけ役に立つかを講師はよく自覚しておいたほうがいいのではないかなと思います。

...というような、復唱練習についての意味・意義を、学習者に直接伝えられればよいのですが、初級の学習者で、しかも直接法の場合、むずかしいのが実情。そこで、学習者の心理的ハードルを下げ、飽きずに、チャレンジ精神をくすぐるような練習方法が大事になってきます。方法と言いましたが、実は「方法」でも、大した「スキル」でもなく、ちょっとした講師側の心がけ、つまりそれは声掛けなのですが、以下のような手順をとることで学習者の気持ちを乗せて、運用できると思います。

1回目 平然と”リピートお願いします”と言ってはじめる
2回目 次は”ナチュラルスピードで”,あるいは”スピードアップ”と声をかける
3回目 じゃあ、最後、”自然なイントネーション、ポーズで”あるいは”日本人っぽく”と声がけ
少しづつチャレンジングな要素(スピードあげる、自然な話し方)を入れていることがわかるかと思います。そのような学習者の負けず嫌い精神に火をつけるというのも、レッスンでは大事なことですね。

講師の声のトーンやボリューム

コミュニケーションの基本は音(声)。講師側が少し意識をもっておくことで、スムーズなクラス運営につながる、ということについても少し書きます。

無音の時間は7秒まで

授業中の、沈黙・無音の時間って長く感じますよね。もちろん講師には学習者の答えを待つ、思考をさえぎらない「忍耐」がもとめられますが、あまりに長い無音状態は学習者・講師ともにストレスが大きいです。
学習者の様子を見ながら、答えのヒントや「例えば…」とは「そうですね」など、意味がそんなになさそうな声を出しておくというのも大事です。
また、無音状態ができやすいポイントとして、教科書のタスクをさせるとき、どこを読んだらいいかわからない、ひらがなを読むのに苦労しているという状況があるかと思います。そのときの声掛けとしては、問題の番号を読み上げたり(「grammar point Ⅱ practice Cの1番~♪」とか)、文の最初の語彙をちょっと読む(読み上げるべき文が「東京は人が多い」という文だとすると「東京は~♪」とと最初の語彙を言ったりします。余計な間(ま)や、読みの負担を与えないことでクラス運びがスムーズになることがあるのです。
また、ホワイトボードを消すために、後ろを向いているときも声を切らさない(無音状態を極力最小に)も心がけています。しゃべり続ける必要はないですが、「次は新しい文法です」「練習をしましょう」などと言いながら手を動かす、学習者へのアテンションは切れていませんよという、いい意味でクラスの緊張の糸を切らさないようにする工夫です。
最後に、授業がスムーズにいっているときこそ、声のトーンを落とす、スピードを緩める、はしゃがないようにも気を付けています。学習者のテンションが上がることはいいのですが、それにつられて講師も高揚しすぎない、心は熱く、頭は冷静にというのがいいレッスン運びにつながるのではないかなと思っています。

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